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ギーク映画好きが『ベイマックス』を観た結果、アメリカを感じる

 レイトショーでベイマックス観てきました。
 面白かったので、ネタバレなしで感想書いてみます。

まず噂には聞いていたショートの犬映画

 これペットには完全にアカンやつで、犬のアニメーションは超リアルで最高なのに、飼い主の教育に悪すぎる。


 ぼくもネットに繋がっている以上、仕方なくというか、批評アングルとして「グローバルな配慮のバランス感に優れているディズニーすごい、対して日本は……」などという比較やさらにそれに対する反論を先に見てから鑑賞することになってしまったのだけど、この短編アニメを見ると、ディズニーのバランス感がいいのではなく、単に『ベイマックス』のバランス感がたまたま良かっただけに見えて、作品とスタジオは分けて考えた方がいいと言いたい。


 というかむしろ『アナと雪の女王』の時の短編アニメも「ザ・残酷ミッキー大暴れ、容赦しない」って感じであったしディズニーって基本あのノリの持ち主だという気がするぞ。
(短編と長編ではシナリオにかけるリソースの分配がまるで違うように、配慮する割合も短編では異なるということなんだろうけど。)

ベイマックスは懐かしい

 そして『ベイマックス』は、これ感じ方は観る人の映画体験や世代によって変わるんだろうけど、懐かしい感じのアメリカSFX(VFX)映画を今の技術で見せてもらえたという面白さだった。


 ギークと少年が活躍し、ロケットで空を飛び、悪い科学者の計画を阻止して街の英雄になる。
 アメリカ人的なユーモアがあり、オリエンタルなものへの憧れがある。科学は頼もしく、カラテは強い。
 面白いB級映画だ!
 ベイマックスの装甲デザインが洗練されて見えるだけで、そこに日本のロボットアニメ的な味付けは前評判ほど感じなかったというのが実感。


 彼らは『ゴーストバスターズ』のように科学とチームワークの力で驚異に立ち向かう。アメリカ然したギークたちがそこにはいる。

アメリカが日本的な映画を作ってしまった。だから危険だ」

 そういう批評アングルは『パシフィック・リム』の時と同じで、その時は「いやアメリカでも怪獣映画と巨大ロボ映画の歴史は長いし、お話のユーモアもたいがいアメリカ的だったでしょ?」という反論がすぐに出せたと思う。
 のだけど、『ベイマックス』ではそうした反論を見る前に鑑賞したので、やっぱりネットの論調とのギャップを覚えながら観ることになってしまった。

鑑賞前から予告した通り、ここから『RWBY』の宣伝へと自然に移る

 海外CGアニメ『RWBY』にも同種のアングルはあった。


 日本的な可愛くて強い美少女のCGアニメを、海外で作ったやつらがいる。それは実際カワイイ。萌えである。
 海外のオタクはこのくらい日本に「追いついた」のかと、最初はそんな風に書かれることもあった。


 でもトレイラー(4本あるPV)だけでなく、Kickstarter方式で制作が開始された本編アニメを見てしまえば「アメリカ的なエッセンス」こそが本作の魅力なのだと否応なく気付かされる。


 向こうのカートゥーンの積み重ねを感じる、海外アニメーションの魅力があり、キャラクターの身振りや英語のセリフ回し、シナリオ、それこそ人種差別やジェンダーへの独特な距離感など、日本人には思い付かなそうな部分こそが面白い。


 デザインは確かに、日本人にも伝わるKawaiiだし殺陣の美しさは和製の3D格闘ゲームのスタイリッシュさに通じるけども、作品の根幹まで「日本的なものに合わせた」とは感じさせない。


 ツンデレお嬢様もいるし、オタクなスタッフは間違いなくTsundereだと思いながら描いてるんだろうけど、「こんなお嬢様キャラは日本人には思い付かんぞ」という、妙な文化差を覚える白人セレブっぽさがあり、だからこそめちゃ可愛かったりする。


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 余談だが、海外のオタクも二次創作、ファンアートの文化が活発だ。
 RWBYのファンアートではごく自然にYURIカップリング創作が描かれるのだが、そのYURIにしたって「萌えるツボは同じなんだなあ」とシェアできる部分と、独特な海外ノリを発見できる部分がどちらもあって、それ自体が面白い。
 コスプレのクオリティも、あっちの方が本場なのでやはり高い。
 オタク活動こそが日本のアニメ文化の特色だと考えていると、誤解することになる。

ベイマックス』に戻ると

 向こうのクリエイターは昔から相変わらずのスタンスで面白いものを作ろうとしている。
 オリエンタルへの憧れなんて昔からあったし、それが勘違い東洋でもなく洗練されていて、国際的な技術共有もあり、思い通りのクオリティで作ることができたのが『ベイマックス』だ、アメリカ映画の最新バージョンだなと。


 そしてそんなB級映画は、日本的ではなくアメリカ的だからこそ、昔から日本人も惹かれていたはずだ。

B級映画だとは言っているが

 「濃いB級感を期待すると薄い」には同意する。
 自分はそうとは思わずに観たので、ほどよいキッズアドベンチャー映画として楽しめた。
 他には「大長編ドラえもん」だという印象を聞いたけど、それも同感。
 しかし「大長編ドラ」にしてもB級映画とイメージは共通していて、要は『グーニーズ』とか『ミクロキッズ』の面白さ。利口な少年と朴訥なロボの組み合わせといえば、かの『ターミネーター2』のエッセンスだってある。


 洋画好きのF先生にとって、大長編ドラはアメリカ映画のジュブナイル翻案として作られている面が大きい。似たテイストがするのも当然だろう。


 最後に、アニメの感想なのに「VFX映画」という印象で語りたくなるのも表現上ではポイントで、ショートの犬映画がまだカートゥーンテイストを色彩に残しているのに対し、ベイマックスはオブジェクトがみんな写実寄りだからだ。
 これはアナ雪の氷が「絵」ではなく「見た目本物の氷」だったのと同じで、よく言われてることだけど本当にCGアニメと実写+VFXの垣根はないのだなと。


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