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美麗さと古朴さが同居したペンタッチ/入江亜季『乱と灰色の世界』1,2巻

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 1巻を読み終わった後、奥付を見て「えっ、こんな地味で暗いタイトルなんだっけ?」と驚いたくらい、画面からキラキラ感の伝わってくる漫画です。
 カバーイラストから連想される美麗な絵柄(ありていに言えば『季刊エス』などで支持を集めそうなスタイルの)だけでなく、古い児童漫画や、古い少女漫画のような絵柄と自然に同居していて、そこで示される画力の高さに唸らされます。


 『Fellows!』の作家は森薫をはじめ、冨明仁とか、非常に画力の高い作家が集まっていますが、その中でも入江亜季の絵は「巧さ」と「古さ(良い意味での古朴さ)」が両立していて、ちょっとひと味違う感じですね。


 過去のインタビューを読むと、このラフなタッチは「独特なペンタッチ」と述べられているくらいで、誰かの影響があるとか、何かを意識したとは言われていません。
 漫画史研究の方々から見てどう感じるのかが、ちょっと気になる作風です。

──入江さん、ペンタッチが独特ですよね。軽やかなタッチといいますか……。


入江 私、最初にペンを置いたらあとは力を抜いて描いちゃうんですよ。コミックナタリーの森薫さんの動画を観たんですが、森さんはペンを紙に置いてから抜くまでずっと力を使って描いてますよね。たぶんペンの入りから抜きまで意識して描いてると思うんですよ。でも私は最初力を入れたら、あとは勢いで描いちゃうんです。おかげで線のコントロールはあんまりうまくできないんですけど(笑)。


──でもそれが「味」になってますよね。


入江 不思議となっちゃってますかね……。最初はちゃんと描こうとしていたんですけど、力を入れて描こうとすると歪んじゃったりして。それを隠すため……隠すため?(笑)。


──適度に力を抜いて描いたほうが歪まない?


入江 いや、歪むんですけど、歪んでも人体も小道具も記号としてある程度は伝わるし、勢いでごまかせみたいな(笑)。もうどうせ歪むなら描いていて気持ちのいいほうで。


──今の描き方になって、一時期絵柄がガラッと変わりましたよね?


入江 そうかもしれません。あるときからザクザク描くようになって……。昔の同人誌とかを見ると、もうちょっと線も細くて丁寧に描いてるんですけど、あの頃どうやって描いていたのかも思い出せないです。青年誌を意識していたのと、早くたくさん描かなきゃいけない時期とかを経て、こういう描き方になったんじゃないかな。雑に見えませんかね……。


──雑とは思いませんが、個性的なタッチになってきてますよね。


入江 うーん(笑)。最近Gペンに変えたんですけど、前に使ってた丸ペンよりコントロールが難しくて、頭よりペンが先に動く感じなんですよね。ちゃんと入りから抜きまで意識してコントロールされた線は1本でも存在感があって、説得力があって美しいので憧れています。

入江亜季「乱と灰色の世界」 (3/4) - コミックナタリー 特集・インタビュー

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