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比翼連理な響と奏の一体感/『スイートプリキュア♪』3,4話感想

 

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主役の入れ替わりが描かれた3,4話

 第3話が「響回」(音楽の話)、第4話が「奏回」(ケーキの話)。
 次が「響と奏の回」(一緒にインタビューする話)になるようですが、次回でスイプリのお話のパターンは一通り出揃うかもしれませんね。


 3話の時点では、「テンポを外しがちな響の手綱を握る奏」に注目していたのがレスターさんのブログでした。

ただ、これまでと少し異なっているのは、

二人の性格が対照的というよりは、どちらかといえば似ている点


(中略)


今回は二人が似ているとはいえ、奏ではどちらかといえばホワイトの系譜を継ぐキャラであり、

しっかりとした落ち着きをもたらすキャラは響ではなく奏の方でしょう。

奏の作り出すリズムが素晴らしい ―『スイートプリキュア』のすすめ― - レスター伯の躁鬱


 ふたりが似たもの同士、というスイプリのコンセプトを踏まえつつ、奏の特色に注目したエントリです。
 その記事のブックマークコメントで、ぼくはこう書いていました。


 それほど一方的な関係だとは感じなかったんですね。
 さらに言えば「男子に憧れる普通の家庭の女の子」という主人公ポジションの属性が奏に移動している時点で、彼女はホワイト系のサポートキャラに留まらないって予想もできました。


 実際に4話を眺めてみると、やはり「突っ走りがちな奏を、響の方がなだめる」という関係になっていましたね。
 たぶんスイプリのふたりっていうのは「片方が片方のサポート役にまわる」ボケツッコミ(夫婦=めおと)の関係ではないんでしょうね。


 響の回では奏がサポート役に回るし、奏の回では響がサポート役に回るという、リバース可能な関係なんだと思います。

 まぁ、あくまで響を「主人公」として見るなら、物語進行において手綱を握るのは奏の役目になるのでしょう。でも日常では響も奏の手綱を握っているんだろうということですね。


 快活だけどドメスティックで世界を広げたがらない響と、
 好奇心の強い社交家で外へと向かいたがる奏、
……と、互いに引っ張りあうベクトルを持っています。


 だから響が内にこもると奏が外に出そうとするし(3話)、奏がひとりで突っ走ろうとすると響が引き止める(4話)。


 2話の時点でも「このままの関係でいい響」と「外に向かおうとする奏」の違いは発見できましたが、(以下は参考記事)

 ふたりで一緒にいられたら、それだけでいい(正義感が強いからプリキュアの役割は深く考えずに受ける)、というのが、たぶん響側の認識で。
 でも奏の方は「ふたりで何か新しいことをしたい」っていう外への志向を持ってるんでしょうね。


 特定の友達をあまり持っていなさそうな響に対して、入学前から友達がいて、クラブに居場所があるのも奏です。


 第3話の予告でも、積極的に外部に関わろうとする奏に対して、内に閉じこもりがちな響が描かれるみたいですし。

「ふたりでひとつ(Suite)」なドとレのプリキュア/『スイートプリキュア』第2話感想 - ピアノ・ファイア


……そういう、お互いに欠けてる心を補い合うのがふたりの関係なのでしょう。

「別たれた半身」なようなふたり

 スイプリのドラマは、「痴話喧嘩」をベースに作られているのは間違いないのですが、このふたりを「夫婦」に喩えるのはちょっと違うような気もしています。というのは、この関係なら両方に「母性」が与えられているように感じるからです。


 響にとっての奏が「お説教タイプの母性」なら、奏にとっての響は「ひたすら甘やかすタイプの母性」ですよね。
(ふたりとも両親がコドモっぽいために、「大人の子育て」を経験できそうになかった家庭環境も、互いに母性を求める理由になっていそう。)


 実際、第4話の響のドメスティックな包容力はすごくて、「付き合ってたらケーキ職人としてダメになる」と心配されるのも間違ってないなぁと思います。響は自分が食べ慣れた味を美味しいと思ってるだけですし、いかにも「甘やかしすぎてダメにする」タイプの女性の母性を感じたり。
(むしろ響は奏に依存しすぎるあまり、「奏以外の料理を美味しいと感じない」味覚異常を病んでいるおそれすらあるような……)


 でも、まだ中学生の奏にとって本当に必要なのは「響の笑顔のためにケーキを作る心」を育むことであって、プロフェッショナルな仕事は意識しない方が良い……職人としてもそれが好ましい、ということなんでしょうね。


 しかし、「互いに母性を向け合う」この関係が、「親子」を模しているかというと、それもちょっと違うわけで。


 心理学っぽい解釈になりますが、こういう「欠けた性格を補い合う」「しかし本質的には同じ性格の人間」というのは、まさに「もともと同じ人間」「別たれた半身」と思えるくらいの絆(Spirt link)を感じさせます。(以下は参考記事)

正反対の凸凹コンビから、共通点の多い似たもの同士に


 スイプリが放送される前に流出した業者向けの情報でも「初のピンク同士!」とプッシュされていたように、今度のプリキュアは「正反対の要素」を減らして「共通点」でふたりを繋いでいることが気になります。


 そこから「似たもの同士」っていうキーワードに注目すると発見も多いんですよね。

『スイートプリキュア♪』は凸凹コンビではなく、似たものコンビに注目? - ピアノ・ファイア

 響=メロディと奏=リズムのネーミングに不思議な一体感があるように、フェアリートーンの色と音程も交差していて「ふたつでワンセット」の一体感があるんですよね。
 響と奏は「もともとひとつ」というイメージが強かったんですが、なおさら半身のような存在に思えてきましたね。アンドロギュノスというか。

「ふたりでひとつ(Suite)」なドとレのプリキュア/『スイートプリキュア』第2話感想 - ピアノ・ファイア


 「両性具有(男女同体)」の代名詞であるアンドロギュノスですが、元ネタのプラトンでは「男男同体」や「女女同体」のアンドロギュノスもいるんですよね。

いずれの半身も、もう一方の半身に憧れ、これを追い求め、一緒になろうとしました。そして、腕を絡め合って互いに抱擁したまま何もできなくなってしまいました。半身のままでは、働くことも生きていくこともできなかったのです。

ギリシャ神話


 別たれた半身を求める、ひとつに戻ろうとする気持ちの強さを見ていると、響と奏にはこのくらい「一体感」のあるイメージが浮かんだりしています。


 ……というか、そのくらいに「別れがたい関係」だと思ってみないと、このふたりは共依存すぎるよねーと考えてしまうのもありますが。


 比翼の鳥といって、「二羽一組でないと飛ぶこともできない鳥」の言い伝えもあります。それぞれ自立出来ていない、というのは普通なら良くないことなんですが、このふたりならそれも仕方ないかな、と思ってしまうくらいなんですね。


 ただ、中学入学後の一年間で、それぞれ単独でも学園内で優秀な存在になれることは証明されてますし、だからこそ許される「特別な関係」なのかもしれない……と意識しながら眺めていたいプリキュアです。


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