『映画 プリキュアオールスターズNewStage みらいのともだち』ネタバレ感想
なんばパークスシネマのメンバーデーを使って、絶対観に行かないとダメだと思っていたプリキュアNSを観てきました。
映画 プリキュアオールスターズNewStage(ニューステージ) みらいのともだち
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すごくメッセージ性が高くてしまりのいい映画でした。鑑賞後の余韻がとても良かった。
制作した東映のスタッフが「プリキュアで伝えたいこと」がよく込められていて、観るとスマプリへの期待にもフィードバックされますから、スマプリ勢にも推薦作ですね。
というわけでネタバレありの感想です。
伝説の戦士プリキュアの伝説
初代以降のプリキュアは、おおらかな世界観として「プリキュアという伝説の戦士がいる」という伝説が受け継がれていて、しかしハトプリ以外は過去にプリキュアが活躍したような歴史も描かれないし、あってないような設定だったんですが、
……これだけ何度も「パラレルワールドが集束するオールスター世界」の港町が繰り返し映画で描かれると、各作で言及される「伝説の戦士プリキュアの伝説」っていうのは、この「オールスター世界に集まるプリキュアの伝説」が伝わってるんじゃないか? っていう説得力さえ感じてきますね。
そもそも初代の悪役、ドツクゾーンが「異次元を滅ぼしながら地球に攻めてきた」という設定なので、多次元宇宙を貫いた「伝説」としてプリキュアが語られていたとしても納得がいくんですよ。
「幼児が憧れる中学生のプリキュア」に憧れる中学生
プリキュアという女児アニメのシリーズは、だいたい「小学生になったら恥ずかしくなって卒業する」と言われているようなシリーズです。
女の子としては、「中学生のプリキュア」が一応年上なので、自分よりもかっこいい、私より可愛い、という憧れの目線で見ることができるわけですが、小学校に入ると、ヒロイン達が「中学生にしては子供っぽい格好」をしていたことに気付いて、プリキュアは好きだった、という過去の思い出になってしまう。
しかしNSの作中だと「同い歳くらいのプリキュアに憧れている女子中学生」の姿が描かれていて、まぁ映画版も観客は女児なんですから、作中のキャラクターが幼稚園児並みのセンスをしていてもターゲッティング的に納得いくんですが、いきなりその前提からスタートすると、リアリティや感情移入のレベルで戸惑っちゃいますね。
ちなみにプリキュアシリーズ自体もターゲッティングに波があって、フレッシュプリキュアはちょっと上の世代の女の子にも見られるように意識して企画されていたそうです。
逆に、スイートプリキュアからシリーズ初の「小学生プリキュア」が登場し、今度は「憧れ目線」から「同世代感覚」というか「親近感」を出したいと考えているのかな、と想像していました。
で、最新作の『スマイルプリキュア!』だと、見た目も幼いばかりか、性格的にも幼く、取り立てて優秀でもない、親しみやすいキャラが増え、どこかしら「憧れるような中学生よりも、身近に感じられる中学生」を描きたい、というフェーズにシリーズは移行しているのかなあ、と感じています。
なおが頼りになるタイプ、れいかがスペック高い生徒というスター性はあるんですが、なおとれいかは二人とも控え目な性格で、「普通の女の子」である他の三人が動かないかぎり自分から楽しい遊びもできない、という消極さが「普通っぽさ」に繋がっているように感じます。
その点、この映画で「女児が憧れるようなプリキュアに憧れる中学生」=「目線が女児と同じくらいの中学生」を主人公に据えるというのも、その「身近なプリキュア」という脈の一端かもしれませんね。
オールスターズDXからNewStageへ
過去のASDXシリーズを観ているとわかるんですが、あれらの映画はほとんどミュージカルで、ストーリーもあってないようなものだし、対象年齢もかなり低くターゲッティングされてるように感じるんですよね。
完全に幼児向けに作られた『崖の上のポニョ』と同じで、「大きな画面でよく動いてるから楽しい」「細かいディティールまでキラキラ可愛いから楽しい」という、劇場で流すことを前提にした映画であって、スタッフもそれを割り切りながら「小さな子供のためのステージ」でミュージカルみたいな「お芝居」させていることがよくわかるんです。
舞台の上の出来事だから、キャラクターへの感情移入にも距離感が出てきます。それが「プリキュアをみんなで応援しよう」という仕立てにもマッチしてくる。ASDXのプリキュアの方がTVよりも「応援する」「守ってもらう」という英雄的な「お姉さん感」が強くなっていると思います。
普通の女の子というより、ASDXのプリキュアはずっと「勇ましい英雄」で「スター」って感じなんですよね。エンディングのダンスステージも、中学生じゃありえないくらい(言わずもがなですが)、すごい豪華だし。
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ASDXシリーズが「客体として見上げる」プリキュアを主に描いてきたという印象については、ライターのみやもさんも言及されています。
DX三部作、とくにDX3をご覧のかたはお分かりかと思いますが、このオールスターズって舞台上のプリキュアショーのような仕立てなんですよね。
で、それなら当然「舞台の上のプリキュアたちを見る子の視点」というのが足元にあるだろう、ってところへ踏み込んだのが今回のNS。あゆみちゃんはクライマックスでステージに上げてもらう子供ポジションでしょうかw
そこでちょっと驚いたのが、「プリキュアに憧れる」無邪気な視点だけじゃなくて「でもけっきょく自分はプリキュアじゃないし……」と気後れする視点も描いているところ。これはきわどい。
今回、歴代のなかで無印からYP5あたりまでは完全に伝説の存在として客体化されており(出番も必要最小限にとどめ、台詞もなし)、距離を取ってるため、引っ込み思案な坂上あゆみという子の視点が濃くなればなるほど、「プリキュアとは違う」感は増していきます。
身辺雑感/脳をとろ火で煮詰める日記: 映画『プリキュアオールスターズNewStage みらいのともだち』見てきた
プリキュアを見上げるだけの視点から、見上げつつも同じ目線に近付こうとするのがNSのコンセプトと言えるでしょう。
ちなみにASDXシリーズの監督は、いまスマイルプリキュアのシリーズディレクターをしている大塚隆史さんなんですが、大塚さんの「子供向けのサービス感」はスマプリを観ていると「あ、さすがASDXの人だなあ」と実感することがあります。
居心地のいい友達関係を作るところから始まって、秘密基地を探したり、自営業の友達の家に訪問したり、子供の欲望に応えるシチュエーションのつるべ打ちですからね。
で、ASDXはDX3になって『スイートプリキュア♪』の二人が「後輩」役を演じたあたりから、みんなお姉さん的な存在ではあるんだけど、スイプリの響がそんなにタフな性格じゃないこともあって、ちょっと「普通な女の子」要素が出てきます。
スイプリは、うじうじした性格になっていた響が、自分らしく素直になれるまでを描くという、歴代の中でも「精神的な成長」の振り幅が大きなタイトルでした。
そんなスイプリからスマプリのような「普通に悩みもある、そんなにタフなわけじゃない女の子」を描く流れが出てきたような気がします。
「応援するプリキュア」であると同時に「誰でもなれるプリキュア」
だから能登麻美子演じる主人公が「誰でもプリキュアになれるんだよ」とプリキュア達から諭されるシーンでは、悩んでばっかりだった響やエレン、子供っぽくて英雄的なところがないスマプリメンバーが伝える、ということに意味があるように映りますね。
で、スター性が高くてお姉さんなフレプリの人達は、当然後から混ざります。あの幼馴染三人は、それぞれ同年代の男子にとって憧れの存在ですからね。みんな将来の職業も身近に見据えていて、ちっとも普通じゃない。
普通の女の子、じゃなくて「宿命」で闘ってるようなハトプリも、当然「誰でもプリキュアになれる」というセリフは与えられないでしょう。
「誰でもプリキュアになれる」、というメッセージはアイドルへの憧れを言い換えたようなものだと考えると面白くて、アイドルになるっていうのは本来、明るくて楽しい世界なわけではないでしょう。
あえて極端に喩えれば『魔法少女まどか☆マギカ』のように、辛いことや厳しいことを覚悟して、一生を棒に降るくらいのリスクを背負って始めるのがアイドルなわけでしょう。
「アイドルになった時点で夢が叶うわけじゃなくて、夢の入口に立っただけにすぎない」と言われる所以です。
でも最近は、中学生の頃にAKBで研究生を経験して、挫折こそするけどダンスやチームの団結を楽しんで、高校受験が迫ったらアイドルは諦めて卒業し、別の夢を探す、という子だってかなりの数出てくるわけです。
そういう子たちはやはり抜きん出たスター性を持っていなかったり、ガムシャラなハングリーさも持っていなかったりする。「アイドルをやる」ことしかできなくて、アイドルの向こうにある夢を叶えようという流れに乗れない子たちなんですね。
それがいい経験なのかどうかは、本人(やその保護者)以外にはわからないんですけど、「アイドルという貴重な経験をさせてもらって、そこでした努力や楽しいことを、次の夢に役立てる」というモラトリアムの過ごし方は、単なる「挫折」ではなくて、アリな生き方だと思うんです。
ちょっと脱線しましたけど、プリキュアになって一年間世界を守り続けたり、世界を救ったりするような大活躍をしなくても(アイドルで言えば芸能界でスターにならなくても)、何か個人的に一段階背伸びするためだけに「プリキュアになる」子がいてもいい、というテーマへと「プリキュア」という概念がズラされているように感じました。
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ハッピーエンドを邪魔しないで
NSのストーリーは本当に「キュアエコーの物語」であって、本来なら「新規メンバー」としてスポットが当たるはずのスマイルプリキュアでさえ、キュアエコーに助言するだけで、それぞれ個人のテーマを語るようなことはありません。
ただ、ワンポイントだけ個人的なテーマを語っていたのがキュアハッピーで、戦闘中のさりげないシーンで「ハッピーエンドを邪魔しないで!」という『スマイルプリキュア!』らしいセリフを叫んでいました。
スマプリを見てると、みゆきに対して「童話は必ずハッピーエンドになるわけじゃないだろう」と大人目線で諭したくなったりするんですが、このキュアハッピーの言い方だと、「なんでもハッピーエンドでなければならない」というワガママではなくて、「本来ならハッピーエンドになるべきものを妨げてはいけない」という意味なんだということがわかります。
このメッセージって、エイチアンドアイのCMで、すごーく巧く描かれていることなので、スマイルプリキュアを観ていて「童話」の扱われ方が気になる人は、ぜひ一度チェックしてください。
「お話はこれからなのに!!」 - ピアノ・ファイア屋上の少女
女児アニメと成長
これまでのプリキュアが中学生のお姉さんで、元々スター的な女子ばかりだったのは、単純に「うじうじした主人公だと人気が出ない」という理由も大きかったと思います。
しかし成長するにはスタートラインも低くないといけないわけで、「最初から元気でくじけないヒロインだと成長ものにならない」というジレンマが女児アニメの企画には付きまといます。
そこで今までは「主人公が元気で、主人公以外のくじけた子を救う」という関係性でストーリーの中に成長の要素を入れる、という解決をしていたように思います。
それがスイプリから「くじけやすい主人公」という珍しいパターンが入ってきます。スペック的にはかなり高くて元気ではあるんだけど、家庭の境遇が良くなかったりして、人並み以上の悩みを抱え、気弱になりやすい女の子でした。
消極的な女の子だった響の成長は、DX3とNSの差でよくわかります。
DX3の後輩ポジションだった響を思い出しながら、NSで「先輩」をやってる響に繋げて通観すると、ああ、成長してるなあという実感が、先ほども言いましたけど、他のプリキュアよりも大きい振れ幅で感じられるわけです。
「普通の女の子からの成長」というコンセプトは、スイプリほど低いラインから始まるわけじゃないんですが、スマプリでも期待できるところです。
スマプリの場合、雰囲気が暗くならない工夫として、「そこまで元気のある子達が揃っているわけじゃないんだけど、とにかく居心地のいい空間を与えて、一緒にいれば楽しく過ごせる」というコンセプトを用意していることが挙げられるでしょうね。
小さな見所
以下はあんまりストーリーと関係ない小ネタ集。
- シフォンはんの超能力チートすぎる。思わず怖くなって「さすが無限のメモリーなり……」と心でツッコむ
- 良識派でコミュ力の高いタルトはんは相変わらず進行役として苦労してる。三代前のマスコットなのに、先代と先々代が仕事しないので現役活動することに
- 奏が響と再開したときにデレたシーンはまったく必然性がなくて和んだ
- 相変わらず、セリフがない出番であろうと手を繋いで恋人アピールを怠らない咲舞にも和んだ
- ハッピーが使う攻撃は頭突きと、両手を使ったハンマーパンチ。スマプリは従来のプリキュアと比べて「変身しても格闘技らしい格闘技がインストールされない」という仕様みたいで、戦闘力の低さ、好戦的になれないあたりが「普通の女の子っぽさ」を演出してる気がする
- キュアエコーのキャラデザはぴちぴちぴっちのるちあに見えて仕方ない
- 劇中ではまったく説明されてないけど、キュアエコーに変身できた理屈をヤボに考えると、「スマプリメンバーとスイプリメンバーとハトプリメンバーの浄化エネルギーを吸収したフュージョンの体内で、プリキュアとしてのエネルギーを取り込んで新たな形を与えた」かなーと考えてます
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