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『スマイルプリキュア!』が「スマイル」という名になる意味(12,13話の感想)

スマイルプリキュア! 公式サイト 東映アニメーション

 第12話「目覚める力! レインボーヒーリング!!」と、第13話「修学旅行!みゆき、京都でドン底ハッピー!?」の感想です。


 出来事としては「修学旅行編」の導入というところですが、シリーズ構成としてはクールの変わり目であり、合体技の会得作品コンセプトの再確認、と重要なエピソードが続いていたと思うので、そのコンセプトまわりについて感じたことを。

「仲間の輪に入れてもらう」描写の反復

 先週(12話)はキャンディメインの話であると同時に「控え目だからちゃんと人の耳に届くような話し方ができない」れいかの描写を繰り返しつつ、れいかを通して「仲間の輪に入れてもらう」キャンディの話に持っていく脚本が良かったですね。
 オールスターズNSの結末もそうでしたが、今のスタッフは「友達の輪に入る」過程を描くことを大事にしたいんだろうな、と感じさせます。


 れいかは第5話の初変身回にしても、「4人揃ってるプリキュアの中に最後に加えてもらう」→「加えてもらえたのが嬉しい」という描かれ方が印象的だったので(特にそこから笑顔が生まれるというあたりも→右図)、キャンディと自分を重ねる流れが自然ですね。
 

 キャンディも歴代マスコットの中では断トツに自己主張がヘタなタイプで(ドジな妹キャラって設定ですし)、「プリキュアにお世話させる」「使命を与える」という従来のマスコットの立場ではなく、対等な「六人目のプリキュア」の認定を受けるというあたり、スマプリは「弱気な子の寄り合い所帯」めいた関係が描かれている気さえします。

スマイルとハッピーの源泉

 そして今週の13話が、作品コンセプトを綺麗に全部入れして、まとめきってる上手いシナリオだなあと感心しました。
 脚本はシリーズおなじみの成田良美さん。


 占いを気にして凹むみゆきという図は、バッドエンド王国に干渉されているわけではないものの、「闇の黒い絵の具」に攻撃されてバッドエナジーを出してしまう状況と似ています。
 女子の好きな「占い」への関心を通じて、プリキュア達が「バッドエンドの予感」とどう向き合ってどう乗り越えるのか? というのを示している回であるかのようでした。

 特に物足りないと感じるのは、「スマイル」や「ハッピー」というコンセプトをどう活かすかなんですが、彼女らは「スマイルチャージ!」と叫ぶことでスマイルを「チャージ(補給?)」してヒーローに変身するのであって、彼女たちが天然で笑顔の素を持ってるわけではないんですね、たぶん。
〔中略〕
 そういう「普通の子」「優しいけど強くはない子」が世界を救う物語だとしたら、何をもって悪に打ち克つのか、飛躍しうるのか、というのが五人揃って見えてくる……ような展開だと、いいですね。

新番組『スマイルプリキュア!』4話までの雑感 - ピアノ・ファイア


 これって以前、上記のように期待していた通りの展開なわけです。


 バッドエンドの予感に対して、みゆき個人のハートが上回ることで「プリキュアに選ばれた女の子としての特別さ」を表現するのが無難なシナリオだろうな……と思いながら途中までは観ていました。
 ところが、もちろん本人のハートの強さ(薄幸に負けない明るさ)もあるのだけど、不幸に打ち克つには「友達」が一番大事で、友達が「笑顔」(スマイル)を生み、笑顔が「幸運」(ハッピーやラッキー)を呼ぶのだ、とキーワードを繋げていく、納得のお話。


 なんとなく語られていた「友達を大事にできる子がプリキュアになる条件」という言葉や、ASNSにおける「特別ではなく普通の女の子」、なぜ「スマイル」プリキュアなのか? バッドエンドとハッピーエンド……と、今まであやふやだった要素がこの回で全部昇華されていて、すごく凝縮されたシナリオ!


 不幸を友達で支えあう、というのは、ちょっと『輪るピングドラム』のキーワードである「運命の果実を分けよう」を連想するといえば、そうですね。
 歴代のプリキュアも「運命の果実を分けよう」的なストーリーはあったんですけど、偶数のカップリングではなく、奇数の友達関係によって共依存的にさせないのがスマプリの強みかもしれませんね。
(※逆に、今までで端的にピンドラっぽいのは『フレッシュプリキュア!』におけるラブとせつなによる一対一の家族関係だという。)


 ところでやよいのように、中学生になっても子供番組を好きでいつづける子ってのはいるもんですけど、みゆきがピーターパンに夢中という話は、大人になってもテーマパークや舞台に通い詰めるような女子のロールモデルになる感じ?
 作品コンセプトを固める大事なイベントをこなしながら、みゆきのメルヘン好きな設定もきちんと拾われているのも上手い、抜け目ないなあと評価したくなった回でした。


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