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【漫画論】漫画工学の可能性/つづきは「たけくまメモ」で!

つづきは「たけくまメモ」で

 ご存じ、竹熊健太郎先生のブログ「たけくまメモ」。
 かつて「ちくま」に連載されていた竹熊さんの記事がぼくらにも読めるようになっています。


 これは去年から今年頭までの間に書かれていた原稿だったようです。ところで、この内容と繋がっていくお話は、今年の4月に難波で催されていたトークライブでも触れられていました。


 ぼくはちょうどその頃、竹熊さんから直接お会いしながら話を聞かせていただく機会もあったのです。だから「なるほど、あの時はこの連載の主張に基づいて喋っておられたのだな」と、今回のブログを読んで納得したりも。


 当時、そのお話の内容や、トークライブの内容を簡単にレポートしたのがぼくのmixi日記に残っているのですが、雰囲気が伝わりやすいと思うのでここに転載しておきましょう。

トークショー覚え書き 2009年05月02日


プロの編集者の立場「大学で作家って育つの?」


うーんそう言われても実験段階だからなんとも言えないが……じゃあなんで出版社の編集は「ウチでは育てられる」って言い切れるの?


 ↓


それは、作家にギャラを払って、〆切を与えて、発表の場に引き出せるからではないか?


 ↓


つまり大学に必要なのは、(漫画論や漫画学は別として)学生でも「商業的に発表できる」場を作ることである


 (ここから先は居酒屋トーク


プロにできないことに対して、大学の先生にはできることがある。


「それは」


「それは!」


続きはたけくまメモ

 まぁ、つまり、この「続き」がまさにこれから読めるのだろうということです。

「漫画工学」という研究分野の可能性

 ……また、竹熊さんの記事では「マンガ工学」という言葉が出てくるのが目を惹きます。

マンガと大学教育(1)「マンガ工学部」の可能性: たけくまメモ

 そこで、私は「マンガ工学部」のようなものができないかと思うのである。表現論を基盤に置きながらも、それを「実作」に繋げるために一方で出版・産業界と連携をとりながら、文字通り工学部的な発想でマンガの創作プロセスを分析・再構築できないかというものだ。それは、現在の紙媒体のマンガ出版だけではなく、電子メディアへの展開も視野に入れたものになるはずである。


(中略)


 こうしたデジタル化の波の中で起きていることは、コマのような「マンガ文法の解体」そのものであるのだが、マンガ表現論の射程は、未だ「紙のマンガ」から出ていない。しかし現場でのデジタル化が、マンガ表現を根底から変えつつあることは事実なのだ。

 私が考える「マンガ工学」は、こうした制作・発表課程でのデジタル化による産業構造の変化を踏まえて、ハードウェアの枠組みが現状のマンガ・アニメ表現をどのように規定しているのか、未来の表現はどのように変化していくのかを研究しようというものである。たぶんそれは、現行のマンガ表現論を補うだけではなく、「マンガ産業」の未来も規定していくものになるはずである。


 ぼく(泉信行)自身は、いわゆる「マンガ表現論」を名乗って研究していない……ということは自分でも主張していたことで(「まだ誰も呼び方を思いつかぬ漫画論」参照)、それは漫画研究の大先輩であるところの、夏目房之介先生からも認識していただいています(「泉信行『漫画をめくる冒険』は「表現論」ではない!」参照)。


 しかし、この時点では「なんとも呼び方が思いつきようがない」という感じに呼び名を避けていたのですが、竹熊さんの提唱する「漫画工学」という考え方は、ぼくが目標とする研究に近接する考え方をしているような気がしています。
 まさにこの分野に役立てられるために考え出していたのが『漫画をめくる冒険』一連の内容だったのではないか、と思うくらいです。


 今後「漫画工学」という言葉(研究分野)が一般的になるかどうかは定かでないのですが、そんな場合は自分自身から「漫画工学」を称することもあるかもしれません。


 また、このブログでも「アナログの漫画と、デジタルの漫画をめぐる媒体的な問題系」を探る記事の公開を続けていこうと思っています。そう、例えば、pixivにおける漫画投稿システムなどについてなどです。そういうのも楽しみにしていてください。