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 移行後のはてなブログ:izumino’s note

『ユリイカ 2015年1月臨時増刊号 総特集◎岩明均』に寄稿しました

 漫画研究家、泉信行のお仕事報告です。
 『美術手帖』ボーイズラブ特集への寄稿に引き続き、『ユリイカ』臨時増刊号の岩明均特集では、「その画はどこから生まれているのか―メディアの本質を問うための岩明均論」を寄稿しました。


 アニメ版『寄生獣 セイの格率』と原作『寄生獣』の比較検討から始まり、「ウェットなアニメ版」と「ドライな原作版」という対照から、「アニメ化によって見えてくる漫画メディア」の本質を照らそうという試みをしています。
 取り上げている岩明作品は『寄生獣』に加え『ヒストリエ』も含みます。


 元々『ヒストリエ』の作品論は、2008年から2009年にかけて『Review House 02』と『ビランジ』という非商業の冊子で論じていたのですが、今回それをブラッシュアップして掲載する機会にもなっています。
 タイトル通り、岩明均論としてだけでなく、「その画はどこから生まれているのか」「漫画を見るということはどういう体験か」という本質的な漫画論としても読まれることができれば幸いです。


 臨時増刊号は明後日、12月12日の発売です。よろしくお願いします。


ユリイカ 2015年1月臨時増刊号 総特集◎岩明均 -『風子のいる店』『寄生獣』から『ヘウレーカ』、そして『ヒストリエ』へユリイカ 2015年1月臨時増刊号 総特集◎岩明均 -『風子のいる店』『寄生獣』から『ヘウレーカ』、そして『ヒストリエ』へ
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【告知】12/05夜に『寄生獣 セイの格率』『サイコパス2』Ust

 前回から四ヶ月ぶりになりますが、HARD-WIREDさんとのアニメUstをまたやります。
 お題は『寄生獣 セイの格率』『サイコパス2』『クロスアンジュ』などです。


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『美術手帖』2014年12月号のボーイズラブ特集に「恋の心のシミュレート―同/異性をめぐるキャラクターの表現」を寄稿しました

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 今月の17日に発売された美術手帖』2014年12月号では、ボーイズラブが特集され、作家10人のインタビューがメインの他、作品・BL史紹介、論考などで構成されていました。


 あまり先入観をもって読んでほしくないな……と思っていて、自主的な宣伝は控えていたのですが、連休も明けたことで読了済みの方も増えたようですしお仕事報告したいと思います。
 特集ページの、一番最後に載っている「恋の心のシミュレート―同/異性をめぐるキャラクターの表現」泉信行が寄稿しています。


 最初、編集部から原稿依頼があったときは当然「いいんですか!?」という感じだったのですが、漫画の「視点論」として論じてほしいとのことで、客観的にしか書けませんけどいいですか、と確認してから「そういうのをお願いします」と言ってもらって書くことにしました。


 ですから、なるべく自分の主観からではなく、友達の腐女子の人たちから聞いた話を多く取り入てかたちにしています。原稿の下読みには、結構気を遣って複数の友達にチェックしてもらいながら書くことになりました。われながら臆病ですね。


 今日、『美術手帖』の感想記事で紹介していただいた部分を引用してみます。

見どころ3 ボーイズラブ徹底論考!BLは奥が深い

〔略〕そして女性読者の性的アイデンティティにせまる、泉信行さんの
『恋の心のシミュレート 同/異性をめぐるキャラクターの表現』である。
〔中略〕
前項で、「女性読者は性的なアイデンティティとは違った『何か』を
作中のキャラクターに重ねることで、彼らに『共感』している」と書いたが、
泉さんも「『腐女子は他人事を俯瞰して眺めるのが好きで自己投影はしない』という、
よく広められている説に一石を投じるべき」と述べている。


では、女性読者がボーイズラブ作品のキャラクターに重ねる「何か」とは
一体なんなのか。
これに関して、泉さんは「恋心のシミュレート」という視点から考察を試みている。
〔中略〕
女性読者がボーイズラブを読むときも、ただ俯瞰的にキャラクターを
眺めているだけではない。
彼らの心情や感覚を「シミュレート」し、共感することができるからこそ
「萌える」のだ。
人が人を愛する気持ちというものは、性別を超越した尊い感情なのだろう。
ボーイズラブは奥が深い…。
そう感じずにはいられない論考だった。

ボーイズラブとは、人間同士の“関係性”を描いた珠玉の表現である | gotamag


 それと、裏テーマとしては「BL論をBLだけに特殊なものと語らない」というものがありました。
 ありとあらゆる性別の組み合わせによって恋愛は描ける(読まれる)のであって、そういう「恋愛の読まれ方」をまず考えてから、その中のBLを語った方がいいのではないか……。「同/異性をめぐるキャラクターの表現」というサブタイトルにはそんな意図も込めています。


 BL特集ということで、結局はBLに焦点を当てて書くことになるのですが、ここをもっと色んな性の組み合わせ(GLやそれ以外)に広げて考えることもできるのではないか、と記事の裏では考えていたります。


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同情と共感と日仏マンガ文化比較

 日本の漫画の研究、海外の漫画の研究は、それぞれ蓄積もあり、互いに交流や応用研究も多少はあるのですが、(各国の漫画を専門に論じるのではなく)比較文化論の観点から並べて分析してみる、というアプローチは自分が知るかぎり珍しいなあ……と思います。


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 そう考えるきっかけになったのがTwitterのこのpost。



 これは直観的な話なんですけど、日本文化とフランス文化で「他者」に対する接し方の違いがはっきりとあるのだとしたら、それぞれの文化から生じる「キャラクター」の見方も当然異なるはずだと思うんです。


 背景にある文化の違いから、漫画文化の違いも当然生まれる。これはまさに比較文化論なんじゃないでしょうか。


 具体的に、この差に比例するような漫画の話はいくつか聞いたことがあります。
 ひとつはBD作家のJ.D.モルヴァンと、元マガジン編集者の宮原照夫による日仏比較論を受けた夏目房之介さんの考察です。
 

インタビューの中で、ジャン=ダヴィッド・モルヴァンはBDとマンガのスタイルの違いについて尋ねられて、こんな風に答えている。

〈BDの作家はどちらかというと「物語」を語ろうとする傾向が強いんです。それに対して、日本のマンガの作り方は、「登場人物」にずっとフィーチャーしているというか、そこに焦点をあわせようとする。だから登場人物を豊かにしようとする傾向があると思うんですが、その辺が大きな違いじゃないでしょうか。[略]もちろんBDの場合もキャラは重要なんですよ。ただ、日本のやり方とは違ったやり方でキャラを使います。BDの場合はキャラクターを使って物語を語る。一方、日本のマンガは、物語を生きているキャラを描く。〉(同誌 165~166p)

要するに「物語」の構築が最後にたどり着くべきものなのか、キャラクターが「物語」より優位にあるか、というような意味のことなのだが、もちろん、そのままでは多くの反証や例外を思いつける。


(中略)


この手の比較論は、必ずこうした相対性をはらんでしまう。だから、ここでの言い方に何か「いい当てられている」感があるとすれば、そのことをどのレベルで掬い取り、どう言語化するかが問われるだろう。ここでいわれている「物語」が、一体どういうものを示そうとしているかが鍵かもしれない。


(中略)


かつて宮原照夫に伺った、フランスとの出版社社長の対話で優先順位の違いが問題になった件を思い出す。宮原は「1、テーマ、2、キャラクター、3、ストーリー、4、絵」といい、社長は1、絵、2、テーマ、3、キャラクター、4、ストーリーといったというのだ(拙著『マンガの深読み、大人読みイースト・プレス 所収 宮原インタビュー 221p)。だが、そもそもキャラクターの意味合いが「物語」との関係で文脈的に異なっているとすれば、簡単には比較できない。また「物語」を単純にストーリーと同じということができるかどうかでも話は違ってくる。

BDとマンガ(マンガ・エロティック エフ):夏目房之介の「で?」:ITmedia オルタナティブ・ブログ


《ここでいわれている「物語」が、一体どういうものを示そうとしているかが鍵かもしれない。》
《「物語」を単純にストーリーと同じということができるかどうかでも話は違ってくる。》


 ……などと、そもそも「テーマ」「ストーリー」「物語(Narrative)」という用語のレベルで日仏では認識のズレがあるのでは?*1 という保留がされているものの、「キャラクター/物語」を対置させることで日仏の漫画を比較しようというアプローチは珍しくないものです。


 次に、これは漫画にかぎらない話なのですが。アニメーション監督の高畑勲がフランスのアニメを紹介する際、日本人の「感想文」とフランス人の「感想文」の違いをこう語っています。

小泉首相が“感動した”と言っても、それは何も表現していないことと同じでしょう。にもかかわらず、その言葉が人々に訴えかけるのは、日本人は心が大好きな国民だからだと思うんです。日本人は、どうも感情だけが問題になるんですね。これがフランスだと違うんです。


前に僕の作品をフランスの子供たちに観てもらって、感想を聞きましょうとなったらね、これが感想じゃないんです。皆、自分がどれだけこの映画を把握したかを語るんです。そこで、気がつきました。日本ではこういう場合、読書感想文という言葉がそれをよく表しているけれど、何を感じたか、感動したかを問うている。でも感動というのは、あっという間に雲散霧消してしまう感情を表現しているだけですよね。知的、理性的に何かを掴んだかどうかはあまり問われないんです。

対談:太田光×高畑勲 - 映画『王と鳥』公式サイト


 「日本人は心が大好きな国民だから」という言葉ですが、最初の「言わなくてもわかるでしょ」と「相手の考えを勝手に類推してはいけない」に繋がってくるようには感じられないでしょうか。


 高畑勲と言えば、「受け手の感情の勝手な押し付け」である「共感=思い入れ」と、「客観的な理解」である「同情=思いやり」の違いを、映画を通していつも主張している人でもあります。


 演出的に言えば、主観ショットやクローズアップ・ショットが多用される映画では、観客をその世界に没入させるジェットコースター感こそが重視され、客観的に思いやるような「同情」ができないように作られている、と批判的に論じています。


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 高畑勲の言う「共感型の映画」はアメリカのハリウッド映画も含むので日本固有の問題というわけでもないのですが、初期ディズニーのアニメと日本のアニメでもクローズアップ・ショットの違いが大きいと考えているようです。


 また、アメリカの漫画家/漫画研究者であるスコット・マクラウドも、日本の漫画の特徴として主観ショットや「主観移動ショット」が多用されることを『マンガ学』(原題:Understanding Comics)で挙げていました。
 当時のマクラウドが調査したかぎり、日本の漫画の「主観移動ショット」の使用率は世界的に独特と言えるほど突出していたようです。


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 つまり、日本の「心を大事にする」「他人の心は察するべきもの(=勝手に共感していい)」という文化背景が、「他人の気持ちがわかる」ことを重視する「共感」の文化を築き、物語の表現も「キャラクターの気持ちがわかる」「キャラクターの気持ちを見せる」キャラクター表現を専門的に発達させていったのではないか。


 逆にフランスの「他人の心を勝手に類推してはいけない(=共感しないのが当たり前)」という文化背景から、キャラクターではなく作品の「出来事」や「絵」を重点的に見せる表現が発達していったのではないか。


 あくまで仮説にすぎないのですが、こういうアプローチから日仏の漫画文化を捉え直すこともできるのではないでしょうか。


 また、比較文化論でもっともたいせつ、また得るものが大きいことは、彼我の文化比較によって「今まで自明だと思い込んでいた事柄が、伝統的な文化に根ざした、非・普遍的な思想にすぎない」と気付かされることです。
 当たり前だと思っていることが、当たり前ではないとわかる。これは何かを研究をしたり理解する上でとても重要ですし、本来欠かしてはいけないものです。


 特に日本の「キャラクター漫画文化」は、この伝統的な思想による影響がよく表れているものだと思います。
 そこを問いなおすきっかけとしても、この日仏文化比較は興味深いトピックなのではないでしょうか。

*1:補足すると、宮原さんは少年マガジンで「原作者付き漫画」、それも文学的なヒューマニズムの表現を重視してきた人なので、「テーマ」を一番上にして主張するのはその姿勢のためもあるんでしょう。

【KADOKAWA祭り便乗】『おこぼれ姫と円卓の騎士』のここが面白い

 KADOKAWA電子書籍が値下げ祭なんですが、いい機会なので「最近ハマってるけど周囲に読んでる人がいないよ」っていう小説の宣伝でもしておこうと思います。
 好みが近い人は読んでみてくださいね。


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『おこぼれ姫と円卓の騎士』のここが面白い1

少女小説ビーズログ文庫の人気シリーズ
・魔法も戦争もない王国が舞台のファンタジー
・ヒロインのお姫様だけは体に初代の王から受け継いだ13本の剣を埋め込んでいてそこだけ中二設定でそそられる
・全ての剣の能力はなかなか明かされなくて焦らされる

『おこぼれ姫と円卓の騎士』のここが面白い2

・基本は内政ものだが、政治的バランスで暗殺謀殺の血みどろの内乱が起こりかねない緊張状態で立ち回る
・1巻の敵は初代の王と同時代の呪いアイテム
・王位を継ぐために12人の「円卓の騎士」をスカウトしなければならない、というのがシリーズを通した目的で、13本ある剣は自分と騎士に授与するための剣を合わせて13本という設定

『おこぼれ姫と円卓の騎士』のここが面白い3

・ヒロインは自分がすごい美人だと自覚できてるいい性格系
・兄達が優秀すぎるので謙虚だが頭が良く、王の資質というか「臣下たらし」の資質が超スゴイ
少女小説なのに数巻は恋愛要素がほぼない(それで人気シリーズなのが不思議)
・逆ハーレムっぽいが、騎士の忠誠やシスコンの兄弟の愛情が強いだけで全然恋愛にはいかない(というか臣下がたらしこまれることはあっても、ヒロインの方からは惚れる相手がいない)

『おこぼれ姫と円卓の騎士』のここが面白い4

・お姫様のいい女っぷりを表す話として「自分の騎士を凄いとか格好いいとか一度も褒めずに、できることしか命令しないわと言って剣術大会に優勝しろとか命令し騎士が褒められるより嬉しいと喜ぶ」という超いい女描写がある。全編このペースでいい女すぎる
・ちなみにその騎士の寝室に深夜に忍び込んで話し相手になったりするが超美人なのに全然その気にならないし、あなた以外の男の部屋にいくわけないじゃないという互いの信頼っぷり
・でもこいつは自分が守らんといかん王だと思って騎士精神しか持ちあわせてなかった六歳歳上の騎士が、なんかこいつ髪の毛すげえ綺麗だなとか、3巻あたりから魅力を意識しはじめるあたりもたまらない


 というわけで少女小説好きな人にはおすすめです。
 これWeb発の(アルファポリス発行の)少女向けファンタジーだったら単なる内政チートに分類されそうなんですが、お姫様の頭いいから普通にミステリ調に読ませるところもあるんですよね。
 政治的な駆け引きや、ヒロインの「美人としての心構え」なんかもしっかり説得力あって読み応えは結構あります。その上で読みやすくて、かなりするする既刊を読破しつつある最中です。



 この画像は漫画版。
 小説1巻ぶんをコミックス1冊にまとめてるので、ストーリーは簡略化されてますがあんまり不満のないコミカライズでした。絵はきれいで理想的なイメージで楽しめます。


おこぼれ姫と円卓の騎士(1) (KCx(ARIA))おこぼれ姫と円卓の騎士(1) (KCx(ARIA))
暁 かおり 起家 一子

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おこぼれ姫と円卓の騎士(2) (KCx(ARIA))おこぼれ姫と円卓の騎士(2) (KCx(ARIA))
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【告知】土曜日22時から伊藤悠さんと「艦これ」ゲームUst

 夏のイベント真っ盛りな週末ですが、今回コミケは不参加なので、気晴らしに土曜の夜にUstをします。
 お相手は、テキストサイト指輪世界」の管理人で、今はゲーム関係のお仕事もされている「伊藤悠」さんです。


 主に、艦これのゲームデザイン的な部分から、ゲームの理屈の話をできたらと思います。録画はアーカイブ予定です。
 あと大井篤『海上護衛戦』の話も含まれているかもしれません。


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大井 篤

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「彼女」を描く少女漫画/二区 『ツイテル彼女。』1巻

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  • 左が紙書籍版、右がKindle


 Web連載で見かけたのが面白そうだったので、電子書籍で購入してみたのですが、たいそう面白かったです。
 ちなみにこのタイトルの「ツイテル」は、雑破業原作の『ツイてるカノジョ』の「憑いてる」ではなく、あそこにアレがついてる、つまりふたなりのヒロインが「彼女」というコンセプトになっています。


 で、特に何がよかったかというと、作者が「(マイノリティ専用の)少女漫画です」と書いてるところ。
 社会人ラブコメで、主人公は男ですし、「少女漫画?」とツッコまれることも予想して書いていると思うのですが。
 ヒロインが男性向けの二次元キャラのような題材にも関わらず、単なる男性向けの妄想で終わらないところがいいと思います。


 このヒロインは女として生まれて後天的に「生えてきた」パターンの半陰陽なのですが、だから社会的にも精神的にも女性として育っていると同時に、下半身に由来する性欲も備えている、という解釈で描かれています。
 そのため彼氏役の主人公と下ネタ話を共有できるのも面白いところなのですが、同時に男としては後ろの穴を彼女に狙われていることに怯えてたりもする。ところどころ性役割が逆転することの面白さです。


 男の妄想として扱われがちなヒロインを少女漫画として描いて、(実際に少女漫画になってるかは別として)「ヒロインが男のために存在しているのではなく、相手役の男もまたヒロインにとって都合のいい恋人になっている」という視点も両立できている面白さは、先月コミックスが出た『カスタマイズ彼女さん』の面白さにも通じますね。


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神葉 理世

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 この作品も「二次元美少女が好きな美少女」という、「オタクの妄想」的なヒロインなのですが(ちなみに腐女子ではない)、単に男にとって都合のいい萌えキャラ、という扱いで終始していないのが魅力的。
 彼氏役の男の方が、非常に甲斐甲斐しくヒロインと付き合おうとするので、「やっぱり少女漫画なんだな」という読後感に繋がっています。


 というか、女性的なセンスで描かれた「○○彼女」というタイトルの漫画は、掲載誌がどこであれ、主人公が男でヒロインが美少女だとしても、だいたい上記のような描かれ方をしている気もします。


 作者自身もヒロインを可愛いと思って(やや男性的な欲望も混ざった可愛さを込めて)描きつつ、同時にヒロインが置き物にならないような恋愛を描く。


 そういう作品は、男性視点で読んでも女性視点で読んでも安心して楽しめるので、ジャンルに関わらず支持されてほしいなと感じています。

『ツイテル彼女。』がWebで読めるサイト一覧


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