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森夕『魔法科高校の優等生』2巻とその表現

 佐島勤ライトノベル魔法科高校の劣等生
 その視点を変えたコミカライズ作品、魔法科高校の優等生2巻が発売になりました。


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 1巻の1話の試し読みはこちらから。

描き分けを読む

 これは単なるコミカライズとして読んでいるだけでなく、以前からこのブログで取り上げている「美少女キャラの描き分け」というテーマに注目して読んでも楽しめるシリーズです。

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 ここで挙げているのは「特定のヒロインが誰からも憧れられる存在であること」がストーリー展開に関わるお話です。
 単なる「読者から見て可愛い」ではなく、「その世界の中でどう魅力的に見られているのか」を知らせる描き方が必要とされています。
 「そこを描かないと話にならない」、と考えてもいいくらいでしょう。
 『魔法科高校の優等生』は、その視点をかなり意識して描かれているようです。


 Gファンタジー連載のコミカライズ『魔法科高校の劣等生』は、原作小説を「主人公の一人称」的な視点でコミカライズしているのに対して、『優等生』は逆に脇役からの視点を多くしています。
 主観的な視点だけでなく、客観的な視点からも「ヒロインの可愛さ」を描き重ねることで説得力を高めようとしている。


 その「説得力」が高ければ高いほど、読む側も心置きなく「可愛い……」と思えるし、物語を第三者視点で眺められるようになる、というのがこんな表現のたまらないところです。

心理描写で読む

 ところで、さきほど挙げたのは少女漫画ばかりなんですが、『優等生』も『コミック電撃大王』という雑誌の連載でありながら、どこか「少女漫画的」なデフォルメ描写や心理表現に魅力があります。


 1巻に比べると、2巻の作画は少し「電撃大王寄り」に合わせたようにも感じますが、作者の森夕さんの元々のセンスなんでしょう。


 小説のコミカライズ作品としては、『劣等生』との差はそこにも表れているかのようです。


 元の原作が、理系的な解説を微に入り細に入り行う「解説小説」の様相を呈しており、人によってはそこが苦手に感じることもあるはずです。
 そんな原作に対して、『劣等生』が図解入りのガイダンスでわかりやすくしようと試みた「解説マンガ」だとすれば、『優等生』は「説明しなくていいことは説明しない」という雰囲気重視の描き方になっています。


 そもそも原作自体が「理系的な解説は読み飛ばしが推奨」というスタンスで書いていたというくらいですから、「解説しない」というのも正解なんでしょう。


 『優等生』は少女漫画のように心理描写に重きが置かれていて、なにげない行動でも「内心ではフクザツな心理が働いていた」と伝える演出が、(設定の解説以上に)多めに盛られています。


 これも、一人称的に描かれているGファンタジー版『劣等生』との違いになっていると言えそうです。


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 『優等生』の2巻には原作の佐島勤からのメッセージがあり、内面の描き方は「グッと来ました」とコメントされるほどでした。

余談

 あと、巻末には原作者の佐島勤の他、原作挿絵の石田可奈、Gファンタジー版の林ふみのきたうみつなの寄稿が載っています。


 そこで石田可奈さんが「深雪さんの姫カットの表現のこだわりとか素敵です」「勉強させてもらってます」とメッセージを贈ってるんですが、これは実際に影響を受けているのかもしれませんね。


 と思ったのは、原作10巻のこの挿絵。



 最近のイラストの流行りである「前髪の透ける塗り」なんですが、森夕さんのカラーイラストでは1巻からこのスタイルでした。



 たぶん、石田可奈さんがこの塗り方をしたのは10巻のこの一枚だけで、他は髪先まで塗りつぶす塗り方になっています(ちなみにGファンタジー版の絵も同じく)。


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 複数のアーティストの手に渡る、せっかくのメディアミックス。こういうフィードバックがこれからも発生するとしたらいいですね。