漢字と呪術への好奇心を描くファンタジー/津田雅美『ヒノコ』1巻
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『ブスと姫君』『彼氏彼女の事情』『eensy-weensyモンスター』と、現代日本の学園ラブコメに定評のある作者ですが、
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……元々は「魔法使いシリーズ」など、ファンタジーやSFも好んで描いていた作家でした。
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『ちょっと江戸まで』も時代劇というだけでなく、SFとしても良かったですからね。
『ヒノコ』はそんな作者にとって、久々のファンタジーで、しかも短編ではなく連載ということで、今までの活動経歴からすると新しいチャレンジだと言えます。
作者の好奇心がそのまま描かれるタイプの少女漫画
しかし、『ヒノコ』は架空の異世界のファンタジーではあるんですが、「漢字」という現実に存在する文字を利用した、「古代日本風のファンタジー」です。
リアルの日本文化に近いという点では、江戸時代の文化を描いた『ちょっと江戸』と接続するところがあるかもしれません。
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『ヒノコ』の世界の「漢字」には、亀甲文字から楷書までの歴史があり、その由来や成り立ちを解説しながらドラマも進みます。
強力な巫女であるヒロインが、漢字の字型を呪術のように使うことがそのドラマの発端にはなっているとは言えるでしょう。
でも作者の動機としては、自分が勉強した漢字の意味や魅力を、読者にわかりやすく伝えたい……というのが創作のメインになっている感じがします。
それは、時代小説が読みたいという趣味がこうじて江戸時代の暮らしについて勉強したら面白かったので、自分が学んだことを漫画にしてみました、という『ちょっと江戸まで』の創作動機と似ています。
その結果、『ちょっと江戸まで』は「歴史に興味を持ちそうな女子」や「歴史の勉強が苦手な受験生」に読んでもらえたらよさそうな作品になっていました(もちろんウンチク描写だけが魅力ではないのですが。2011年の少女漫画で特別に優れていた作品のひとつだと思います)。
『ヒノコ』もそんな作者の好奇心が素直に出ていて、「ちょい江戸」に比べると、より趣味的になった気はするんですけど、これはこれで「少女漫画家らしい」漫画の描き方かもしれません。
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