映画『ベスト・キッド(2010)』/師匠が弟子を救うのか、弟子が師匠を救うのか?
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ジャッキー・チェン主演のリメイク作品。先週末に友達と観てきました。
原作とほぼ同じ流れでありつつ、脚本的にはすごく練られていて、完成度の高い映画になっていました。すばらしい。
基本的には「弟子」と「師匠」という「二人の物語」なのだけど、終始存在感があったのがライバル役の男の子で、いじめっ子として描かれている時の演技がホントに憎まれ役に徹していてすごい。それでいて、カンフーアクションの動きは非常にアクロバティックで華があるんですよね(どこからがスタントなのかはわかりませんが)。
それに対して、自己主張しすぎず控えめだったヒロインの描き方も良かったですね。
そういえば、『ベスト・キッド』みたいな師弟関係――師匠が弟子を救ってくれたのか、弟子が師匠を救ったのか、が混在している物語――としては、『カンフーガール』という小説がお勧めです。
映画を観て改めて気付きましたけど、この小説も筋書きはまんま『ベスト・キッド』(日本の女子高生が主人公で、教わるのは太極拳)なんですよね。
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夏が終わらない内に、いろんなWebコミックやWeb小説を改めてお勧めするよ
夏コミは、当サークルにお越しいただきありがとうございました。ちゃんとした新刊はありませんでしたが、なんとかコピー誌だけは用意できました。初体験のコピー誌作りは新鮮で、ああいうのはまた出したいと思います(その前に新刊をキッチリ作るのが先決ですけど)。
まぁそれより、くらふとさんのまおゆう本『ゆかいなまおうとゆうしゃ 入門編』が無事完売しました。
ぼくが解説を担当しており、ウチの「ピアノ・ファイア・パブリッシング」でも委託していた同人誌です。
人気Web小説、魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」を杉浦茂風に漫画化しました。。
ギャラリークラフトC78告知 - ギャラリークラフト
現在連載中の1〜13話を収録。巻末には泉信行氏(id:izumino)による解説を収録。
A5、60P。500円を予定。
- 書影はきくちさんのレビュー記事からの無断借用
この漫画の続きは、くらふとさんのPixivやTwitterのハッシュタグ、公式保管庫などで追うことができます。
なのですが、これがそろそろ「原作の入門用」というよりも、3スレ目あたりからは「原作を読んでから読んでね」っていうフェーズに入りつつあります。かなり物語の佳境に入ってきましたからね。原作のシーンを知っていた方が絶対楽しめる。
なので、ろんちさんのまおゆう動画と一緒に「これで興味持ったらぜひ原作読みましょうね誘導」を積極的にしておくべきかしら、と考えていました。
というわけで、原作小説のwiki保管庫はこちらです。誘導、誘導。
トップページ - 魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」@ wiki - アットウィキ
サイドメニューの「1スレ目/1-1」から読むことができます。とりあえず、くらふとさんの漫画の第一話にあたる部分、ろんちさんの動画シリーズで一区切りとなる110レス目までを一気読みするとよいです。
未読の方は、この夏休み中(まだあれば)にぜひ!!
そしてこちらが、ろんちさんによる「描いてみた」動画。こっちを先に見ておくのも一興です。
「魔王と勇者のアレ」 ろんち さんの公開マイリスト - ニコニコ動画
くらふとさんの漫画同様、この動画シリーズも、途中からは「原作を読んでいた方がより楽しめる」仕様になっております。
最初あたりはまさに「入門用に最適」って感じなんですけどね。
ここからスーパー便乗布教タイム
あと便乗でもうちょい宣伝すると、まおゆうの作者さん(橙乃ままれさん)もTwitterでお勧めのWeb小説が「魔法科高校の劣等生」ですよ。ここんとこ何度も話題に挙げてる作品ですね。マジ面白い。
「小説家になろう」というWeb小説投稿サイトで読める作品です。
って、この流れなら、ままれさんの新作である「ログ・ホライズン」(同じサイトで連載中)を先に紹介すべきところなんですけど。
ままれさんの他作品は、ニコニコ大百科の一覧から過去作を漁っていくといいんじゃないかなと思います(個人的には、黒髪娘と兄ハンバーグと先輩帰っていいですよがお勧め)。
まだまだいきますよ。
Webコミックから、牛帝さんの「同人王」。性描写のある漫画なので読む人は選ぶと思いますが、ぼくはすごく読みふけりました。
ままれさんも絶賛! あと、夏コミ会場でお話ししたたまごまごさんも絶賛してましたよ!
一見、不条理ギャグマンガっぽいんですが、中身はとても深いです。傑作。
Webコミックといえば、クラブサンデーで連載中の『ポップコーンアバター』。
これは商業作品なのですが、どうも売れ行きが芳しくないっぽいので改めて紹介しておきます。3巻まで出てるので、買ってください。
『惑星のさみだれ』みたいな、ちょっと背伸びした感じの少年漫画が好きな人には向いてるんじゃないかなって思います。
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ちょっと知名度低いんじゃないかなあ、という意味では、突然エロゲーですけど『WHITE ALBUM 2』も挙げようと思ってました。
変則的なラブコメもの(三角関係モノ)としてはめちゃ面白いので、もっとユーザーが増えればなあと思います。
あ、これは前作を知らなくてもプレイ可能です。
それと、まだ在庫あるみたいですから、必ず特典小説付きの初回限定版を入手しましょう。よく考えたら真夏に買うゲームじゃないって気もしますが、たぶん次の冬には終章が出ますので、今のうちにやっとくべきですね。
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- 関連1:「粋」から「無粋」へ踏みこむ恋の物語/『WHITE ALBUM2 -introductory chapter-』 - ピアノ・ファイア
- 関連2:ホワイトアルバム2/プレイ日記01/感想/Leaf かもめは意外とゲームが好き。
というわけで、「咄嗟にいま勧めたい」って感じのものを無作為に並べてみました。我ながらラインナップがカオス。
あっそうだ、あと劇場映画からは『借り暮らしのアリエッティ』も……
『借りぐらしのアリエッティ』観た
新宿のバルト9で観てきました。思っていた以上に素晴らしかったです。とても良かった。
ジブリ映画に対する評価が変わる作品であるのと同時に、とてもジブリ映画らしいとも感じる……という不思議なアニメ。
セシル・コルベルによる主題歌もとても良かった。そういえば、今回のBGM作曲は久石譲じゃないんですね。そこも従来のジブリ作品のイメージから離れられている所なんでしょうね。
そして、これは今気付いたことなんですが、劇場チラシのキャッチコピーも作品のストーリーを指し示すだけのもの*1に留まっていて、これも最近のジブリらしくない所ですね。
公開前のプロモーションも全然うるさい感じではなかったので、ほとんど期待せずに観ることができたのがかえって良かったのかもしれません。
鑑賞後、友達と一時間くらい語り合いましたが、とにかく良いアニメでした。
映画の同行者がみんな、アリエッティグッズを帰り道で買い漁っていたのが印象的でしたね。たしかに欲しくなるんだよなあ。
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*1:「人間に見られてはいけない」
ニコニコ動画で杉浦茂MADを巡るお祭り
多芸な絵師・くらふとさんによるニコニコ動画企画、杉浦茂生誕102年祭「ゆかいじゃのう2010」が本日から開催されています。
- http://yukaijanou2010.tumblr.com/
- ゆかいじゃのう2010とは (ユカイジャノウニセンジュウとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
- 「ゆかいじゃのう2010」 くらふと さんの公開マイリスト - ニコニコ動画
この企画について言えば、ぼくも無関係な人間ではありません。
思い返せば、くらふとさんと一緒に京都マンガミュージアムの杉浦茂展へ足を運んだのが、去年の三月。
そこで杉浦茂の魅力に直面したくらふとさんが、なんらかのインスパイアを感じていたことは、横にいたぼくからも窺えていたのですが、まさかこのように結実・開花するようになるとは……。作り手に起こる化学反応は、想像だにできないものがあります。
それにしても。
ここまで精力的に、杉浦茂のパロディ活動が行われるということは、かつてなかったと言えるでしょう。
とても記念的なお祭りと言えますが、まずはとくとごらんください。
ビジュアルノベルにおける「点々々」の使い分け
仮想ゲーム世界で広がる群像劇――『Romantic Sa.Ga』が面白い - 敷居の部屋
紹介記事から知った動画のシリーズ*1なんですが……。
最初に張った画像を見てもわかるように、三点リーダー×1(…)とナカグロ連打(・・・・・・)を併用したスタイルがちょっと話題になってました。
実際に作品を追ってみて、「おお、なるほど」と感じたのは、ひと呼吸の「間」は三点リーダー×1。長い沈黙はナカグロ連打。という使い分けで作中の書式ルールが完成していること。
逆に言うと、長い沈黙で三点リーダーを並べたものは見付けられませんでした。三点リーダーは純粋に「ひと呼吸の間」を表現する目的専用に使われていて、一般的な文章で用いられる沈黙(三点リーダーを並べた「……」)はすべて「・・・・・・」に置き換えられている。
つまりこれは、無作為な変換で三点リーダーとナカグロを混ぜてしまった「混用」なんかではなくて、ちゃんと「使い分け」ていることがわかるスタイルです(よく観察すればね)。
それも正確には「沈黙の表現はナカグロをベースにしつつ、呼吸の間は三点リーダーを一個だけ挿入する」というスタイルであって。どこから始まったものなのかはわかりませんが、一貫させてみればユニークな手法だと思います。
作者のひとは、自分のブログでも「三点リーダー×1で間を作る」書き方をしているようなので、パソコンでテキストを書いているうちに自然発生したものかもしれません。
http://harrier-p.at.webry.info/200912/article_20.html
極端に句読点が多くなります。もう何か不自然なほどに。
でも不自然すぎるところは『…』を使用し、ごまかします。
↑は、文章を読みやすくするために「読点(、)」を多用しつつ、読点の多さが不自然になったら三点リーダー×1に置き換えるようにしています、という主旨のコメント。
やっぱり、三点リーダーは「読点のような間」を調節する意図で使っているみたいですね。普通は三点リーダーは単体で使わないはず、というのもわかった上でやってる模様。
ナカグロだと、こういった「ひと呼吸の間」は表現できないですからね。「・・・」だと「……」よりも横幅が長くなるし、「・・」だと何の記号だかわかりづらい。
じゃあ、そもそも長い沈黙を「…………」で統一すればいいんじゃないか、っていうことも言えるのでしょうが、それでも「・・・・」と「…………」では沈黙のニュアンスが違う。
この文字の表記方法についてなのですが、文字と言うより画像に近いような気がするのです。
さっきと同じエントリに↑こういう発言があるように、文字というのは、単に「意味」だけを伝えるのではなく、「文字数」や「文字の大きさ」「文字の複雑さ」といった二次元的な情報によって、時間的な「間」や「重み」を伝えてゆくものです。
それで何が言えるのかというと、「一文字分のスペースがほとんど空白になる」ナカグロ連打は、横へふくらむような膨張感が間延びした沈黙のニュアンスを得させてゆきます。
逆に「複数の点々が一文字に詰まった」三点リーダーは、一息に凝縮された沈黙のニュアンスを持つでしょう。
だから長めの沈黙はナカグロの点々(・・・・・・)だし、短い呼吸の間は三点リーダーの点々(…)で統一されているのだと思います。
たぶん、そういう使い分けをしてるんだろうなー、と想像しながら読むと「へえ、面白いな」と思えてくる手法ですね、これって。
劇場版『涼宮ハルヒの消失』観てきた
ハルヒと長門をめぐるサブヒロイン問題、原作完結させられない現象の問題が可視化されているようなところもある劇場版で、楽しめたと同時に興味深かったです。
しかもこれ、キョン自身はその問題意識を投げ出したまま終わる話になってるわけで、長門は不協和音というよりもカコフォニーに近付いている。ううむ。
鑑賞前の予備知識としては、「笹の葉ラプソディ」のアニメか原作(『退屈』に収録)に触れておけばオーケーだと思います。
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一緒に観に行った友人が言うには「エンドレスエイトの苦しみに付き合ったことのあるファンであれば長門への感情移入も高まる」そうですが……。