ビジュアルノベルにおける「点々々」の使い分け
仮想ゲーム世界で広がる群像劇――『Romantic Sa.Ga』が面白い - 敷居の部屋
紹介記事から知った動画のシリーズ*1なんですが……。
最初に張った画像を見てもわかるように、三点リーダー×1(…)とナカグロ連打(・・・・・・)を併用したスタイルがちょっと話題になってました。
実際に作品を追ってみて、「おお、なるほど」と感じたのは、ひと呼吸の「間」は三点リーダー×1。長い沈黙はナカグロ連打。という使い分けで作中の書式ルールが完成していること。
逆に言うと、長い沈黙で三点リーダーを並べたものは見付けられませんでした。三点リーダーは純粋に「ひと呼吸の間」を表現する目的専用に使われていて、一般的な文章で用いられる沈黙(三点リーダーを並べた「……」)はすべて「・・・・・・」に置き換えられている。
つまりこれは、無作為な変換で三点リーダーとナカグロを混ぜてしまった「混用」なんかではなくて、ちゃんと「使い分け」ていることがわかるスタイルです(よく観察すればね)。
それも正確には「沈黙の表現はナカグロをベースにしつつ、呼吸の間は三点リーダーを一個だけ挿入する」というスタイルであって。どこから始まったものなのかはわかりませんが、一貫させてみればユニークな手法だと思います。
作者のひとは、自分のブログでも「三点リーダー×1で間を作る」書き方をしているようなので、パソコンでテキストを書いているうちに自然発生したものかもしれません。
http://harrier-p.at.webry.info/200912/article_20.html
極端に句読点が多くなります。もう何か不自然なほどに。
でも不自然すぎるところは『…』を使用し、ごまかします。
↑は、文章を読みやすくするために「読点(、)」を多用しつつ、読点の多さが不自然になったら三点リーダー×1に置き換えるようにしています、という主旨のコメント。
やっぱり、三点リーダーは「読点のような間」を調節する意図で使っているみたいですね。普通は三点リーダーは単体で使わないはず、というのもわかった上でやってる模様。
ナカグロだと、こういった「ひと呼吸の間」は表現できないですからね。「・・・」だと「……」よりも横幅が長くなるし、「・・」だと何の記号だかわかりづらい。
じゃあ、そもそも長い沈黙を「…………」で統一すればいいんじゃないか、っていうことも言えるのでしょうが、それでも「・・・・」と「…………」では沈黙のニュアンスが違う。
この文字の表記方法についてなのですが、文字と言うより画像に近いような気がするのです。
さっきと同じエントリに↑こういう発言があるように、文字というのは、単に「意味」だけを伝えるのではなく、「文字数」や「文字の大きさ」「文字の複雑さ」といった二次元的な情報によって、時間的な「間」や「重み」を伝えてゆくものです。
それで何が言えるのかというと、「一文字分のスペースがほとんど空白になる」ナカグロ連打は、横へふくらむような膨張感が間延びした沈黙のニュアンスを得させてゆきます。
逆に「複数の点々が一文字に詰まった」三点リーダーは、一息に凝縮された沈黙のニュアンスを持つでしょう。
だから長めの沈黙はナカグロの点々(・・・・・・)だし、短い呼吸の間は三点リーダーの点々(…)で統一されているのだと思います。
たぶん、そういう使い分けをしてるんだろうなー、と想像しながら読むと「へえ、面白いな」と思えてくる手法ですね、これって。