美人が地味な女の子と付き合う理由/さと『フラグタイム』1巻
先々週になりますが、Web連載時から楽しみにしていた「Champion タップ!」(運営は秋田書店)の漫画、『フラグタイム』が単行本になりました。
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Web連載のサイトはこちら。1話と最新3話までが読めます。
簡単な作品紹介には、↓のページにアクセスするといいかもしれません。
「時間停止能力」を鍵にした、日常の学園ものでもあり……、それをめぐって付き合うことになった二人の女の子の百合恋愛ものだったりもします。
つまりSF百合。
テイストはまるで違いますが、大野安之の『ゆめのかよいじ』が好きな人にはちょっと薦めたいかも?
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カップルの関係性としては、ある意味でテッパン組み合わせとも言える「クラス一の人気者の美少女」な相手役と、「人が苦手で友達のいない地味な子」である主人公、の二人です。
そしてこの美人の方が、けっこうな魔性の女というか悪女タイプに描かれていて、地味な子が自分に惚れていることをいいことに、「その超能力を私的利用するために誘惑している」かのように描かれます。
また、地味な子の方も「私なんかを好きになるはずないし、利用されてるだけなんじゃ」と当然不安になったりする。
でも、直接描かれたりはしないのですが、この美人(村上さん)の側の心情もじょじょに伝わってくる感じが、すごくいい。
彼女は、美人の優等生で人当たりがよいので……美人にありがちな話ですが「表面的にしか人に好かれていない」「損得勘定の人付き合いしかない」ことを普通の女子よりも味わっていて、たぶんそれに飽き飽きしている。
うわべだけでチヤホヤされたり、告ってくる男子がいるにしても「アクセ感覚で恋人をほしがる自己評価の高い男」にしか縁がない(自己評価が低い男はそもそも近寄ってこない高嶺の花だから……)。
そういう相手たちには、自分をさらけ出すこともできなくて窮屈でしょう。「相手の理想通りの都合がいい女」ではない部分を見せれば、去って陰口も叩くのがそういう連中なんですから。
そこで「浮気も考えられなくて邪魔にならなくて言いなりになってくれるほど自分に惚れている子」がいるとわかった途端、猛烈にアプローチしようとするんですね。
これはわかる。その心の動きは「美人」の考え方っぽくてすごくわかる。
その相手がいくら低スペックで地味な(相手にしてみれば「釣り合わない」と気が引けるような)子だろうと、彼女にとっては実は救いになっていて、もっと独占してやりたいってことが伝わってくるんですよね。
また、主人公を誘惑する際には、自分が「美人」であることを最大限に利用して誘惑している。これもいい。
美人の心理、といっても様々なタイプを描き分けることができます。
「見た目で評価されたくない」と思うのも美人の考え方ですが、村上さんの場合は「自分だけを好きになってくれるなら見た目やフェチで好かれた方が好都合」と思っていそうなフシがある。彼女がイヤなのは、たぶん「べた惚れじゃない程度の浅い気持ち」だけで好かれ、そして幻滅されることなんでしょうから。
だから「私なんかがこんな美人と」と思っているような地味な子の方が、彼女にとっては都合がいい。
主人公の視点からすれば、クラス一の美少女と付き合えることは「ラッキー」ですが、逆に、主人公がラッキーだと思えば思うほど、こんな機会を逃すともうチャンスはないぞと必死になるほど、村上さんは「この子に自分が愛されている、求められている」と確認できるはずです。
村上さんは主人公を「森谷さん 童貞みたい」と言って弄びますが、そういう童貞っぽい反応が、彼女にとっては嬉しい……のかもしれません。
変態チックだったり、いびつな関係のように見えて、そういう「美人」特有の心の動きにも期待しながら読んでいます。ようはツボな関係性なんですね。すごく好きなラブコメです。
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