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漫画購入録/『ちょっと江戸まで』6巻(完結)

ちょっと江戸まで 6 (花とゆめCOMICS)ちょっと江戸まで 6 (花とゆめCOMICS)
津田雅美

白泉社 2011-11-04
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 前に感想を書いた『カナシカナシカ』と同じ日に買って読んだ本です。
 まぁ、兎にも角にも名作ですね。


 「作者が剣客小説の背景を勉強していく過程で描くことになった」という、江戸時代文化の入門漫画として最適な内容から始まって、その江戸時代特有の空気を再現した上で、少女漫画としては主従の関係性や、身分差の恋男女の性役割が曖昧なジェンダートラブルの恋へと物語の軸が移りはじめ、大団円のロマンスとして完結しています。
 いずれも高いレベルのバランス感覚を要するテーマであるところを、飄々と描ききっていく技量にはため息をつくばかり。6巻はその中でもコミカル寄りで、肩の力をゆるゆる抜いて描かれているイメージですが、「余裕」を感じちゃいますね。


 「江戸時代の空気だから」可能だったこととして、津田雅美作品としては悪人が良く出てくるのですが、『彼氏彼女の事情』などと比べると『ちょっと江戸まで』の善悪観は淡白です。
 不幸な出来事は存在するし、被害者や悪者も出てくるけど、ただ「それはそういうもの」として冷静に描かれていく。
 特に満月院のキャラって、カレカノにおける有馬の実母に通じると思うんですが、カレカノでは最後まで彼女に救いを与えようとしなかった(悪役は悪役のまま断罪するしかなかった)のに対して、満月院には「相応の成敗」とセットで小さな救いも与えているように感じられますから。


 この作品は、ちゃんと語って評価を残していかないといけない作品ですね、と仲間たちとも良く話しているのですが、今日は時間も無いのでこのあたりで。
 みなさんも是非読んでみてください。