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漫画購入録/紺野キタ『カナシカナシカ』

カナシカナシカ (ウィングス・コミックス)カナシカナシカ (ウィングス・コミックス)
紺野 キタ

新書館 2011-10-25
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 特典ペーパーが配布されているお店で買いたかったので、該当するお店に立ち寄るまで購入を我慢していました。
 少女ファンタジーの名手、紺野キタさんの新作です。


 取り替え子(チェンジリングを正面からテーマにした、現代のフェアリーテイル


 ユングの『元型論』には「二親イメージ」と呼ばれる幻想が紹介されていますが、人間の子供にとって、「実の親が別に存在するのでないか」と思うのは普遍的なイメージだそうです。
 カトリックの幼児洗礼において、実際の両親とは別に「洗礼親」との関係を結ぶのは、「今いる親とは別の親がいるのが自然である」という根源的なイメージを補う意味もあるのだとか?


 二親イメージを放置しておくと、よくある子供の空想なのですが、「自分は橋の下で拾われた子供である」と信じたりもするでしょう。
 周囲から感じる疎外感、自分の居場所への違和感、「ふさわしくなさ」が、そうした空想に子供を迷い込ませます。


 そんな子供の空想の、「治療過程」をファンタジーに置き換えているようにも読めるのが、「取り替え子」のフェアリーテイルです。


(「取り替え子」の物語は、「親が自分の子供をよその子供のように感じてしまう」という親視点の空想と、「子供が自分自身をよその子だと考えてしまう」子供視点の空想に分けられますが、本作は後者のお話になります。)


 『カナシカナシカ』では更に、取り替え子に「バニシング・ツイン」のイメージも加えられています。「空想の親が補われる」二親イメージの逆で、「自分は本当は双子の片割れだったのではないか」という空想ですね。
 「この家の子であるべきなのは別にいて、本当は自分にふさわしくない居場所ではないか」という、思春期の子供の「居場所のなさ」が優しく、そして淡く悲しく修復されていきます。


 淡く優しく。紺野さんの淡くてあたたかみのある絵のタッチは、こうしたファンタジーには最高の効果を発揮しますね。
 あと、やはり特典ペーパーのすずろちゃんが可愛かった! 満足です。

つづきはまた明日 (3) (バーズコミックス ガールズコレクション)つづきはまた明日 (3) (バーズコミックス ガールズコレクション)
紺野 キタ

幻冬舎 2011-09-26
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