『ヒストリエ』論、あります
タコシェさんに置かれてるみたいなのでそろそろ宣伝しておきます。
ぼくが漫画の視覚論? 画像論みたいな話を『ヒストリエ』に絡めて書いて寄稿した『Review House』っていうインディーズの雑誌です。
タコシェさん以外の書店にも置いてあるみたいですが、ほとんど東京のお店なんじゃないかな……。
編集さんと相談して、文学フリマのウチのブースで委託販売できるように手配もしています。
泉信行の記事は4ページほどで、それだけを目当てに買うには割高な本かもしれませんが、宜しくお願いします。
記事のタイトルはこんな感じですが、ちょっと導入の部分だけ抜粋してみましょう。
冒頭だけでも「ヒストリエについて言いたいことの内のひとつ」は書ききってますので(というか、本論とはあんまり関係の無いことを「話の枕」にしている)。
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岩明均による古代史漫画の大作、『ヒストリエ』。その主人公エウメネスは、かのアレクサンドロス大王に仕え、大王の死後は後継者戦争を争った人物として歴史に名を残す。
『ヒストリエ』でのエウメネスは、知識豊かな読書家としても描かれる。彼の読書履歴の中でも、特に重要な位置を占めているのがホメロスの叙事詩だ。幼い頃の彼はホメロスの『オデュッセイア』の主人公・智将オデュッセウスに憧れ、やがてその英雄譚をなぞるようにアジア〜ギリシア間の遍歴を繰り返し、天賦の知略家ぶりを発揮していく……。ただし、その遍歴はまだ始まったばかりのようだが。
一方、アレクサンドロス大王はホメロスの『イリアス』を戦場にも携え、その主人公である勇者アキレウスに強烈な憧れを抱いていた、と伝えられる。
『イリアス』と『オデュッセイア』は、詩として一対となった関係にある作品同士である。岩明均もおそらく、アレクサンドロスを勇者アキレウスに、エウメネスを智将オデュッセウスにつらねることで、この二人の「英雄」を対称的に描くつもりなのかもかもしれない。世界史上トップクラスの英雄であるアレクサンドロスと対比されているのだと思えば、これはかなり野心的なキャラクター設定だ。歴史好きの読者なら、鳥肌が立つというもの。
そうした古代世界の魅力を描いてみせる『ヒストリエ』だが、では、漫画としてどんな「世界像」が「描かれて」いるのだろうか。
私達が、素朴に絵画作品を賞味する場合のことを考えてみよう。具体的には、西洋画の油絵あたりを想定してほしい。
それら絵画を鑑賞する際には、「絵そのものを見る」感覚のラインとは別に、「世界がその絵のように見えてくる」感覚のラインが並んで存在している。
英語で説明するなら「See(見る)」と「Seem(〜のように見える,思える)」の違いだろうか。この〈〜を見る〉と〈〜のように見える〉の差を明らかにすることが、本論のキモである。
この後は当然『ヒストリエ』の「絵」を主題としつつ、漫画全般に通じる(アニメやイラスト全般にも通じるかもしれません)基礎理論を展開しています。
原稿自体は8月頃にほぼ完成していたんですが、夏目房之介さんにプリントをお渡しした時に「漫画を原理的に考える際の、すごく重要な観点が出ていて」刺激的だ、と言っていただけたことがありました。
自分でも大事な切り口だと思うし、ごく日常的に感じたり、考えたりすることの多い観点ですね、ここで論じていることって。