HOME : リクィド・ファイア
 移行後のはてなブログ:izumino’s note

「新今宮漫画愛好会」活動報告

izumino2005-06-29

 勝手に会名を付けられた上に勝手に会長任命されてたアレのレポート上げておきます。


 ちなみにこのボンクラ連中の活動内容というのは、「オフ日の昼頃に新今宮駅に合流する」→「日本橋までテクりながら漫画やアニメや特撮の話を駄弁る」→「途中で昼飯を食べながら駄弁る」→「喫茶店に移動後、持ち寄ってきた漫画や雑誌をネタにして駄弁り続ける」→「古本屋や漫画専門店をハシゴしがてら難波方面へとテクりながら駄弁る」→「夕食を食べながら帰り電車の本数がヤバくなるまで粘って駄弁る」→「南海難波駅のホームで電車を待ちながら駄弁る」→「新今宮駅に着いたら解散」という、丸半日を漫画語りに費やすイベントを、毎回判を押したように繰り返す、というものです。月に二回くらいはやってることになりそう。新会員募集中。


 お前ら三人集まってるんだからカラオケとか行けよって感じなんですけど実際喋ってる方が楽しいからなあ(笑)。
 基本的に、漫画や番組の知識量が一番多いのが加納さん、一番良く喋ったり人に漫画を勧めたがるのがぼく、聞き手に回ったりオススメした漫画の感想を述べてくれるのがみやもさん(ジャンルがエロゲーや映画方面に向かうとこの人の方が詳しい)、っていう役割分担になってる感じでしょうか。

椎名高志と今の少年誌について

 『絶対可憐チルドレン』の連載問題について語り足りなかったことをグワーッと。


「シイナはスピンちゃんが打ち切られたことを気にしてましたけど、それって単に、スピンちゃんが読者に対して不親切な漫画だったからでしょう」
スピンちゃんは、ネタを理解できないと話も理解できないからね」
「蛙の上から殴ったりとか(笑)。読者がジョジョとか理解できる前提で漫画描いとるわけでしょう。そりゃ打ち切られますよ」


「シイナが『今の少年誌は大きなお友達にとって居心地が云々』って言ってましたけど、それを逆に証明しているのが『ハヤテのごとく!』じゃないですか。アレのネタって、割と古い世代のオタクのセンスだと思うんですけど。そのハヤテが売れてるわけでしょう」
「それはほら、実はハヤテの伏せ字ネタとかって、理解できへんでもストーリーには影響せんかったりするから」
「そうそう、基本的にハヤテっていうのは、オタクネタ以上に漫画自体の面白さで作品を維持できてるんですよね。そのストーリー自体も、実は今風というよりは、割と古臭いセンスだったり」
「うん、あれは普通に読んでて面白い」
「売上がランキング入りしたりするのは、やっぱり『秋葉系』の需要も同時に満たしてるからだと思うけど……それだけじゃ売れないですよね。俺は畑健次郎はまだ『漫画がうまい』と言えるほど上手いとは思ってないから『センスがいい』って言い方になるんですけど。主人公の立たせ方なんかが、凄くセンスがいい」
「ハヤテは確かにええ主人公やからね」
「それにスピンちゃんと違って、読者の目を意識してちゃんと『わかりやすい』漫画を描こうと努力している。……で、絶チルにセンスがあるか無いか言うたら、あるやろう、と(笑)」
「そりぁなあ」
「だからハヤテが売れてることで、絶チルに対する安心感を抱いてもいいんじゃないかなぁ。ハヤテが『今風の萌え』をうまく利用していることについては、スタンスが別れる所だろうけど」


「あとウルトラマンネクサスを喋らせないっていう話をしてましたけど、あれって別に読者に対して『俺が好きに描きたいように描くからお前らはついてこい』っていうエゴで考えてるわけじゃないですよね。むしろ、『ウルトラマンを喋らせないことによるわかりにくさ』っていうのを補う為に、『わかりやすくする為の工夫』をその裏でめっちゃ努力してやってる筈なんですよ。絶対。方法論は違うけど、それは読者に歩み寄ってるっていうことですよね」
「ええとね。椎名先生は“野暮”なことをしたがらない人なんだよ」
「ああ、安易に走らないというか。そういえば美神のキャラ造形もそうなんだけど、『可愛くない女を、もし可愛く見せられたら凄いんじゃないか』とか、そういう遠回しなことをやりたがりますよね(笑)。でも結局それも『わかりやすく描く為の努力』をしてるんであって、『この女の魅力を理解できる人だけ理解できりゃいい』っていう姿勢じゃあないんだし。だから話を戻すと、スピンちゃんってそういう工夫が無かっただけの話だと思うんですけどね。そんなのは少年誌に載っちゃいかんだろうと。漫画の面白さとは別問題で」


 一部を抜粋するとこんな感じ。毎回こんな感じで。
 まぁお読みの通り、一番良く喋ってるのがぼくの発言なわけですが。

『昴』夜話

 次に定番となっているのが作品語り。最近は加納さんが持ち込んできた「石川賢」が大ブームを起こしていたのが記憶に新しい所です。
 今回はぼくが曽田正人の『昴(スバル)』を持ち込んでブームを起こしてみたわけですが。
 いやもう、昴は大好きな漫画なんですよ。今まで読んできた中でもトップクラスに好きな漫画なんで、語りにも熱が入ろうというもの。


 宮本昴っていう超天才ダンサーがヒロインのバレエ漫画なんですけど、作者の「世界の頂点に立つスターを描きたい」という情熱がストレートにぶつけられた結果、バレエ漫画の枠を超えて色々大変なことになってる(観客に苦痛を与えるバレエとか鳩にも伝わるバレエとかバレエで集団催眠とか、口で説明するとギャグになる)んだけど、作者の熱意によって「これは実話なんだ!」と「読者が思い込みたくなる」エネルギーと説得力が存在するのがたまりません。
 作者の「天才や偉人に対する憧れ」が全てのページに漲っていて、その熱にシンクロしながら昴の成長を見守っていく感じです(だからヒロイン自身よりも、周囲の脇役の視点に感情移入させられることが多い)。
 んで加納さんと一致した意見として、「昴はめっちゃ可愛い」。作品中じゃあまだ十代の女の子ですしね。曽田正人もそこらへん解ってるみたいで、絵柄的にも可愛く描きまくりだし。


 絶対、曽田正人は「スバル・ミヤモト」という大スターが「歴史上に実在した」と仮定(妄想)して、ノンフィクションの「伝記漫画(偉人伝)」を自分で描いているつもりなんだろうなぁ……というのが、ぼくの妄想で。この「見立て」は、多分間違ってないと思うんですけど、本人に訊いて確かめてみたいなぁ。
 曽田正人本人といえば、『め組の大吾』が「昴を描き始める為の練習」(当時は昴を描く為の漫画力が足りなかったらしい)で、『capeta』が「昴の続きを描く為の練習」(天才の人生を描ききる自信を付けたかったらしい)って公言してる時点でアツすぎですよ。でもその「練習」で小学館講談社の漫画賞を両方獲ったりしてるわけだから呆れるというか。


 あと、この作品は美内すずえガラスの仮面』(少女漫画。未完)、島崎譲『THE STAR』(少年漫画。堂々完結)、『カレイドスター』(キッズアニメ。堂々完結)らと並べて比較すると面白いと思います。
 曽田正人が一番意識して差異化したのは多分『ガラスの仮面』なんでしょうけど、ガラかめが殆ど「北島マヤ美内すずえ」だったのに対して、『昴』の昴は「作者自身の憧れの対象」として徹底している所が独特の面白さを産んでいると思うんですけどね。


 で、この4作の内、まさに主人公が「炎の階段」を駆け上りながら、自分の目標以外のものを片っ端から切り捨てていって頂点を目指すのが『ガラスの仮面』と『昴』のグループ。逆に、頂点を手に入れるついでに、愛や友情や幸福なんかを全て手に入れてしまうのが『THE STAR』と『カレイドスター』のグループ。
 前者のグループがどちらも未完なのに、後者は堂々完結しているっていうのは興味深いなぁと。
 「炎の階段」系のスターは、描ききる為のハードルが無茶苦茶高い、ということなんでしょうけど。どうしてもエンタメの枠を飛び越えた創作になってしまう傾向もあるのかな?

 最後に余談。『昴』を読ませたら、みんな口を揃えて「『ブリザードアクセル』の花音ちゃんの描写がいかにダメだったか納得しました」って言ってたので「いやホントそうでしょ」、みたいな。
 あれはパクリとかオマージュ云々のレベルじゃなくて、完全な劣化コピーとしてどうしようもなかったですからね。ギャグにもなってなかったし、ああいうのは止めた方がいいなぁ。