少年漫画における「打ち倒すべき敵」と「他人の尺度で計られること」の差
ちょっと前に思いついたことですが、「ライバルのいない少年漫画」という軸で見ると、『シャカリキ!』と『放課後ウインド・オーケストラ』はけっこう近い位置で語れない? という話。
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昔、ある人と「ヒーローに敵は必要であるかどうか」という討論をした時に、そうではないヒーローの例として『シャカリキ!』のテルを挙げたことがあって、要は、
- 「外の世界に試されながら」
- 「自分自身と戦う」
……の両方が揃えば少年漫画のヒーローになりうるはずだ、と言えるでしょうか。
放課後WOのセリフで言えば、「(自分を試すためだったら)他人と同じモノサシで計られたってかまわない!」というやつ。
これはシャカリキや放課後WOにかぎらず、スポーツもの全般に言えること……のような気もしますが、いわゆる「スポ根」を梶原一騎からの系譜で考えると、やはり「倒すべきライバル」がいるのが普通ですよね。
ちば四兄弟の作風を比較しようと思ったことが無いので、そこから考えても面白そうなのですが……(『キャプテン』は梶原スポ根に対するカウンターだったのかとか)。
まぁ『あしたのジョー』の力石もつまる所は、ジョー自身が「自分を超える」ための存在ですから「敵はいない世界」っぽいですが、『巨人の星』はモロにライバル漫画。
スラダンはライバル漫画なのか? どうだろう(しかしスラダンはそれこそ、「特定のヒーローがいない漫画」という作品だって気がすることの方が問題かも)。
おっと話を戻すと、『Fate/stay night』の衛宮士郎に代表されるような「正義の味方」がヒーローだとすれば、必ず「倒すべき敵」とセットにしなければヒーローを描けないはずだ、という考え方があるわけです。
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そんな意見に対して、「みんなを守るヒーローと違って、みんな(読者含む)の憧れとなるヒーローはそうとかぎらないですよ」と言い返していたんですね、その時のぼくは。
それが「ヒーローに敵は必要であるかどうか」という問題。
シャカリキや放課後WOは、主人公に周囲が憧れたり、読者の理想となったりするように収束する少年漫画です。それもまた「ヒーロー」の描き方なんですが、そういうヒーローは何と戦ってるのか? というと、自分と戦ってるんですね。
しかしそこで、少年漫画の基本原則である「主人公が外の世界で戦わなければならない」というルールが求められるため、ただ自分と戦うだけでなく「外の世界で試される」という「証明の過程」が必要になり、それがたまたま競争だったりコンテストだったりするだけだ……という理屈ですね。
具体例を挙げてみると、スポーツ(芸能)漫画としては、小山ゆうの『スプリンター』に敵はいませんが(自己記録達成だけが目的であって、他のランナーは競争相手でしかない)、曽田正人の『昴』は「実は全世界が敵」という明確な違いがあったりします(「一般の観客」や「バレエ界」に自分の踊りを理解させて、屈服させるのが主人公の使命だから)。
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この違い、なんかわかりにくいかもしれませんが、自分の中では「他人の尺度で計られること(シャカリキ,スプリンター)」と、「他人を打ち負かすこと(巨人の星,昴)」ははっきり分かれてる感じがするんですね。
『あしたのジョー』で考えるなら、「力石を倒すまで」は敵を倒す話で、「力石の死後」は外の世界に計られる話になっている、と説明すればわかりやすくなるかもしれません……わかりますか?
これをFate論にも応用しても面白そうですね。
セイバー編のラスボス・ギルガメッシュは「倒さなければいけない敵」っぽく描かれるのに対して、凜ルートのラスボス・ギルガメッシュは「他人の尺度」でしかないのは間違いないでしょう(凜ルートの士郎は「自分との戦い」が本来の使命であるため、ラスボスとのバトルはその成果を試す要素でしかない、ということ)。
追記
miyamo_7 | ヒーロー物の親戚としてプロフェッショナル物についても考え合わせてみたいところですね。消防士とか医者とか http://d.hatena.ne.jp/izumi... | link |