「ネギま」「ケンイチ」論
先週に引き続いて『魔法先生ネギま!』が面白かったので取り上げてみよう。
エヴァンジェリンが魔法戦闘の師匠になるかと思ったら、今度はクーフェイが白兵戦闘の師匠になるという展開。
主人公の成長というか「完璧超人化」が期待できる熱い展開でもあるのだが、ああ、これはラブコメで『史上最強の弟子 ケンイチ』の方式を導入するつもりなのだな、とニヤリとされられた。
と、言っても人気作の「ケンイチ」をパクったというわけではなくて、赤松健にはもともと先見性があったのだと思う。
というのも、2002年2月頃にマガジンで連載していた「漫画家への花道」という漫画講座で、「ケンイチ」のヒットを予見するような分析をしていたからだ。まぁ、「ケンイチ」は当時月刊サンデーに連載中で、その頃から人気があったと言えばあったから、注目していたのかもしれない(当時のMANGAZOOランキングで10位入りしている)。
その内容は確かスポーツ漫画を分析した回で、根性型スポーツ漫画(いわゆるスポ根)と努力型スポーツ漫画(「はじめの一歩」のような、理にかなった訓練とロジックの積み重ねで見せるタイプ)の2種類に分類した後、「これからは協力型スポーツ漫画が流行るのではないか」というまとめで終わっていたと思う。
で、その「協力型」というのは、天才の主人公ひとりが努力して活躍するのではなく周囲の仲間の力を借りながら成長する……というもので、この条件は「ケンイチ」にピッタリあてはまる。
つまり、流行の変化を「ケンイチ」に実証してもらった上で、自分が立てた理論を自分の作品に導入し始めたのだな、という様にも解釈できるのだった。
逆に、「ケンイチ」の師匠が沢山居るという設定はハーレム型ラブコメをスポ根に導入したと思わせるフシがある。シスプリ風に言えば「ある日突然、6人の師匠ができたらあなたはどうしますか?」*1という「師匠萌え漫画」であることは言うまでもないだろう。読者は師匠に萌えながら主人公と同化し、師匠にフラグを立てる漫画として読んでいる筈だ。
だから今回のようなネギまのスポーツ漫画化は、ラブコメからの逆輸入とも言えるかもしれない。
なにはともあれ、リアルタイムで少年漫画のノウハウが積み重ねられ、実験/実証されていく過程を眺めるのは楽しいものだ。だから赤松マンガは飽きないのかもしれない。
ちなみに「ケンイチ」の先達にあたる格闘技漫画が『拳児』なのだが、こちらの主人公・拳児は師匠をとっかえひっかえしながら技をコレクションしていくという生活を送っていた。これはラブコメで言うところの「回転寿司方式」というやつで、「ケンイチ」のハーレム方式とは対照的だ。
拳児の最初の師匠は祖父なのだが、一度祖父と生き別れた後(その間、実に節操なく師匠を変えつつ)、最終的にその祖父とハッピーエンドを迎える、というオチも非常にラブコメ的であった。*2