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 移行後のはてなブログ:izumino’s note

C.G.ユング著/林道義訳『元型論』

 訳注と解説が豊富で、大変読みやすかったです。ただ、1997年の第22刷なので、「増補改訂版」ではないですが。
 ぼくのような、直感的でシンボリックな考え方がメインの人間は読んでおかないといけない本であったな、と。
 世の中全てがシンボリックに見えてしまうのも危険(=トンデモ)な話ですが、そういう視点を制御しなきゃいけないタイプの人間だという意味も込めて。


 面白かったエピソードして印象に残ったのは、人間は「実際の両親以外にもう一組の両親が存在する」という「二親イメージ」を潜在的に持っている、というくだり。
 子供にこのイメージを放置させると、過剰な親イメージを持て余してしまう。養子空想を抱いたり、人間でしかない親に神的イメージを投影してしまったり。
 これを回避するため、ヨーロッパ人の知恵は、生まれた子供に「洗礼親(godfatherとgodmother)」を与えることを思い付く。そこまでして、初めて人間は「両親のイメージ」に満足できると。この様な「イメージ制御」の例は宗教の中にいくらでも見付けることができるでしょう。
 魚蹴(id:walkeri)さんが一神教の効用についてちょこっと触れてましたけど、宗教って人間には必要だなあと思います。*1

 

*1:無論、万人に有効で「完璧な」宗教は存在しないわけだが