『漫画をめくる冒険〔下巻・The Book〕』を増刷します
もう指折り数えるようになった、冬のコミックマーケットについてのお知らせです。
泉信行は、三日目(31の金曜日)の評論スペースでサークル参加しています。
サークル名は従来通りピアノ・ファイア・パブリッシング、ブース位置は東館Q-07bです。
- 三日目Q−07b「ピアノ・ファイア・パブリッシング」のブース位置(twitcomeke)
一年半ぶりの『漫画をめくる冒険〔下巻・The Book〕』増刷
主な出し物は、ショップ委託分も完売し、ながらく絶版状態が続いていた『漫画をめくる冒険 下巻』の改訂版です。
改訂版表紙
(表紙イラスト:相田裕)
書籍情報ページ
漫画をめくる冒険―読み方から見え方まで― 下巻・The Book 泉 信行 ピアノ・ファイア・パブリッシング 2009-05-10 |
この「下巻」は、コスト面や印刷品質の問題で増刷を控えていたのですが……、多くの要望をいただいたこともあり、上巻と総部数を揃える意味で増刷に踏み切ることにしました(下巻の方が、部数がちょっと少ないのです)。
もちろん誤字などは訂正済みで、表紙デザインなどにマイナーチェンジを施した仕様になっています。
……で、どんな内容のことが書かれた本なのか?
例えばぼくらは、こんな画像をみて気付くことがあると思います。
友達が、ふたばかどこかで拾ったらしいコラ画像なんですけど、元は『北斗の拳』の有名な「満員の核シェルターに入らずにシャッターを閉めるトキ」の名シーン。
それがコマ割りの左右を反転させただけで「意味」が変わってきてしまう。
なんでこのページを反転しようと思ったのかは謎ですが(笑)、この左右反転の例は秀逸ですよね。
キャラの立場、視点、感情、勢い、行き先などが絶妙に変化して見えます。
トキは「悪いな、このシェルターは一人用なんだ」とか言いそうなクズ野郎に見えるし、それを眺めるケンも「てめえの血は何色だ」って顔してるように「みえる」。
トキは「ケンたちを見捨ててる」ようだし、ケンは「見捨てられてる」ように「みえる」。
これは、たんに絵の構図が左右逆になっているだけでなく、中段のコマの順番も逆になってるし、セリフや効果音の読み順が左右逆になってることから生まれる「効果」です。
『漫画をめくる冒険』の下巻は、「どうしてこんな風にぼくらは感じるのか?」という問いに答える本です。
同人誌ショップの商品ページの解説文
出版界でも話題となった上巻に続いて、下巻が登場。
COMIC ZIN 通信販売/商品詳細 漫画をめくる冒険〔下巻・The Book〕
その切り口は変わらず斬新。ありふれた作品論を越えて、漫画という「形式」の本質に迫る。
昨年刊行された上巻が一部で大きな話題を呼んだ『漫画をめくる冒険』の完結編。
漫画をめくる冒険―読み方から見え方まで― 下巻・The Book (2) - Lilmag----zine and other publications.
本というフォーマットで発表されるという前提のうえで発達した漫画表現のテクニックを考察します。
前巻比50ページ以上のボリュームアップ、取り上げる作品も新旧さまざま。
漫画の読み方ではなく、漫画の読まれ方についてを検証する漫画読本。上巻では漫画を紙とインクからなるメディアとして、ページやコマの連続の中でいかに知覚されるかについてを述べた基本編でしたが、下巻ではさらに掘り下げて、より多くの作品を例に挙げ、コマの流れ、構図、パース、アングルなどを見ながら、作品の読まれ方を検証している。
http://blog.taco.shop-pro.jp/?eid=561538
これは、頭から湯気が出ていたら怒りとか、電球が絵がレテいたらヒラメキというようなお約束とは違ったレベルで、漫画がどのように知覚と結びついているかを考察しようという試み。
- コミケ後は、これらのショップさんにも追加納品できる可能性もあります
A5版、200ページを越えるギッシリとした内容で、イベント価格は1,500円。
下巻一冊だけでも独立して読める本になっていますので、今までうちのサークルの本を読んだことがない、という方でもぜひお越しください。
既刊・委託
サークルの既刊としては、評論集『フィクション・ハンドブック』の在庫があります。
そういえば今まで『フィクション・ハンドブック』の委託状況を告知する機会を逸していましたが、すでにメロンブックスからは在庫が無くなっています。
コミックZIN、タコシェなどでは現在入手可能です。
以下は委託予定の同人誌で、ぼくが寄稿や編集などで参加しています。
いずれも冬コミ新刊。
- 『敷居の部屋の困惑―How can be "The world is all one"?―』(編集協力)
- 『BREAK/THROUGH −たとえあなたがエヴァに乗らなくても−』(付録の鼎談に参加)
- 『アニメルカ Vol.3』(ナレーション・モノローグ論「心の声が聴こえる」を寄稿)