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 移行後のはてなブログ:izumino’s note

mixi日記から転載

 具体の無い独り言です。

 「他人の考えている、本来は無関係なこと」を短絡に「自分の知識体系」へと直結させて(牽強附会して)、「それは自分が知っている○○と同じだから意味が無い」とか、「(自分の)価値基準から外れているので間違い」などと失言する人が居る。
 あるいは、全く関係無い話題なのに「私が考えていることと同じです」と賛同(?)した上で、勝手に敷衍(!)してみたりとか。


 喩えて言えば、「白黒の犬を飼っている人」に対して「これは白犬ですね」とか「これは白犬だから不吉ですね」「白犬は見飽きました」とか言う、「盲人が象に触れる」式の早合点をしてしまう人はとても多い……特にネットでは。
 その早合点の過程で、その犬の「黒」い部分は無いことにされちゃってるんだけど、そういう人にとってはもう、その犬が「白い犬」だとしか見えてないから、「白い犬」として扱ってしまう。
 アホだなぁ。


 その牽強附会の過程でこそぎ落とされるもの(上の喩えで言えば「黒を含むが故の特性A」や「白黒という組み合わせから生まれる特性B」など)、というものに、そういう人は気付こうとしない……というか意識が向かいもしないんだろうけど。


 また、仮に「白犬」を見掛けた時でも、全てが全て「自分が知っている白犬」についての知識が最優先されて、目の前に存在する白犬の微細な特性は全部見逃してしまう、ということもある。
 これは、人が「外国人」や「異性」なんかと対面した時にも良く起こる短絡思考なので、上記の喩えに比べれば実感したことのある人も多いと思う。


 しかし前者の喩えに関しては、そんなバカが居るのか? と思われるかもしれないが、堂々とネットで批評なんかを書き、それなりの学識を身に付けた人の中にこそそういう人が多く混じっている。良く見れば「白黒」や「白灰」なもの(白を含んでさえもいない場合も多い)を「あれは白、白だ」って言う人は本当に居る。
 「なんで白だってことにみんな気付かないんだ? こいつらはモノを知らなさすぎる」とまで言うことすらある。その答えは当然こうだ──「白じゃないからだ。良く見ろ」。
 真っ白になってるのは、お前の頭の中だけなんだ。しょっちゅう「白」のことばっかり考えているからそういう頭になるんだ。


 そういう人は何度も「自分の知識体系とは無関係な、誰かの意見」を「自分の知識体系と混同して」批判したりバカにしたり曲解したりホメたり承認したりしている。「あれは良し、これは悪し」と。


 俺が普段から、いつも繰り返し言ってることだけど、人間は「自分の尺度でしか他人の考えていることを想像できない」し、「自分と関係のあることしか意識に上らない」存在でしかない。それ自体は仕方が無いものとしてやり過ごすしかない(だからエゴだと割り切って思考すること自体は悪くない)んだけど、しかし良く相手のことを知ろうともせず「自分の尺度」に相手を当てはめることほど失礼なことは無い。
 仏教には「心の師とはなれども、心を師とせざれ」という言葉もあって、まぁ「自分の価値基準の奴隷にはなるな」「世の中はお前が思っているようなものとは別物なんだよ」、というね。
 相手を自分の知識体系上に分類して、格付けをして、その「正しい」価値基準に則った判断を周囲にも求めようとする──というのは一種の中華思想というか、もっと悪く言えばスタートレックに登場するボーグ種族みたいなもので、他者の未来や可能性を奪い、人の足を引っ張って巻き添えを増やそうとする発想だと思うけどな。


 人間や文化を体系化させようとしたら、それは破滅へ進む道でしかない。システムから外れていたり、多少間違っていたり、文脈を押さえていなかったりするような「無知が生んだものだけど、それ故に新鮮なもの」が文化には必要であって。それは細胞の新陳代謝と同じなんだ。
 その新陳代謝を、「まるで無意味な反復」「体系におけるエラー」としてしか捉えられない人は、「新しい可能性」とか「理解できないもの」、「把握できないもの」などが恐ろしくて仕方が無いのかもしれない。
 そういえば、本人自身が「無知や無学に対する恐怖心」を強く抱いている人ほど、「他人の無知」に対して厳しかったりするな。それは自虐的な問題意識を他人にも共有させようとしているだけで、はた迷惑な話なんだが。


 勿論、ある信念や信条に基づいて他者に働きかけようとするエネルギー自体は、とても大切なことではあるし、この文章もそうした「お節介なエネルギー」で書かれているのも確かだ。
 でも「心を師と」している間は──この場合はつまり、無関係な意見を自分の問題意識に置き換えてしまうような間は──、いかにその視野狭窄が「他人を巻き添えした」迷惑行為を生んでいるか、っていうのを問い続けた方がいいだろうと思う。