つだみきよ『プリンセス・プリンセス』4巻
つだみきよの最新刊。
作者の前作とクロスオーバーしてる(というか、読者が既刊の読者であることを前提にして描かれている)ので、読む時はつだみきよ名義の単行本を全て揃えた方が良いでしょう。
男子校を舞台にした少女漫画ということで、男性読者にとっても読みやすいのがウリ(作者は自覚せずに描いてるらしいですが……)の今シリーズ。感覚としては『ここはグリーン・ウッド』と似たような感じなんでしょうね。
この作品の構成要素のひとつに「三人の美少年が女装する(姫制度と呼ばれる決まりがあって、綺麗な男子生徒が強制的に女装させられる)」というものがあるんですが、それが多面的な楽しみ方を生んでいるのがユニークな所だと思います。
女装といっても、メンタリティは男のままなんですよね、こいつらは。性同一性障害的なトランスジェンダーを描いた作品でもないし、ファッション・スタイルとしての異性装を描いた作品でもない。厳密にはボーイズラブでもないわけです。じゃあ何故女装がテーマになっているのかというと、男子校という男性原理の世界で「女性の性役割」を演じる人間を描こうとしているからだと思います。多分、作者にそんな自覚は無いと思いますが……。
だから、美少年の女装姿をグラビア的に眺めるだけ、という単純な楽しみ方もできるんですが、本質的には「男が女性の性役割を演じさせられる」所に面白さがあると、個人的には考えています。作者が女性なだけあって「女性的な気配り」や「愛想」や「女の武器」が自然に(まぁ、漫画なんだから誇張されてますが)描かれていますし、またその描写が艶っぽいのなんの。
特に、主人公である転校生の「亨」が、最初は気味悪がっていた姫制度を「周囲と馴染む為の処世術」として自ら望んで受け入れていく過程は見ていて楽しいです。
で、これ、穿った視点で読めば、「女性が、女性の性役割を引き受けていく過程」を、男の姿を通して肯定的に描いた漫画っていう気もするんですよね。女性だって、女性の性役割は後天的に身に付けていく(身に付けさせられる)もんなんだろう、という。
また、男のプライドにこだわって女装を拒み続ける「実琴」の視点になれば、一種の「受難モノ」としても読めるでしょう(これは、グリーンウッドのスカちゃんの不幸っぷりを愛でるのと同じ感覚ですね)。こっちは穿った読み方をしなくても、少年漫画的なドタバタコメディとして楽しめる筈。
……しかし4巻の一番の見所は、前作『革命の日』『続・革命の日』のヒロイン、恵が実琴の彼女としてゲスト出演している所だったりします。可愛すぎる! このままレギュラー化してくれればいいのになあ(笑)。
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