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ユング心理学でプリキュアを語る

(※俗流心理学でアニメのキャラクターを分析しようとするのはエヴァ以来の伝統ですから、その程度のネタとしてお読みください)
 こちらから話を振ってくださったので、つられて考えてみる。*1
 美墨家と雪城家の家族を元型に割り当てた上で、なぎさとほのかはお互いのシャドウであるか否か? という話になっているのですが、ここでは結論を急がず、元型論は脇に置きます。
 その前に、ユング式性格類型分類でなぎさとほのかを分析してみましょう。


 なぎさは「味覚を楽しませることを重視し、身体を動かすことが好きで、外界に対して脊髄反射的な行動を良く繰り返す」のが特徴です。
 これらは、彼女のタイプが外向的感覚タイプ(スポーツマン等に多い)であることを示唆しています。友人とのコミュニケーションを大事にしているあたりは、サブの性格として外向的感情(社交家に多い)の傾向もあるとみていいでしょう。


 一方ほのかは「勉強が得意で、雑学の収拾・整理を好み、また自分の知識を他者に伝える能力に長けている」のが特徴です。
 これらは外向的思考タイプ(科学者等に多い)の特徴ですが、彼女が時折見せる思想性や他人に対する鈍感さ、大人をもひれ伏させるカリスマ性の高さを見ると、内向的思考(思想家に多い)や内向的感情(神秘的な印象を与える人物に多い)の傾向もあるかもしれません。


 ユング性格類型でシャドウとされるのは、大抵、自分のタイプの対角線にあるタイプであると言われています(絶対そうだ、と言い切れるほどの法則ではないですが)。
 こうしてみると、なぎさにとってのシャドウとなるべきタイプは内向的直感タイプであって、ほのかにとってのそれは内向的感情タイプなんですね(ほのかが時々、威圧的で高慢な態度で爆発してしまうのは、シャドウである内向的感情の暴走が原因だと考えられます。なぎさが弟の生死を良く確認しないまま怒りと悲しみに支配されたのは、彼女の未発達な内向的直感が弟の「死」を誤って予知してしまった為でしょう)。
 何から何まで正反対にキャラクター造形されている、と評価されることの多いプリキュアですが、ユングの性格類型で見た場合、不思議と「正反対」ではなく、いわば「無関係」のタイプとして設定されているわけです。*2


 なぎさとほのかの関係は、「自分には無いもの」を相手は持っているが、「自分の嫌な部分」を見せつけられるような相手ではない、という様にまとめてもいいでしょう。*3
 もしお互いのシャドウ(正反対のタイプ)であるならば、なぎさにとってのほのかは「妙なカンに頼って行動する気紛れで空気の読めない女の子」だったかもしれませんし、ほのかにとってのなぎさは「物静かで近寄りがたいけど深い人間愛を持った女の子」として表現されたかもしれません。*4
 すると、彼女達にとってのお互いの存在は、シャドウではなく、自分を導くもの、好きになれる対象、憧れとしてそこにあるのではないでしょうか(自己がシャドウに向き合う為には、まず自己のタイプでも正反対のタイプでもない「無関係のタイプ」と付き合う必要があるわけですが、その時、彼女達はお互いにその役割を担うことができます)。


 こっから先は更にマユツバ度が加速するので注意!
 元型論に戻ります。
 ユングの『元型論』には、シャドウやペルソナの他に、ゼーレ(魂)、ガイスト(霊)という言葉も出てきます。
 ゼーレは男性にとってのアニマ元型に近いもので*5、ガイストは自分を導くものや憧れの対象、とイメージしてください。
 そこから、なぎさとほのかはお互いのゼーレやガイストなのではないかな……、という仮説に至ったわけですがえーとこんなのマユツバですよ、真に受けないで下さいね、もう。


参考:ゼーレとガイストについてはここくらいしか説明らしい説明が無かったな。匿名掲示板のキャッシュですが。

  • ところで

 話は飛びますが、(百合漫画フリークの間では高名な漫画家であるところの)紺野キタは『Cotton』(ISBN:4591078795)において「相手の中に自分のシャドウを発見して統合する話」をうまく描いてますね。プリキュアとは勿論違うケースなんですが、今回の問題の比較サンプルとしては面白いでしょう。
 仲直り話としても素晴らしいので、プリキュアの第8話に感動したっていう人はマスト読んどけ。っていう感じです。同程度に泣いたり萌えたりすること請け合い。

*1:また後出しジャンケンですみません

*2:もっとも、なぎさのサブ・タイプである外向的感情と、ほのかのサブ・タイプである内向的思考は対角線上の関係にある。第8話でほのかはなぎさが突然見せた感情面に驚き、なぎさは「自分がいつも正しいとでも思ってるの!?」とほのかの思考態度をなじっているが、これは彼女達のサブ・タイプ同士が衝突してるのである。この部分においてはシャドウの発見と言えなくもない

*3:こういう結論は、分析結果をちょっと変えるだけで簡単に覆ってしまうことに注意。後から考えると、なぎさが外向的感情メインでほのかは内向的思考がメイン、と診断してもいいような気がしてきたし。つか、多分、そっちが正解(弱腰)。要はシャドウ的な部分もあるし、シャドウ的でない部分もあると。それこそ陽中陰、陰中陽の関係なんでありましょう

*4:むしろこれは二世代目プリキュアに使いたいネタだな

*5:ちなみに女性にとってどうなのかは書いてない。教えて偉い人。ひょっとしたら女性にとってのゼーレも女性性であって、女友達に投影されるものなのかなーと推測してるわけですが