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 移行後のはてなブログ:izumino’s note

「手は握るけど抱き合いはしない」という理解(ページの終わりまで)

 確かに『ふたりはプリキュア』の女の子達はあまり抱き合わない。せいぜい、第8話でこけそうになったなぎさが莉奈に抱き留められるくらいですか(なぎさと亮太、メップルとミップルはしょっちゅう抱き合ってますがそれは置いとこう)。


 一方、放送終了後「ふたりは十兵衛」と呼ばれがちな『十兵衛ちゃん2』の女の子達はやたらと抱き付きまくるのであって、こういう所が男性的視点の差だなあと思わなくもないですね。*1
 ところで、この「抱く」という行為は、精神分析の立場から言えば精神的な「退行」を表しているのであって、本人の成長には役立たないという意見を目にしたこともあるのだがどうなのであろうか。
 ふたりの十兵衛は抱き合うことにより互いの自己像を取り戻し、最終的には(文字通り)「一体化」してしまう。
 一体化? うーん、「お父さん=彩」の望んだ「娘の自立」はあれで良かったのか……? とちょっと首を傾げてしまうぼくは精神的にお父さんじゃないのだなというオチ。*2

  • メモ

 マリみてのキャラクター達もたまに抱き合っているような気がしますが、抱き付きキャラの筆頭である聖は割と「男性的役割」をあえて演じてあげているようなポーズがあるし、彼女以外のキャラはあまり抱き付くという行動を取っていないことにも気付かされます。*3
 次に良く抱き合っているのは祥子と祐巳なんですが、これは祥子が「退行」を必要としていたキャラだからだろうということ。んで、彼女の自立が描かれるのはこの先なのだろう、という期待があるわけです。

  • 追記

 みなもさんにコメントをいただいたので考えを改めてみる試み。むしろ基本に立ち返ってるだけとも言う。
 手がかりになりそうな本の一箇所をちょっと引用してみます。

 
 他の女性との問題を克服するのが難しい理由は、第一章と第六章で論じているように、女性間には一般化された性的恐怖と抑制があるためです。私たちは、女性として、より親密になりたいという突発的な衝動を抑え込みます。(中略)
 私たちは他の女性を抱擁することに恐れを抱く一方で、「女性の冷たい行動」をなじります。でも男性同士が抱擁するように、キスや抱擁なしにどうやって女性が他の女性に労りの心を示すことができるでしょうか? そんなことは時間の浪費だと言う人がいるかもしれません。でも、女性の抱える不安を取り去る最良の方法は、愛情を与えることなのです。
 
──シェア・ハイト『なぜ女は女が嫌いなのか』p129

 育児的な抱擁と、愛情表現としての抱擁はまた別のものだということでしょうね。
(日本人の意識からすると、男性同士の抱擁は体育会系社会を除けばあまり見られないような印象があって、この引用文に違和感を感じるかもしれませんが)

*1:(いい加減しつこい指摘だが)J2が一貫して「お父さん視点」のヒロイン描写だったことを考えると、「女の子視点」のプリキュアと凄く対照的だ。勿論どちらが優れていてどちらが良いという問題ではない

*2:いや、あの合体は彼女達にとって最初で最後の合体なのであろう、というのは解って言ってるんですけどね。ラストでちゃんと離別する終わり方になってるし

*3:多分「由乃→田沼ちさと」くらいかな。志摩子乃梨子はあったけど、令と由乃って実は抱き合うシーンが無いのでは?(アニメ版ではある)←原作にも「黄薔薇注意報」がありました。訂正