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須賀しのぶ『帝国の娘 流血女神伝』前・後編(ISBN:408614607X)(ISBN:4086146304)

izumino2004-03-05

 以前さとる(id:jasper)さんがお奨めしていて、さとるさんにお薦められた元(id:h-moto)さんが絶賛していた流血女神伝
 を読んでみました。コバルト文庫です。


 異世界モノ*1を読むのは久しぶりですから、なんか懐かしいですね。冴木忍の作品を思い出しました。同じ女性作家だからでしょうか。
 長編シリーズの最初なだけあって、読み続けることで思い入れが深まるタイプの構成(キャラクター配置)ですね。終盤の、ヒロインに対する感情移入度が一気に高まる持っていき方は流石。サブキャラに対する容赦ない処遇も好みです。そこらへんの「隠れた陰惨さ」が冴木に近いと言えば近いかも。


 おまけとして、ベタなユング的読み解きを掲載。政治的なことや人間関係の機微を描いているようでも、所詮は一人の人間の頭の中を舞台にしている異世界モノは「一人の人間の総合的な人格成長」と置き換えて読んだ方が学び取れるものは多いです。

  • この物語に於いて、「国家」は自己であり、「皇帝」は主人格を表しているとみるのがいいだろう
  • 自己は様々な問題を抱えており、主人格は力を失っている。また、主要機能だけでは対処しきれない問題を抱えている
  • ヒロインである「カリエ」は劣等機能ではあるが、輝きと可能性を持った影でもある
  • これは劣等機能が自己に良い影響を与えるまでの物語であり、他の福次機能はそれを助けたり、引き離したり、犠牲になったりする
  • 他国の王女は他者であり、自己認識の基準を与えてくれる存在である。


 というか、たかだか少女小説を読む時にこういう読み解きを「必要としなければならい」今のぼくはよっぽど精神的余裕が無いんだなあと思う。普通に読めばいいのに。

*1:ファンタジーと呼べるほど魔法チックではない