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池田恵『スクラップド・プリンセス す・て・プ・リ』1巻(ISBN:4047123331)

 結城さんちに置いてあったのでなんとなーく読んでみたら、これが面白くて気に入ってしまいました。
 原作のすてプリを読んでなかった(←むしろスノッブに見下していた)ぼくですので、評しにくい所ですけど、多分漫画家さんの力量に因った面白さが大きいんじゃないかなあと推測します。人物の表情が大変よろしい*1
 以下は本書の感想です。


 ともすれば、すてプリの基本設定(主人公の「廃棄王女」は「死ななければいけない子供」だが、仲間に護られながら生を肯定する、という話)は安易でナルシスティックな「用意された悲劇」に過ぎない、という気もします。
 でもライトファンタジーという枠組みのおかげか、あまり気になりませんでした。
 ぼくは冒険モノのファンタジーを「ひとりの子供にとっての人生/その精神世界」と読み替えながら読む*2んですが、つくづく子供にとっての<自分>ってのは「特に誰かから生きることを許されているわけでもない子」として映るし、<自分>から見た別の子供や大人は「そんなジレンマとは無関係に生きてていい人達」だっていう風に映るんだよなあ……と再認識させられましたが、まさに「す・て・プ・リ」はそんな子供の精神世界を描いているわけです*3
 そういう意味ではこの漫画、良く出来た「ファンタジー=児童向けコミック」なんじゃないかと。小中学生の頃に読んでいたら、ハマっていたかもしれません。

  • 追記

 参考に矢吹豪版のすてプリも読んでみたのだけど、やはり池田恵版のような視点は得られなくて、面白うのうございました。原作も「つまらん」らしい。

*1:これが安曇雪伸の絵だと、やっぱりどうかなあ

*2:これまたユング的っていうか河合隼雄的な読み方

*3:精神分析的に云えば、「養子コンプレックス」が肥大化した世界の物語、かな