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 移行後のはてなブログ:izumino’s note

図書館通い

 今日は久しぶりに町の図書館で探索して、大量に貸出してきました。
 以前から読みたいと思っていたアーサー・C・ラヴジョイの『存在の大いなる連鎖』をたまたま見つけたのでホクホク。



 長瀬唯のSF評論を十代の頃に読んだときから、読みたいと思ってたんですよね。

 つまり、地球とは、世界の中心にあるがゆえにこそ、天界の穢れが堆積する場所でもあった。
 そして、地獄から地表の人間界、月軌道、太陽軌道をへて恒星天にいたるまでの高度に応じて、その聖性や卑しさに応じた住民、知性ある生命が存在するとも思われていた。
 無機物から有機生命へ、虫や魚からけもの、猿、人間へと連なる「存在の大いなる連鎖」(ラヴジョイ)は、天界のそれぞれの居場所に住まう天使たちをも包含すると考えられていたのである。そこでは地獄から恒星天にまで至る、中世的な身分制度を反映した、静的で階層的な秩序が維持されていた。


永瀬唯・編『ターミナル・エヴァ』p142)

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 古本ではけっこうな値段が……(原価でも3,800円しますが)。

 折り返しの解説だけでも魅力的なので、書き写してみましょう。

ヨーロッパの知の歴史は、プラトンにたいする厖大な脚注の歴史にほかならない。
 宇宙は、あらゆる生物と無生物とで充満する、連続した存在の梯子である──この「存在の大いなる連鎖」としての宇宙概念こそ、プラトンの『共和国』『ティマイオス』にあらわれ、ヨーロッパの知の未来を決定づけた一粒の偉大なパン種であった。
 この宇宙における「充満」と「連続」の原理が、アリストテレストマス・アクィナスコペルニクスケプラーライプニッツ、カント、スピノーザ……らの知的エネルギーを二千数百年にわたって吸引しつづけ、人びとに、べつの銀河系宇宙のありうることを純理論的に推論させ、顕微鏡の発明以前に微生物の存在を確信させた。それは、哲学をはじめ、文学、天文学、生物学、物理学などの諸学問の発展をうながし、人間の精神の地平をひらく強力な梯子でありつづけたのだ。
 本書は、あらゆる学問分野を縦断、ひとつの観念の歴史をたどって、西洋思想全体の再構築を試みた古典的名著である。また、西洋の知の基層から捉えなおされた、新鮮な古代哲学史であり、ルネサンス、啓蒙期、ローマン主義時代の再検討であり、きわめてドラマチックな「近代」前史としても読まれるだろう。
 1933年、ハーヴァート大学でおこなわれた連続講義にもとづく本書によって、アメリカの哲学者ラヴジョイの名は、「学際」Inter-discipline の先駆者として不朽である。