ラノベ感想/入江君人『神さまのいない日曜日』
富士見書房のファンタジア大賞受賞作。今月になって読了。
作者は入江君人さん、イラストはpixivなどでも活動中の茨乃さん。
「十数年前から、新しく人間が生まれなくなった」
「人間が命を失っても活動を停止しなくなった」(天国が死者の魂でいっぱいになって、死んでも昇天できないため)
「墓守と呼ばれる存在に埋葬されることによってのみ、人は本当の死を迎えられる」
……というユニークな世界観で描かれた、おとぎ話のようなストーリーで、「死生観」というテーマについて語られているのが読みどころ、と言えるでしょうか。
死生観というと、さも既知のテーマであるかのような気もしますが、世界観と切り口がユニークなおかげか、意外な目新しさというか、新鮮な気付きを感じさせるところがあります。
ファンタジーというよりは終末世界のディストピアもの、一種のゾンビものとして読むことができますし、「死」や「死後」「遺族」といったものに興味のある向きにはおすすめできる作品です。個人的には『死と彼女とぼく』(川口まどか)や、あらゐよしひこ氏の同人誌の雰囲気を思い出したりしました。
文章のうまさとしては、文体に個性はあるものの、場面転換の表現などにまだまだ荒削りなようすも見受けられたのですが、受賞後に書かれたという短編(ドラマガ3月号掲載)では作者の腕も上がったのか、そうした読みづらさも消えており、続編が楽しみな小説家だと思います。
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