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デジタルコミックの可能性(+ゲーム論っぽい話も)

 いま竹熊さんが話題にしておられますが、デジタルコミックはDSのゲーム画面で読めるものが体験としては面白くて、自分が遊んだ中では『押忍! 闘え! 応援団2』があります。青木摩周さんにTwitter上で薦められたゲームです。

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 ちっちゃなディスプレイの狭い空間を効率的に活かして、時には「後から出る絵がその前のコマに被さる」ような工夫も窺えます。たぶんこういう演出が今のDSゲームでは一般的なんじゃないでしょうか。


 デジタルコミックに感じる可能性なんですが、漫画そのものをコンテンツにするのではなく、こういうゲームのオープニングやストーリーモードに利用した方がメディアに則しているのではないか、というのが今の実感です。
 あくまでユーザーとしてはゲームを「遊ぶ」のが目的で、それを劇的に盛り上げる手段としての漫画がある、という関係ですね。


 なぜかというと、デジタルコミックは、コンピュータを利用する以上、インターフェースによるユーザーとの双方向性を伴っていないと「デジタルでやる理由」が無くなってしまうんですが、かといって普通に「読ませる」ためだけにインターフェースを実装しても、ひとつひとつは面白くても、それだけでジャンルになるような面白さはなかなか生じない(ケータイコミックはちょっと特殊な成功例)。
 なら、ゲームを「遊ばせる」ために漫画の様式を利用する、と割り切った方が「デジタルコミック」の可能性としては理屈に合っているし、それは現在進行形で商業化が進んでる分野じゃないかなぁ……と思ったりもするのですが。


 実際、クリアしなければならないゲームはプレイヤーが「漫画の参加者」となるので、プレイ画面と併せて読むと感情移入度はかなり高まるんですよね。
 これは、「書籍と違ってゆっくり読むのが疲れる」デジタルコミックの弱点も補ってくれています。
 通常なら、ページ数を重ねてじっくり読者を感情移入させなければならない(例えば「キャラクターの日常」なんかを積み上げないといけない)のが「漫画」なんですが、ゲームならプレイヤーがダイレクトに参加してくれるため、普通のストーリー漫画よりも「シンプルな構成」と「単純な展開」で充分になるんですね(プレイヤーの「クリアに懸ける情熱や時間」がそのまま「ストーリーの積み上げ」を代換してくれるため)。


 『応援団』シリーズはそこのバランスが良くて、「普通に漫画で描いても、ベタすぎて商品価値は出ないんだろうな」と思わせる内容でも、「それがかえって良い」んですね。
 自分がゲームに参加することで感情移入を起こすためには、「短くて、状況と結果だけが掴める」程度の内容が一番いい。
 いや、それでしかも本当にストーリーには感動するし、記憶にも残るゲームになるんですよ。ぜひ遊んでみてください。


 ちなみに『応援団』シリーズは音楽がテーマのゲームなので、漫画の展開スピードは固定されています(操作できると尺が合わなくなるから)。デジタルコミックの利点は「起伏のある音楽」によるスペクタクルを利用できることなんですが、起伏のある音楽は「時間を固定する」というデメリットと表裏一体なのがもどかしい所でしょう。