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 移行後のはてなブログ:izumino’s note

ニュース三件

 今日から『BSマンガ夜話』ですね。

「天元突破!雨宮ゆり子!」最終回漫研

 第一回はこちらから。


 LDさんの「雨宮理論」講座がついに終了。
 ここでLDさんが説いていることの中で特に重要なのは、


「物語そのもの(=辻褄,ご都合)の崩壊は避けなければならない」


ということと、そして


「崩壊させることなく路線変更するには、これだけの労力(=辻褄に干渉して“ご都合”を変換する手続き)を要するのだ」


……という二点であることを、強く覚えておかなければなりません。
 「雨宮」や「西野」という逆転ヒロイン達は、決して「物語を崩壊させて出現した」わけではない(=基本的に作者は苦労して「物語のご都合」を成立させようとしている)し、それは翻して言えば「その場の勢いや作者の気分で、物語のご都合とは無関係に逆転が可能になった」わけでもない、ということだと思います。


 たとえ現代の物語であろうと、決して「マルチエンディング上等、受け手によって自由に解釈できるデータベース消費万歳」という話には、ならない。なってはならないということでしょう。

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 ちなみに友人の言によると、


アニメ版の『キミキス』は先の読めないストーリーの末に一番要望の高かったヒロインと主人公を結ばせるエンディングを選んだが、物語的な手続きを踏まえなかったその路線はかえってブーイングの的となった、という事例を思い返してみるといい」


とのこと。うべなるかな。

Hang Reviewers High / 新現実 Vol.1

 さやわかさんによる「ゼロ年代の想像力」とTYPE-MOON作品を絡めたお話し。
 ちょっと長めのエントリなので、「ここが超重要」というシメの部分だけ引用してみると……。

空の境界」はしばしば「月姫」のプロトタイプとしてのみ語られるが、物語の原型としてだけでなく、同時に作者が「月姫」を書くための試行錯誤の課程としてあった。だからこの小説は随所で型を壊そうとして描かれており、複雑で読者に読みにくさを強いる。しかしその奥にあるものはやはり奈須きのこが「王道」と呼んで愛するもので、これを書き終える頃、奈須きのこは自らがそこに本腰を据えることを認めた。それは98年のことで、だから彼は誰よりも早く、停滞を迎えようとしていた美少女ゲームのエポックメイキングとなるエンタテインメント作「月姫」を作ることができたし、多くのユーザーがその面白さに熱狂したのだ。


 この箇所と同様のことは、今出ている『クイック・ジャパン』のアニメ関連記事にも寄せられています。
 『劇場版 空の境界』第四章のパンフにおける奈須きのこインタビューと共に読まれ、広く知られるべき認識だと思います。

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 一口に「王道」というと、その意味する範囲が広すぎもあるのですが、ここは「真っ直ぐな物語」とでも言い換えていいのではないか、と思います。やや狭い定義で言えば「ビルディングス・ロマン的な成長と救済の物語」、と呼ぶことも許されるかもしれません。
 そしてそれは、古典のセンスに帰ることをも意味するでしょう。

歴史的教養とフィクションの関係 - ピアノ・ファイア

作家というものを、横山のように「歴史を教養として持つ」作家と「現実にモチーフを求める」作家と「フィクションを参考にして再生産する」作家との三種類に分けて考えてみたい。

 そういう意味では車田正美も、チャンピオンREDの人生相談で良く歴史の話(項羽と劉邦とか)を持ち出すのだけど、少年漫画家としては車田あたりがギリギリ「歴史を教養として漫画を描く」世代かもしれない。

(中略)

 『Fate/stay night』あたりも、英霊の設定なんかは「いかにも漫画アニメゲームのフィクション世界にドップリ浸かったマニアの発想」であるとも同時に、歴史的教養を根っこにしてる点で言えば、横山や車田のような、作家としてプリミティブな感覚に戻ってるとも言えるんだろう。

繰り返しの差異によって浮き彫りになる情報 玉城とシンクーに見る繰り返し演出 - 未来私考

 GiGiさんによる、コードギアスを用いた「情報圧縮」の解説が具体例とともに更新されています。


 ぼくはコードギアスを観ていないので内容にはなんとも言えないのですが、コードギアスを観ている人ならば「反復対比の読み方」を実地で理解する参考にもなると思います。