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「先号のヒキは今号の内に拾え」の鉄則

 昨日の日記で、

今週のデータベース更新 - ピアノ・ファイア

一切説明抜きで三週前の伏線を拾うとか、普通の読者は気付きもしないでしょう。

……と書きましたが、これは実際にセオリーとして良く言われていることで、雑誌に連載する小説家や漫画家は、ちょっとでもスパンの長いプロットを作ったりすると、たいてい編集者から「二話以上引っ張る伏線は張らないで下さい!」と説教されたりするそうです。


 今週のスクランは三話前の伏線を拾うというタブーを冒しているわけですが、ちょっと考えてみればすぐ解るのが、『School Rumble』の一話分は「9ページしかない」ということ。他のマガジンの連載作は一話につき18ページが基本なので、9×2=18、つまり「二話で一話分」なわけです。
 そうして最近の連載を再構成してみると……。

  1. 18ページでまとめた場合の「先号」
    • ♯243 先々々週伏線の提示)
    • ♯244 先々週(次回へのヒキ)
  2. 18ページでまとめた場合の「今号」

……とこのように、「頁数」という単位で見てみれば、「先号の伏線をすかさず拾う」という形になっていることに気付きます。
 しかしそれが、9ページという「半分ずつ」のペースで雑誌に載せた途端、誰も伏線の存在に気付かないような漫画に変貌してしまうわけです。数字のトリックみたいですが、不思議なものです。
 勿論、単行本で読む場合にはこういう問題は消えるでしょう。

今週のSchool Rumble(#246) - ぼんやり猫の日記

izumino 『いや、単行本なら♯243はすぐ前の(30ページも離れてない)描写なので、一気読みした読者は普通に繋がる部分だと思います。でも雑誌で読むと確実にムリでしょうね』


bonyari_cat 『 頭の中で動かしてみました。
 確かに、五分のタイムリミットを経て「答えが出せなかった」のではなく、五分しっかり考えて「そういう答えになった」というふうに読めますね……。
 面白いものです……。』

 連載初期から、とにかく実験性の高さが前面に押し出されていたスクランですが、五年も連載を続けている今も「とても週刊誌とは思えない」ことばかりをやっていて、本当にそんなことやってて大丈夫なのか? 無茶しやがるぜと思う反面、何か貴重なモノを見せられているような気もします。
 実際に読んでみることで、「いかに読者というものは数週前の出来事を認識できないか」というセオリーの確かさを、自分の身体で試せたりもするわけで。


 逆説的に言えば、立ち読み読者の為に「先号のヒキは必ず今号の内に拾う」という努力を、当然のように毎週こなしている週刊漫画家達の技術に注目してみるのも面白いかもしれません。今週の話の中に、どれだけ「先週の伏線をすぐ拾う為の工夫」が込められているか? というのも、「漫画家が何を思いながら毎回話を考えているか」ということを知る切っ掛けになるかもしれませんよ。

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小林 尽 週刊少年マガジン編集部

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