ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』(原題:To the Lighthouse)読了
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岩波文庫といえば我々の脳裏には既に『今日の早川さん』の岩波さんしか思い浮かばなくなってしまったという点で『今日の早川さん』は罪作りな漫画なのだと思うわけですが、そんなことは置いておいて面白かったです。読みにくいのを我慢して最後まで読んだ甲斐はありました。
娯楽小説ではない小説もたまにはいいもので、読後感を飲み物に喩えるなら、濃くてねばっこい液体を嚥下するようなガッツリした喉越しが味わえたという感じ。飲み下しやすい娯楽作品はお茶や清涼飲料水の立ち位置で。
『灯台へ』を読み始めたそもそもは、小説における「視点(人称)」について考える参考としてだったので、学んだことをメモしておきます。手法的には「意識の流れ(Stream of Consciousness)」と呼ばれているものみたいですね。そういう手法の概念があるということと、その実例の雰囲気を確かめられだけでも収穫でした。「意識の流れ」と視点の関連性については、また何か考えてみたいと思います。
- 意識の流れ - Wikipedia
- Stream of consciousness - Wikipedia
- http://www.nyu.edu/classes/op/writing/old_pointofview1.htm
『灯台へ』における三人称体の在り方は、ある面で非常に「漫画に近い」表現だという印象も受けたんですよね。『School Rumble』を読んでる時の感覚を文字にしてみたら、こんな感じだよなあと思いながら読んでいました(マガジン43号に載っていた♯243を特に連想しました)。「意識の流れ」手法と、漫画表現の親和性は、もっと突き詰められてもいいと思います。
それと、物語のテーマ的には色川武大の『百』に良く通じる所を感じました。
家庭内でのディスコミュニケーションと愛情が描かれているという点でそう感じたのですが、『灯台へ』が三人称で、『百』は一人称で語られているという違いがあるのに似通った世界を感じさせる、というのも興味深いものです。
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ディスコミュニケーションと愛情は、スクランにも相通じるテーマですね。人間ドラマの超重要ポイントです。