HOME : リクィド・ファイア
 移行後のはてなブログ:izumino’s note

少年漫画は起業家精神を伝染させるために存在する

「絵がヤバかった頃の『HUNTER×HUNTER』は実は起業家精神の結晶だったんだよ!」「な、なんだってー!」:ランゲージダイアリー

 『金持ち父さんの起業する前に読む本』というのを読んでたんだけど、「『従業員』は『完璧』になるまで待ち続ける、すなわち信号の色が全部青になるまで行動しない」、一方で「『起業家』は『未完』のまま行動する、つまりは例え信号の色が全部赤でも行動する」という趣旨のことが述べられており、まったくその通りだと思った。

 たぶん今の日本は90%くらいの人が「従業員」で、「起業家」は10%程度だと思うから世の中全体としては不具合、不完全性に対して「叩き」が横行して2ちゃんねるなんかが盛り上がるのは理解できるんですが、一方で起業家が不具合や未完のリスクを取ってでも市場に製品をリリースする決断を下してくれなかったら、世の中こんなに豊かにならなかったのも真実。


 僕が尊敬するマーケターの木坂さんも、「誤解を恐れずに言えば、ビジネスは全て見切り発車なんだ」と『ネットビジネス大百科』の中で言っていた。

 少年漫画というものは、その「日本では貴重な」起業家精神を子供に伝染させて、広げるために存在するメディアだ、とぼくは思っています。
 ある人から聞いた話ですが、企業の創設者や、今から起業家になろうとしている人は、本宮一門の作品のファンが多くて、しかも漫画そのまんまのノリで行動しているらしく、やっぱりそういうものなのか……と思ったりしたものです。


 勿論、出たとこ勝負の起業家は失敗率も高い道理で、成功者の足下には死屍累々と挫折者の屍山血河が横たわっている筈なのですが、おそらくトータルで見るとそういう殺伐とした状態の方が健全なんですね。
 数割の登頂者を輩出させるために、沢山の無謀なアタッカーを生み出すこと。市場原理が求めているのは、その無謀なアタッカーの絶対数だと言えます。アタッカーの数が多ければ多いほど、成功する登頂者の数も増大するのですから。*1


 もっと話を広げてしまえば、ジャンプに投稿する新人漫画家が、うわっ、ヘタな絵だなぁ……と誰でも一瞬思わずにはいられないほど荒削りな技術しか持っていないのにも関わらず、堂々と投稿し、そして新人賞を獲って連載ももぎ取ってしまうケースが珍しくないのも、ジャンプ系投稿者にはジャンプスピリッツとも言うべき「未完成で見通しがつかなくてもとりあえず行動する」という起業家精神が生来備わっているからだ、と考えることができます。彼らが少年漫画を読んで学んでいることは、「少年漫画の描き方」だけではなく、少年漫画が持つ無謀なスピリッツでもあるのです。


(ジャンプとは逆に、技術的には満点が取れるような、万全な実力を持ってからじゃないとなかなか門を叩けないような気にさせるのがサンデーの新人賞でしょうか。ということは逆に言うと、サンデー漫画には投稿者を「無謀」にさせるスピリッツがジャンプに比べて弱いのかもしれません。それは少し寂しいことです。)

*1:と、とりあえず単純化した考え方ですが。相反する考え方を提示したいなら、とりあえず『孫子の兵法』を持ち出せばいいと思います