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 移行後のはてなブログ:izumino’s note

単行本でちゃんと読んでない漫画をちゃんと読む運動強化週間

 今まで単行本で読んでなかった漫画(主にジャンプ漫画)を買い込んできました。

 どれも飛ばし飛ばしで読んでたりしてたんですが、特にムヒョロジは殆ど未読状態でした。
 以下感想箇条書き(mixiからの転載。友達とチャットして出てきた意見も入ってます)。

総論

  • どんな作品にも言えることだが、導入からちゃんと世界に没入することで「その漫画のパターンとリズム」に身体をならすと、その後の面白さ(期待感)や読みやすさ(安心感)が全然違ってくる
    • いわゆる「引き込まれる」感じが出てくる
    • 漫画家が、まず読者にティーチングしないといけないのは「世界観の説明」じゃなくて「パターンやリズムの説明」なのかもしれない
    • (自分を含めて)その肝心要である「パターンやリズム」を全く身に付けないまま、週刊作品を読んでる人はむちゃくちゃ多いんだろうな……と想像すると少し切なくなる。そういう「軽い読み」を許せるからこその「メジャー誌」だとも言えるけど
  • 週刊連載の場合「途中からでも引き込まれる漫画」と「途中からだと入っていけない漫画」に結構別れるけど、「パターンやリズム」をいつでも説明できる(している)漫画は途中参加に強い
    • 今回読んだ中では、クロスゲームとムヒョが途中参加しにくい部類に入ると思う(この「途中参加しにくさ」についてはまた別視点で後述)

クロスゲーム

 周囲のあだち充ファンが揃って「あだち充の最高傑作」と言うだけあって、あまりにも面白すぎる。

  • 「静かに熱い」という表現がしっくり来る。熱が高すぎて見えない炎みたいな
    • 来週からはもっと真剣に読もうという気になった
  • 週刊連載だというのに、毎回必ず「これは凄い上手い」と思わせる演出を連続してやり続けられるというのも凄い
    • 某氏曰く「現在の週刊作家中、最高のスーパー・アベレージ・ヒッター」
    • 本来アベレージ・ヒッターの筈なのに、そのアベレージの基準値自体が(強打者の強打並みに)高すぎる打者、の意らしい

デスノ、ムヒョ、ネウロ

 三作とも(リボーンも含めれば四作?)、「魔人と人間のコンビ」というコンセプトで共通していることに注目してみる。

  • ネウロは子供向けに単純明快、ムヒョはちょっと複雑
    • 単純なネウロが、ムヒョと似通った世界観やコンセプトを描くことで、ムヒョを読む子供の敷居を低くしてるんじゃないだろうか(連載順はムヒョ→ネウロの順)
    • 実際にコラボレーション企画が行われていたりして、読者層の重ね合わせは狙っている
  • 編集部視点で見ると、「今のジャンプのカラー」をこの三作で作ろうとしていたようにも見える。共通するカラーを作ることによってジャンプ読者の「読みやすさ」が上がっている。逆に読んでない人からすればどれも読みにくい
    • ダーク系ヒーローの多い今のジャンプを「ジャンプらしくない」と感じてる人は多いと思うけど、「今現在」ジャンプを読んでる子供からすれば、今のジャンプの傾向が「ジャンプらしさ」なんだろう
    • というか、周期的にジャンプはダーク系が固まる時期があるような気も
  • 弥子かわいいよ弥子
    • ネウロは弥子にデレデレ(※妄想)
    • 「好きな子に悪戯したくなる小学生」レベルのネウロさん(※妄想)
    • ネウロの思考回路が小学生レベルっていうのは当然重要で、大人の読者は人間側(常識側)の目線で読むけど、子供って魔人側(世界の外側)の目線で読んでるんじゃないだろうか
    • 人間の幽助よりも、妖怪の飛影や蔵馬の方が人気あったし、モノマネも良くしてたしな(体験談)
  • 西先生はおっぱい好き
    • ナナ姉のおっぱいはエロい
    • リオ師匠のおっぱいはもっとエロい

ジャンプ漫画と「因縁」

 やはりジャンプ漫画には「(やおいを含めた)カップリングの妄想を誘う何か」があるなぁ……と実感。

  • ジャンプ漫画は「因縁」の魅力で連載を読ませている。キャラクター漫画というより、因縁漫画と言った方が正確かもしれない
    • あえて「関係性」ではなく「因縁」という語を選んだのは、前者の場合は「コイツとコイツはこういう関係なんですよ」という状況説明に留まるスタティック(静的)な表現なのに対して、後者は「因縁を解消する」という用法が示すように「いつかは決着をつけなければならない」ダイナミック(動的)な表現だから
  • この場合、「勝ちたい/負けたくない」「こらしめたい」「報いたい」「救いたい」とか、必ず「〜たい」が付いてて、「いつかは決着を予感させる」のが因縁……というくらいに認識して下さい
    • あるいは「こいつらは永遠にいがみあってるんだろうな」とか「いつまでもイチャイチャしてるんだろうな」みたいな、やはり「これから流れる時間」を感じさせるものは全てダイナミックな因縁と呼んでいいかもしれない(それはそれで「いつかは終わるかもしれない」という決着も予感させるし)
  • それでいて「バトルの連続」なので、基本的にその「いつか」の因縁は解消されずにどんどん次回に引っ張られていく(スルーされていくことも多い)
    • あくまでバトルがメインで、因縁はサブ要素。バトルに継ぐバトルだからこそ因縁の引き延ばしやスルーが可能になる
    • 決着がつかなかったり、描写だけあってスルーされるような因縁が平気で描かれるから、読者のモヤモヤが貯まりやすい。また、設定的な空白も生まれやすく、同人妄想がしやすい。ホント良く出来てる
    • なんて恐ろしい雑誌
    • 更に言えば、そこに描かれるのは「命を賭けたバトル」なので、「死ぬか生きるか」「死んでも○○する」のようなシリアスで切実なシチュエーションが発生しやすく、勝手にオーバーな因縁が生まれがちになる。そして膨れあがった因縁はそのままにして次のバトルへ進む(笑)
  • そういう意味で、月とLの因縁や、ムヒョとエンチューの因縁や、ビコとリオの因縁などは「決着が気になって仕方がない」魅力に溢れていて、それを近視眼的な評者は「キャラの魅力」と解するだろうけど、その本質は「因縁の魅力」であると言った方がいいと思う
    • また、この「因縁」は素材レベルの問題なので、いわゆる「ストーリー」とは区別して語った方がいいと思う
    • 「キャラ/因縁/ストーリー」に三分割して捉えるのも良いかもしれない
  • 「因縁」には、読者が勝手に深読みして妄想した関係性の積み重ねも含まれる。やおいが代表的だけど、さっき書いた「ネウロは弥子にデレデレ」もその一つ
  • サンデーやマガジンの漫画は、短期間で因縁に決着をつけたり、うまくストーリーでまとめてしまう作風が多いので、妄想する余地が少ない
    • 極端な例で言えば、チャンピオンの刃牙だって「一試合終わったら相手との因縁に決着がついて、引きずらない」印象があるけど、ジャンプはそうならない
    • 短期間で因縁がまとめられるサンデーマガジンは途中からでも読みやすいが、特定の因縁をずーーーっと引っ張りがちなジャンプは大元の因縁を理解してからじゃないと全く感情移入できず、途中参加しにくい(デスノの様に、因縁抜きでも単発のバトルだけで読み所を作れているなら別)
  • 男性はバトルを中心に、女性は因縁を中心にして読んでるんだと思う。「ルールの説明よりも、人間関係の方が記憶に残りやすい」女性の脳
    • これだけ「因縁」の濃さ(と、決着のスルーっぷり)を前面化しているジャンプに女性読者が多いのも当然か

 というわけでセンス足りないなぁという不安は晴れましたとのこと。
 ちゃんと読めばハマれたし、充分読み込めましたよ、と。