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『ふたりはプリキュア』第28話「レギーネ登場!ってもう来ないで!」

izumino2004-08-18

 来週も観ないと分からないことが多いので、今回は軽くやっつけます(と言いつつ文章量はそこそこありますが)。
 演出面の評価は他の感想サイトの人達が既にやってますしね。バンクをうまく使ったアクションシーンが良かったです。バンクを上手に使ったアニメって好きなんですよ。
 あと気になったのは、なぎさとほのかが随分等身大の子供として描かれるようになったことでしょうか。万能で最強の、世界に祝福された子供達じゃないんですね。*1これは今後の展開で変わってくるかもしれませんが。

  • 二面性の強調

 『ふたりはプリキュア』は、割と真剣に「ものごとには二面性があるんだ」ということをキーテーマに持ってこようとしているのが窺える。
 今回出てきた「絶望と希望は背中合わせ」というキーワードがそう。ただ、娯楽作品(子供番組)としては「ものごとの暗い部分」ばかりを強調されてもちょっと困るので、クライマックスに向けて明るく前向きなテーマへと「成長」してほしい。今後の展開で期待したいポイントその1。


 ところでこれは深読みでしかないが、光の園の王子であるポルンは鬼ごっこでタッチされた時「メップルがドツいた」と言ってベソをかき、「そんな言葉いつ覚えた」とメップルを嘆かせる。これは「ドツいた→ドツく→ドツクゾーン」という連想に繋がる言葉であって、光の園の住人であるメップルにとって不本意な呼ばれ方であったことが想像に難くない。
 そもそも「鬼ごっこ遊び」の「鬼」をメップルに担当させるという発想自体、光の園の「善」的なイメージからすると違和感がある。いや、むしろメップルは好戦的で粗野な面を(ミップルに比べて)多く見せているのだから、「メップル→鬼→ドツく→ドツクゾーン」という同一化のセリー(系列)は、あながち的外れな連想でもないかもしれない。
 更に言えば、このセリーはメップルを媒介に変身するキュアブラック(=なぎさ)にも届くだろう。キュアブラックイルクーボに「すべてを力でねじふせる最強の者」などと形容されるプリキュアの片割れなのだが、そのキュアブラックにも「ドツクゾーン的な」カラーは顕著なのだ。(「文字通り色が黒い」という点はさておき)攻撃的な性能を持ち、時に「叩きのめす」「力ずく」という乱暴な言葉を用いる所がそうだ。
 そして戦闘的なキュアブラックに対してキュアホワイト(=ほのか)は非戦闘的であり、戦わずして敵であるキリヤの心を開かせもした。そのキュアホワイトを見てイルクーボは「解せない」と違和感を漏らすのだが、この時のイルクーボプリキュアが持つ「ドツクゾーン的なもの/光の園的なもの」の二面性に気付かなかったのだろう。
 こういった光の園プリキュアのカラー構成は、まるで太極図(「太極」のキーワード画像参照)の白地の部分と黒地の部分を表しているようでもある。ミップルとキュアホワイトが老陽(白地のみ)の部分だとすると、メップルキュアブラックは少陽(白地に黒点)の部分だというように。
 そして虹の園は、太陽(=光の園)と闇夜(=ドツクゾーン)が拮抗している世界であることが示唆されている(第26話における太陽の演出を参照)。


 さて、光の園虹の園に二面性があるとして、ではドツクゾーンの側もそうなのだろうか? その可能性を予期させたのが前クールのキリヤの裏切り行為だった。しかし現在の所、キリヤ編で描かれたテーマや伏線はまだ活かされる様子がない。いずれ活かさないと勿体ない設定だと思うのだが……。まぁ、それが今後の展開で期待したいポイントその2。

  • 前クール後半のまとめ

 前クール後半のシリーズ構成について少し触れておこう。あの第23〜26話(イルクーボ編から最終決戦まで)のストーリーは確かに物足りなさを残しているのだが、それはなぜだろうか。
 以前も言及したことだが、前クールにおいて主人公達は殆ど「成長」をしていない。キリヤの死、イルクーボの脅威などで傷付けられ、後から元気を取り戻したりはするものの、決戦ではいつも実力での勝利を得ていない。つまり、障害に対する「克服」と、それに伴う「成長」を彼女達はまるで経験していないのだ。辛い思いをふたりで共有したという体験しか残っていないのである(だからふたりの「絆」だけは回が進むにつれて強化されている)。


 これは成長が描けていなかったというよりも、スタッフが成長させなかったと取るのが自然だろう。逆に言うと、次クールのために「成長」に関わるエピソードを敢えて出さず、温存しておいたのかもしれない。
 この日記でも何度か言ってることだが、TVアニメは一話や二話の単位ではなく全体的なスパンで評価した方がいいものなので、むしろこれから描かれるであろう「成長」に気が向かうというものだ。*2

*1:ある意味「アンチまんが映画」な描き方とも言える

*2:2クール目が終わった後で「成長」が無かったことにされるTVアニメといえば『カレイドスター』もそうだったな。カレイドの場合は2クール目をレイラさん中心に盛り上げることで場を保たすのに成功してるんだけど、プリキュアはそこが弱かったみたいだ。つくづくキリヤは勿体ないキャラだったなあ