漫画史研究会と、お仕事報告
漫画史研究会に初参加
先日は、漫画史研究会という集まりに招かれまして、初めて出席させていただきました。
普段はかなりゆるゆるしたノリの会らしいのですが、同席した永山薫さんいわく「珍しいね、今回は偶然20人くらい集まってるけど、いつもはもっとダラダラしてる」んだそうで。
メインのお題は、椎名ゆかりさんによる海外MANGAについてのレポート発表で、それ自体もタメになる内容だったのですが、何より得難い機会だったのは、あの夏目房之介さんと直接お話できたことでしょう。永山さんに紹介されてご挨拶したのですが、かなり緊張してしまいました(ちなみに生で見たこと自体は「萌えてはいけない。」というイベントで客席からの一回だけ)。
合計30分くらい? 軽くお話して頂けたのですが、一昨年ユリイカに載った「視線力学の基礎」はちゃんと読まれていたようで、しかも「書かれていることにはあんまり違和感とか無くて、スッと納得できたよ」というようなことを言って頂けました。……二年近く抱えてた懸念がやっと解けた(笑)。
夏目さん以外の方々からも「みんなチェックしてますよ」「今度ここで発表してくれればいいのに」などと言って頂けて、そういう声を直接聞きに行けただけでも参加した甲斐があったと思います。是非また参加させて頂きたいと思います。
あの場にいらした皆さん、当日はどうもありがとうございました。
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- 日本漫画と海外MANGAの中間点として『モーニングツー』の試みが今は注目なのだそうな
告知:『ユリイカ』臨時増刊号に載ります
アットマーク・ジョジョでニュースになった時に名前が出ていたので、もう気付いている方もおられるかもしれませんが、今月出るユリイカの臨時増刊号、荒木飛呂彦特集にイズミノウユキ名義の漫画論を寄稿することになりました。
漫画史研究会でもちょっと宣伝してきたのですが、荒木ファンな方だけでなく、漫画論に興味のある方も是非ご覧になってほしいと思います。
今から内容を予告しておきますと、三部構成を意識したものになってまして、
- メビウス・ラビリンスにおける荒木飛呂彦のコマ割りの原理に私見を交えて発展させたコマ割り分析
- 「アングルの傾きやすさ」という未発表の理論の公開と、それに基づく「荒木割り」の分析
- 「絵描きとしての荒木飛呂彦」に向けた作家論
……という、やや詰め込み感のある内容になっています。
ちなみに「メビウス・ラビリンス」の管理人氏には許可を取った上で引用(援用)を行っておりまして、実はご本人とも詳細にメールのやり取りをした上で執筆にあたったという背景があります。
管理人氏は、荒木飛呂彦特集号が発売したら「何かブログでレスポンスするかも」とも仰っていたので、ネット上で更なる発展が望める部分かもしれません。
続く「アングルの傾きやすさ」は、さわりの部分だけ「漫画批評における、視点をめぐる諸問題」や、ユリイカの安彦良和特集でも触れたものなのですが、さわりだけでなく、宮本大人さんに招かれて九州の研究会で発表した内容を整理してまとめたものを公開しています。
宮本さんからは「アングルの傾きやすさ」問題について、
お話は、前半が、『ユリイカ』の「マンガ批評の最前線」にイズミノウユキ名義で書かれた「視線力学の基礎」の延長上にあると言える「アングル」の問題、
(中略)
内容については、いずれまとまった形で発表されると思いますので触れませんが、ほんとに画期的なものだと思います。いよいよ、マンガ表現論が、それを内に含み込んだ形でのマンガメディア論へと発展する段階に来たのかな、という気がします。つまり、マンガ表現の形式・文法のレベルを支えている、そもそもマンガが、冊子体に綴じられた紙の印刷物として手にされ視線を注がれるものであるという、メディアとしての物質的水準までを視野に入れつつ表現のありようを論じるという、「視線力学の基礎」ですでに着手されていた試みが、さらに包括的なものになってきていたということです。
というありがたい言葉を頂いていますが、正確には「視線力学の基礎」の内容と「並立する」問題にあたると考えていまして、むしろ両方を合わせることで「視線の力学」が総体的に説明できるのではないかという感じです。
ともあれ、これで自分の「持ち玉(ストック)のひとつ」を完全に吐き出すことができたわけで、少しだけ身軽になれそうですね。今後の批判と検証を待ちたい部分です。
そして、シメとして書いた荒木飛呂彦論については、実際に見て頂いてのお楽しみということで……。
記事のタイトルは「ヘブン・ノウズ・ハウ・ザット・ビジョン・イズ」にしました。
- 余談
ちなみにこの原稿を書くために、荒木の全作品を読破するのは勿論、昔のインタビュー記事を(ヤフオクで買ったりして)再収集したりと、荒木漬けの生活を暫く過ごしていました。漫画読みの御多分に漏れず、自分も荒木好きだよな〜〜〜と実感することしきりです。
自分以外の特集記事は、荒木飛呂彦インタビューも楽しみなのですが、個人的には杉田俊介さんの記事を楽しみにしています。ブログでのSBR論(最新/その前)が良かったので。
SBRの「男の世界」編はやっぱり最高で、もし表現論ではなくストーリーを語れ、とぼくが言われていたら、「マンダム」を「ボーイ・II・マン」の延長としてみなした少年漫画論を熱くしていただろうと思ったりしてます(ホントに余談)。