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「ただちに影響はない」ことをどう描くか/西島大介『Young,Alive,in Love』2巻

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西島 大介

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 西島大介『Young,Alive,in Love』2巻読了。
 前巻では「視えない」をキーワードに感じたが、今巻に横たわるのは「ただちに影響はない」


 放射能、幽霊、ネットのデマ、マスコミ、政府や企業の情報操作がみな「実体が視えない」ものとして似たようなものだ、ということを描いていたのが1巻だった。


 2巻では、その「視えない」ものの影響がどう現れるのか。それは「ただちに影響がない」ものだから、実際に現象として現れたときでも、なぜそうなったのか、原因もよくわからないし関係も説明しにくい、というさらに不明瞭な状況が描かれている。


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荒木 飛呂彦

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 この漫画、個人的には「震災以後の漫画作品」として荒木飛呂彦の最新作ジョジョリオンと並べて読んでいるのだが、「ただちに影響がない」というフレーズからもやはり最近の『ジョジョリオン』を連想した。
 『ジョジョリオン』から加速している表現──、スタンド能力の効果がより正体不明で捉えづらい現象へと変化していく表現に、「ただちに影響はない」との呼応を感じる。


 荒木飛呂彦によるスタンドの表現は、超能力漫画で描かれる「念じたらガラスがパリーンと割れる」という「思念→結果」のダイレクトな接続に違和感を覚え、「結果とのあいだのプロセスが描写されないと納得いかない」という動機から生まれたとされる。
 念動力(サイコキネシス)なら「一般人には見えない人型スタンドが手で動かしている」になるし、発火能力(パイロキネシス)なら火炎放射するスタンドを描くことになる。『ジョジョの奇妙な冒険』の第三部では、そうしたシンプルな視覚表現だった。


 だが、この「納得いくプロセス」を科学精神的に追求していくと「簡単に理解できるような因果関係を説明できないプロセスもあるのでは?」という不確かな領域にも突入してしまう。
 放射能による影響、そして「情報」による人への影響などは、因果関係をうまく説明できない現象の最たるものだ。


 例えば、超能力というより、魔術や呪術の類の話だが、「3年後にお前は不幸になる」と相手に伝えれば「理由はよくわからないけど3年以内に不幸なことが起こる」というような、ただの心理トリックにすぎないかもしれないし、それこそ「視える人にしか因果関係は分からない」世界があるわけで。
 それを漫画で表現するとしたらどうなるんだろう、という模索を『Young,Alive,in Love』と『ジョジョリオン』の中に感じているということだ。


Young,Alive,in Love 1 (ヤングジャンプコミックス)Young,Alive,in Love 1 (ヤングジャンプコミックス)
西島 大介

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