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泉信行トークイベント「変わりゆく『GUNSLINGER GIRL』の描写を読む」

 去る19日は、米沢嘉博記念図書館相田裕展で企画されたトークイベントに出演するために上京していました。

泉信行トークイベント「変わりゆく『GUNSLINGER GIRL』の描写を読む」
講師:泉信行(マンガ研究者)
日時:10月19日(土) 16:00〜17:30
場所:米沢嘉博記念図書館 2階閲覧室
〔中略〕
マンガ表現論の一線で活躍する泉信行氏に、「GUNSLINGER GIRL」について語っていただきます。10年の連載の中で変わるもの、変わらないもの、変えられないもの─。全100話、全15巻の物語は、巻を重ねるごとに景色の厚みが増し、理想の絵に近付いていきます。その前進と変化に関わる表現を、講師と共に振り返ります。

米沢嘉博記念図書館|泉信行トークイベント「変わりゆく『GUNSLINGER GIRL』の描写を読む」

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 プレゼンへたくそなんでアットホームな漫画語り(見せたいページを探すのに時間が掛かるやつ)になってしまいましたが、当日は会場キャパを超えて立ち見が大幅に出るほど盛況でして、来場お疲れ様でした&ありがとうございました。
 質疑応答時間は驚くほど質問の挙手が多く、ガンスリが熱く支持されてる作品だと感じられてよかったです。楽しんでいただけたでしょうか。

当日のレジュメ

泉信行 2013/10/19


1イラスト的なマンガ
2シネマティック(映画的/写実的)なマンガ
3情念と幻想のマンガ


■キーワード
1.
余白を大きく使ったシンプルなコマ割り
フラットなグレースケール
映画的なセリフ回しへの憧れ
単行本修正における作り込み
ドラマティックなアイテム落ち
同じシーンの描き直し
劇中劇のリアルさの描き分け
2.
背景・カメラアングルの創意
幻覚の登場(2ヶ所)
3.
劇中劇とキャラ作画が近付いていき、リアルだった背景に情緒が生まれていく
情念の世界。風景を背景にするだけでなく、風景の中に入り込むようなカメラアングル
幻覚の再来


−−−−−−−
人を感動させる物語は、現実を純粋なかたちで切り取ろうとする
→キャラクターも考えていることが少なく純粋な方がいい
→作者は少しづつそれを現実的な複雑さに近付け、更に現実をも越えようとする


義体、情念に縛られた男たちと
ピノッキオ(人形)、マッキナ(機械)、ロボットのような黒幕の対比


純粋で媚びない少女から、捉えどころのない、ひとつの謎としての女性へ。
反フィクション的なキャラクターとしての母親


スペランツァの人生はフィクション(物語)としては描かれない
映画『レオン』のような出発点に戻りつつ、異なる形で終わる


 他、画像資料として用いたのは浦沢直樹MASTERキートン』、皆川亮二スプリガン』、冨樫義博幽☆遊☆白書』など。


 後半部のキャラクター論は、拙サイトにある「萌えの入口論」の一部を延長して語っていたところがありました。


 また、当日客席参加もされていた、岩下朋世さんによる『少女マンガの表現機構』も参考文献として挙げられます。興味があれば、合わせてご参照ください。


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余談

 余談ですが、19日はこのイベントの直前に明治大学の中野キャンパスにて別のトークイベントがあり、実は一瞬だけ会場をハシゴしていました。


 とてもじゃないけど最後までいられるスケジュールではなかったので15分で退出しましたが、会場で久しぶりに永山薫さんに挨拶できただけでも良しとします。