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『魔法科高校の劣等生』のSF的な近未来

 書籍化に際しての書き下ろしも含む、魔法科高校の劣等生の5巻ですが、先日読み終わりました。


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 一方、将暉の母親の方は専業主婦だが、こちらもちょうど不在だった。多分、買い物に行っているのだろう。日常的な物は食品も含めてオンラインショッピングで調達できる時代とはいえ、実際に品物を見て購入したいという女性は、特に主婦層に多い。買ってそのまま持って帰るのではなく配達させるのだからオンラインで買っても変わらないような気がするが、これは男性的なものの考え方かもしれない。
 一条邸は平均的な一戸建て住宅のおよそ十倍の規模を持つ大邸宅だが、住み込みの召使いやメイドの類の使用人はいない。〔中略〕同じ十師族でも大勢の使用人を抱える七草や五輪とは対照的に、機械で可能なことは機械にやらせるという方針の下、全面的にホーム・オートメーションを取り入れていた。

「母さん、そろそろ戻らないと。茜と瑠璃が待ってるんじゃないのか」
 妹たち二人は夕食の片付け中だ。洗い物などはそれこそホーム・オートメーション・ロボット(HAL)に任せればいいように思われるが、「その位できないと恥ずかしくてお嫁に出せない」という美登里の方針の下、炊事・洗濯・掃除をローテーションで娘たちにやらせているのである。


 これって、ぼくの好きな「クレギオン」シリーズや、「新スタートレック」シリーズにも共通する部分なのですが、


「科学やインフラが発達して便利になりすぎた未来だからこそ、かえってクラシックな家事や家政学を重視して継承する文化がある」


……という未来観なのが、SFとしても『魔法科高校の劣等生』が好みに思えるところですね。


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 野尻抱介スペースオペラクレギオン」シリーズは、富士見ファンタジア文庫ヤングアダルト小説として90年代に発表されたもの。
 見習い航法士であるヒロインが、母親仕込みの家政学を応用して仕事や雑用を片付けていくシチュエーションが多く、「宇宙でも活躍できる女の子」をリアルに描いたストーリーが魅力でした。


 『新スタートレック』(以降の)シリーズは、機械でどんな品物も料理も作り出せて、貨幣経済も消失しているくらいに豊かな未来において、クルーたちが「趣味」で料理の腕をふるったり、乗馬を嗜んだりと……、物質的に不自由しないからこそ「アナログで手間のかかる文化」を楽しんでいる姿がかっこいいなあと思いながら見ていたドラマでした。


 特に、最近のライトノベルから『魔法科高校の劣等生』のようなSFに出会って、こういうリアルな近未来モノも面白いなあと感じた人には、「クレギオン」シリーズを推薦したいですね。
 キャラクターたちも魅力的だし、今読んでも面白いはずだと思いますよ。