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二項対立の『バクマン。』(大場つぐみ)と三項対立の『HUNTERXHUNTER』(冨樫義博)

今週のジャンプの話

 『バクマン。』は「人気の出る敵キャラクターの作り方」がテーマで、新妻エイジの新作は当初のライバルキャラを殺して新しい敵と交換できるのだが、サイコーとシュージンの新作は二項対立構造がしっかりしすぎているためにライバル交換が利かない、という話。


 一方、『HUNTERXHUNTER』は「総選挙編」と「アルカ編」が同時進行中。

単純な二項対立から三項対立に持っていけない大場つぐみ

 大場つぐみは『野望の王国』を創作の参考にしていそうなわりに、柿崎(川中島)という魅力的な「第三勢力」の存在価値を理解していない……とは先日の『HUNTERXHUNTER』Ustでも論じていたことでした。


  • 1:17:30あたりから


 小池一夫のキャラクター論でも、漫画を成功させるにはまず「魅力的な主人公」、そして「魅力的な悪役」だ、と続くのですが、「主人公とライバルが重要」という構造は基本中の基本の話であって、それだけでキャラクターの魅力が引き出せるわけではない、という話ですね。


 今週のバクマンでは、まさしく「カッチリ決まった二項対立からの変化に乏しい」という欠点を作中漫画に背負わせたことで、この問題には自覚的だったのかな……? と思ったものの、その作中漫画と同じ欠点をバクマンそのものが自ら抱えているというのはどうなんでしょ。

二項対立を破却させる異分子の役割

 例えば、七峰君がせっかく作り出したマーケティングとブレーンのシステムを有効に取り出せなかった……要するに「アンケート対決という単純な勝負のシステムに異分子を混入できなかった」バクマンは、ハンタでいえば「選挙編にアルカを絡ませずに選挙だけやってるようなもの」なんですよね。


 大量殺戮兵器であるアルカが投票結果や選挙のシステムすら台無しにしてしまうのでは、というスリルが発生するように*1、今の『バクマン。』に必要なのは「ジャンプのアンケート主義すら無意味化してしまうような、横殴りの外部圧力」の存在だと思うんですよね。


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*1:まぁそうなるとはまだわかりませんが