「中二」という精神年齢──その表現力と妄想力
昨日投稿したポストがだいぶRTしてもらえたりしたので、ちょっと一記事書いてみたいと思います。
なんとキバヤシにもRTされたぞ!
中二にも種類がある
中二、というフレーズはすなわち精神年齢を指すための言葉であるわけですが、同じ中学生でも子供っぽさ、大人っぽさが混在するわけで、まずその発達具合に従って四段階くらいに分けてもいいでしょう。
- 中二の考えた子供の妄想
- 中二の考えた中二の妄想
- 大人の考えた子供っぽい中二の妄想
- 大人の考えた中二の妄想
それぞれ「小二病(小四病)」や「高二病」とどう違うんだ、と思われそうですが、どれも世間では「中二病」とひとくくりに認識されるもの。
子供っぽさから大人っぽさへの推移というのは、「拡大」と「収斂」の拮抗で考えることができます。
例えば小学生が「地上最強」という概念に取り憑かれるように、中学生も「最強」という存在を妄想します。
しかし小学生が「最強の巨大怪獣」とか「最強の巨大メカ」「最強のバズーカ砲」「惑星を破壊できるエネルギー波」などと、大きい、デカイ、という大艦巨砲主義的な「つおい」を求めることに反して、中学生が考える「最強」には、「拡張力」の働く小学生とは逆の「収斂力」が働きます。
すなわち、
- 小さくても威力が最強の武器に憧れる(ワイヤーや小刀、紙などで人を殺せるなど)
- 丸腰で巨大ロボットよりも強い(※十傑衆病)
- 最強だが忌まわしい力として蔑まれている
- 最強だが悪魔の力身につけた
- 最強だが裏ぎり者の名を受けて
- 最強の力を持つが、本人は貧弱か、病弱である
- 能力をいつでも使えるわけでもない理由を考えはじめる
- 代償が必要な方がかっこいい
- 呪われている方がかっこいい
- ルールで制限されるのが好き
- 契約が好き
- 「狂」や「闇」などの字が好き
……などというように、強さが拡大しつづける一方の小学生に対して、あらゆる面でネガティブ要素が「強さ」を収斂させていきます。
妄想が内向きになっていく、とも言えるでしょう。
宇宙レベルの強さから、都会(アーバン)レベルの強さに下降していったりもします。
反面、幼い「拡大力」の息吹を感じさせる「子供っぽい中二」の例を挙げるなら、
剣帝・森羅
並列に存在している大量の宇宙を材料として作り上げた剣
存在しうる可能性のある全ての存在を内包しているため全てを切れる
そして宇宙というものには重さが無く、限界も無いので重さは0、射程は無限大である
昔ノートに書いてた小説の主人公の剣wwwwうぇwwwww
カオスちゃんねる : 第伍回 ゾッとするほど中二病が考えたっぽい武器名書いた奴が優勝
……こういった「帝」「全てを切れる」「射程は無限大」というように、「偉大さ」「破壊力」「万能さ」しか考えていない発想は小学生的です。
しかしそこに「森羅万象」とか「並行宇宙」といった、小学生が知らないような知恵が動員されていくあたり、正しく「中二の考えた子供の妄想」に分類できるアイディアでしょう。
ここから「中二の考えた中二の妄想」へ発展すると、内向きの収斂力が働きすぎ、そして背伸びもしすぎて、いわゆる「痛い」ベクトルの妄想に変わっていきます。
強さにこだわるよりも、「自殺衝動」とか「社会不適格」といった、ネガティブな言葉の方が気に入ったりする頃合いです。
しかし、そこに「中学生レベルの知恵」を越えて「大人レベルの知恵」が動員されるようになると、未成熟な精神年齢の妄想が再び輝きはじめることがあります。
ただ、うっかり「高校生の考えた高ニの妄想」や「大人の考えた大人の妄想」に発展してしまうとそれは中二ではない別物ですから、大人になればいいというわけでもありませんね。
妄想を表現するクリエイティビティ
さて、ここまでは妄想の精神年齢について分類してきましたが、当然、妄想は表現しなければ具体化しません。
「中二の表現のされ方」は大きく六分類できます。
- 未成熟な大人の書いた子供っぽい中二
- 未成熟な大人の書いた中二
- 未成熟な大人の書いた背伸びした中二
- 大人の書いた子供っぽい中二
- 大人の書いた中二
- 大人の書いた背伸びした中二
上からみっつまでは、作家自身も「未成熟な若さ」を武器にして創作するグループだと言えます。
多くの、「社会に出る前にデビューする作家」はこのタイプに落ち着くんじゃないでしょうか。高校生から大学生くらいのセンスで中二の世界を描くという。
下のみっつは、大人の知恵を動員して、しかし若者向けの話を成立させるグループです。
大人の考え方だけで描いてしまうと、ただの大人向けになってしまうところですが、あくまで「中二の妄想に大人の表現力で理屈を与える」ことに専念するのは、なかなか難しいことではないかと思います。
もちろん今、「大人の書いた中二」の代表格と言えば、「考証しすぎの疑似物理魔法設定」と「中二なアイディアの魔法技」のオンパレードでありつつ、微妙に「大人目線の社会風刺」を挟むことも忘れないという、現役の社会人でかつ小説家としては比較的「古い」世代に属すと自認している佐島勤の『魔法科高校の劣等生』でしょう……! と言ってこの記事を締めくくるべきですね。
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