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『スイートプリキュア♪』は凸凹コンビではなく、似たものコンビに注目?

 先週、第一話が放送されたばかりの新番組スイートプリキュア♪(以下スイプリ)。

原点回帰しつつ、明らかに新しいプリキュア

 まっつねさんもブログに書いていますが、『“ふたりは”プリキュア』への原点回帰を感じさせながら、意欲的な新機軸の導入もあるのがスイプリです。


 初代からプリキュアを追ってきた人たちほど、特に期待が高まるスタートだったと思います。
 もちろん初心に返ることで、むしろ「初めて観る人」にも入りやすくなっているかもしれません。

スイートプリキュアは久々に「初代」を感じさせる設定だったのが、
個人的な注目点。
(中略)
スイートは
「まったく別のコミュニティのふたり」という
初代のモチーフを久々に持ってきた。
それにスプラッシュスター
「幼馴染」要素を追加している。

ふたりのプリキュアを考える - まっつねのアニメとか作画とか


 プリキュアは初代とSSまでは一緒にいないと変身できないタイプの「ふたりは」プリキュアでした。
 三年目の『Yes!プリキュア5』以降、ひとりで変身できるようになったり、人数が奇数になったりして「ふたりは」ではなくなります。


 スイプリの場合、まだはっきりしないんですが、変身バンクがふたり変身を前提にしていることや、その変身も「声を揃えて」キーワードを叫ぶ必要があるっぽい?ところなどが「ふたりはプリキュア」の再来の予感。

過去の「ふたりは」を踏襲しつつも、
初期状態が最悪の二人
という新しい試みもある。

ふたりのプリキュアを考える - まっつねのアニメとか作画とか


 プリキュア「親友になるタイミング」で分けるとシリーズごとの個性が出てくると思います。
 過去の作品を振り返ってみると、こんな感じ。

  1. 初代 : 8話でケンカして呼び捨てする仲に
  2. SS : 運命の再会をして一瞬で夫婦に(いっさいケンカ知らず)
  3.  : 仲間によってパターンが異なる
  4. フレ : 最初から最後まで親友
  5. ハト : たいして仲良くならないうちに既成事実で親友にされる
  6. スイ : 親友だったが第一話からケンカ中


 今までのパターンからわざと外している部分もあるだけに、完成度の高さを楽しむというより、新番組として見守りたい感じがありますね。
 つまり、無印が始まったときの見守る気持ちに近いです。第一話はアヴァンタイトルが8分間あるとか、あきらかに妙な構成だったりしますしね(笑)。

正反対の凸凹コンビから、共通点の多い似たもの同士に


 スイプリが放送される前に流出した業者向けの情報でも「初のピンク同士!」とプッシュされていたように、今度のプリキュアは「正反対の要素」を減らして「共通点」でふたりを繋いでいることが気になります。


 そこから「似たもの同士」っていうキーワードに注目すると発見も多いんですよね。
 「プリキュアなのに凸凹コンビじゃない!プリキュアらしくない!」って感想の人ってたぶん少なくないと思うんですけど、彼女たちは「ド」と「レ」の「ハーモニー」なわけで、むしろ「音が近い」ことの方に意味がある仕立てだと思うんですよね。そこが面白さに繋がるんじゃないでしょうか。

フェアリートーン「ドの音符の精ドリー」を本体にセットしてドリーとキュアメロディの音声で変身あそびができる。「レの音符の精レリー」を本体にセットしてレリーとキュアリズムの音声で変身遊びができる。


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 今まで対照的なキャラクター設定だったのに、共通点に変化した部分は多いです。

  1. 髪型と髪の色 : 「ショート(or結んだ髪)とロング」「茶系統と青系統」の伝統だったのが、ふたりともロングヘアに(髪の色も茶系統)
  2. 眉毛 : 「太眉と細眉」の組み合わせが多かったのが、ふたりとも細眉に(※「ツリ目とタレ目」の組み合わせは踏襲)
  3. 学校でのポジション : 「女にモテるボーイッシュな体育会系」と「男にモテるフェミニンな文科系」の対比だったのが、スポーツ少女の響もオシャレで女子力が高そうなイメージ
  4. 性格 : ふたりとも喧嘩っ早いツンデレ
  5. 声優 : ダブルヒロインなら声の落差を強調しなきゃいけないところが、ふしぎと声質の近いキャスティング
  6. 変身後カラー : 「キュアピンクとキュアピンク」とか呼べそうな同系色の組み合わせ


 変身後が「キュアピンクとキュアピンク」といえば、私服のコーディネートもほとんどおそろい。仲よすぎる(笑)。

http://asahi.co.jp/precure/character.html


 プリキュアとしての名前も「響く」のがメロディ「奏でる」のがリズムというのも本来なら逆なんですよね。奏でるのがメロディで、響くのがリズムのはず。
 混同しそうでややこしいですけど、「ふたりセットの一体感」という印象が強いネーミングになってます。


 第一話の演出も「声がハモる」「行動がかぶる」などのハモり・シンクロ推しで、これからもそういう芝居をメインに演出されていきそうですね。


響・奏「「親しくなんかありません!」」
部員「あっハモった!」

 第一話ではじめてふたりでハモるシーン。

ハミィ「そういうセイレーンも猫ニャ」
エレン「やかましいわ!」
響「なんか……、わたしと奏みたい」

 ふたりの関係が歌の妖精たちに重ねられる。

奏「思いっきり怪しいんですけど!」
ハミィ「ありゃ? 同じこと言った! ふたりは仲良しニャ?」
響・奏「「ぜんっぜん!」」
ハミィ「ハモったニャ!」

ハミィ・エレン「「音符みっけ!」」
エレン「真似するな!」

響「あの大切なレコードを……」
奏「あんな怪物にするなんて……」
響・奏「「絶対許さない!」」


 変身バンクは非対称(アシメトリー)なモーションよりもシンメトリーが強調されていて、最後の決めポーズも一見アシメトリーですが、実際は90度角度が違うだけで同じポーズなんですよね。


  • 右側から見るとメロディと同じポーズをしているリズム


 あと、DX3の予告CMでもシンクロリアクションしてますね(笑)。


 響と奏だけでなく、ハミィとエレン、女王とメフィストも、スケールは違うけど同じような関係だと思って全体を追いかけることもできそうです。

 女王の言い方からするとセイレーンはハミィと同じ「歌の妖精」でしかなくて、マイナーランドの住人というわけではなさそうですし(ビックリマンで喩えると、歌の妖精は「天使や悪魔ではなくお守り」的な存在なんじゃないかなあと)。
 セイレーンとハミィが似たもの同士なら、女王とメフィストも根っこでは似たもの同士のような予感もするんですよね。

スイプリは「元々ひとつだったものが再びひとつに戻る物語」

 初代は、白と黒(陰陽)の凸凹コンビを描くことで、太極的な一元論をモチーフに……しようとしてたのですが、光と闇の対立関係が明快すぎることから、かえって「本当はひとつ」とは言えなくなっていたところがありました。
 ここでいう一元論というのは、一見反発するようなものでも根っこは同じで互いに互いを補完・生成している、という道教由来の考え方ですね。


 しかしプリキュアシリーズは勧善懲悪の話型の方が強くて、陰陽のシンボルはモチーフ留まりとなり、西洋的な二元論を越えられていなかったと思います。


 そこでスイプリに注目してるのが、マイナーランド側がそんなに「悪」に感じられないところ。
 マイナーコードも、悲しみや不幸の音楽も、「音楽」としてはメイジャーランドと同じ音楽のはずで、本来同じはずのものが「ケンカ」してるだけにも見えるんですね。


 だから善悪二項対立の勧善懲悪を弱くして、むしろ「痴話喧嘩」の話形を複数レイヤーで利用している物語、と思って観ることもできそうです。


 根っこの性格も含めて(従来のパターンだった「凸凹コンビ」ではなく)「似たもの同士」のプリキュアなのも、そういう意図があるんじゃないかなと。
 そう思えば「ひとつ」のシンボルとしての組曲(スイート=ひとそろい)」って言葉もなかなかいいなって思います。


 もちろん凸凹コンビも魅力的なのですが、似たものコンビならシチュエーションも色々作れますし、丁寧な人間関係をドラマにできそうで楽しみです。
 思わず声がハモる、同じ品物に同時に手が伸びる、偶然同じ場所に足が向いてばったり出会う、とかとか。


 シリーズ構成(第一話の脚本も担当)はドラマ・映画畑のひとで、アニメは今回が初めてだそうです。


 実写ドラマなら「痴話喧嘩」のノウハウはキッズアニメより豊富そうですし、ドラマ畑からライターを招いているのも納得がいくところ。
 マーケティングをうがって見るならお母様層の取り込みありそうで、たぶん百合視点よりも「人間関係への共感」でドラマを見るタイプのお母さん狙いなのかもしれません。
 勧善懲悪が薄くなっているスイプリは、そのぶん日常のドラマにエピソードの比重が置かれるんじゃないか、という期待もできますね。


 性格が一致しない者同士の慢性的なケンカはギスギスするだけで辛いものですが、似たもの同士なら痴話喧嘩として見守れそうだっていうのもちょっとした発見ですね。


 SSやフレッシュのように「いっさいケンカしない親友同士」もストレスがなくて好みでしたし、なんだかんだで女の子というのは「ケンカしないのが理想」だと思うのですが、そのぶん『スイートプリキュア♪』がどのように「仲のいいケンカ」を描いていくのかっていうのはこれから注目です。


  • pixivで好きな漫画。さっそく妄想のほとばしりが……


→第二話の感想:「ふたりでひとつ(Suite)」なドとレのプリキュア/『スイトープリキュア』第2話感想 - ピアノ・ファイア