人生を変えることのできる物語/魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Twitter上で友達が発見して、火急的にその魅力が広められているSS作品があります。
魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」目次
まずこのタイトルからも、『ドラゴンクエスト』のパロディであることは察しがつくと思います。
なので、仲間内では「ドラクエSS」の通称で読まれているのですが、世界観そのものはドラクエとは無関係なオリジナル世界の、ファンタジー小説です。……いや、SFと呼んでもいいかも。
小説とは言っても、文章の九割八分がト書きで展開するため、「戯曲」に近い印象を感じるかもしれません。
2ちゃんねるの投稿小説に特有な、物語のつづり方ですね。
とりあえずは、1スレ目の、魔王と勇者の会話が終わるところまで読んでみることをオススメします。そこまでだけでも、破格の面白さが味わえるので。
「SS」という言葉は「ショートショート」や「セカンドストーリー」などを意味する言葉でしたが、この目次のスレ数ですからショートショートとは言えないでしょう(ひとつひとつの投稿は短いので、その連載形式はショートショートかもしれませんが……)。
セカンドストーリー(二次小説)という意味でも、先ほど述べたように直接のパロディではないオリジナルストーリーですから、本当はSSと呼ぶのはおかしい気もしますね。
で、ぼくは実は全体の半分くらいまでしか読んでいないのですが、その時点でもこれが傑作であることが確信できます。
それも、若い時分に読んでいれば、確実に人生を変えることのできるレベルの超傑作です。
読みながら「この作者は、いったいなにものなのだろう」と、何度も思わされました。
最後まで読んでいないのに……しかも、読了組の友達が言うには、この先から更に信じられないくらいの奇跡のような物語を見ることができると予告されているのですが、それでも傑作だと実感できるのは、みなもと太郎『風雲児たち』を読んでいた時と同じような感覚が今ぼくの中で起こっているから。
登場人物たちの、理想の高さが感染してくる、あの感じ……。
『風雲児たち』も、まだ終点にいたっていない作品なのですが、あれはたとえば無印版の途中までを読むだけでも「読者の人生を左右する」には充分な物語になっていると思うのです。それは、未完の状態であろうと疑いようがない。
だから同様に、このSSはたとえ途中までだろうと読者の生き方を変えうるものがすでに描かれている、とぼくは感じる。
まぁ物語の評価軸を「そういうこと」の有無で測ることには違和感もあるかもしれませんが、現時点での「率直な感想」がこれです。それは素直に主張しておきたい。
若い人で、読む者が読めば、これは人生の地平を開く物語になりえます。
なぜなら、「見ているものの先」が通常の物語とはあきらかに異なるから……。提供されている「視点」が、確実に違うからです。
事象の地平線ならぬ、「ドラマの地平線」がむき出しになっているような物語です。
もちろん、普通に娯楽で読んでも、面白く描かれたエンターテイメント。ハーレムラブコメだったり、商業経済ウンチクだったり、ファンタジー戦争モノだったり。
ジャンプ漫画やラノべのノリで読んだって、水準以上に感動できるのが凄いところです。
いや、「ちゃんとエンターテイメントしてるからこそ」エンターテイメントを超えた感想になるのかもしれません。
ちなみに、iPhoneなんかを持っている人は、なるべくモバイルで読んだ方が読みやすいと思います。webブラウザだと読むの疲れますが、iPhoneだとサクサク読めます。ぼくは、二回に分けて1スレ分を消化するのを繰り返している感じですね。