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「昔から好きで、どんどん面白くなってると感じる漫画はありますか」/相田裕『GUNSLINGER GIRL』11巻

izumino2009-07-28

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 『GUNSLINGER GIRL』の新刊を、へうげもの数学ガールや咲の新刊と一緒に買ってきました。
 まだチラリとしか開いていないのですが、去年、10巻を買った時に書いていた文章をいま載せておこうと思います。

 ガンスリ10巻と、特典のおまけをチラ見。好きな漫画なのでこれはじっくり読もう。
 「昔から追いかけている連載で、しかも作者が上達するのと並行して思い入れも強まってる」という面では、自分の中で『成恵の世界』に近い位置にある存在かも。
 二十歳頃から読み続けている作品で、「今も好き&どんどん面白くなってる」タイトルって少ないだろうから。

  • 註:成恵は1999年連載開始、ガンスリは同人誌のシリーズが00年で一度終了してから02年に商業連載開始


 惰性にならずに、一貫したことを丁寧に描き続けられる作家というのは職人肌というか、自分にとって好ましい資質を持っているのだろうと思う。
 「読者のことは意識するけど、おもねらない」バランス感覚も、丸川トモヒロ相田裕には近さを感じる。多くのクリエイターに見習ってほしい、誠実な資質でもある。


 どちらも10巻まで出ているけど、8,9,10巻から劇的に世界が広がって作品の質が変化するというのも同じだ、成恵ガンスリは。

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 作者の上達(作風の変化)という意味では、ガンスリの絵柄の場合、当初は少しずつ「写実的な、端整で、クリアな質感のある、ヨーロッパ映画のような画面」を目指して志向していたのが、一度そこまで到達してからは、改めて「絵画的なタッチを含んだ、ラフな質感」を加えるようになってきた、というのが印象深いですね。
 「ヨーロッパ映画のような〜」という比喩は、作者にとってひとつの理想だったと思うのですが、まだまだ「目指すべき到達点」は先に存在するんだ、と訴えているかのようです。

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 実際、脇役たちが主役扱いを受けていた「アンジェリカの死」から「ペトラ編」「トリエラの再生」までがリアリズム(=写実)のドラマの極点だった気がします。
 だとしたら、そこから先のメインテーマでは、メルヘン(=お伽噺)の様相が加わってくると予想できて、デイドリームめいた、絵画的なタッチが必要になってくるのかもしれません。
 あと、一旦「写実的なタッチ」を通過しているからこそ、その後の「絵画的なタッチ」が浮き上がって見える、という効果もありますよね(最初から今の絵柄だとしたら、普通に見えていたはず)。


 こういう波のような変化が、ヴィジュアル的に発生していくというのも、漫画ならではな特徴であり、かけがえのない魅力のひとつですね。