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タイ映画『チョコレート・ファイター』はめちゃくちゃ「感動作」だった

 上京中、映画の日に『チョコレート・ファイター』(英題は「Chocolate」、公式トレイラー)を観てきました。


 本作の触れ込みは、 『マッハ!』と『トム・ヤム・クン!』のトニー・ジャーを育てたプラッチャヤー・ピンゲーオ監督とパンナー・リットクライが四年間かけてムエタイとスタントを叩き込んだ美少女が主演のムエタイ映画。


 このエントリは、鑑賞してから90分後に携帯で打ち込んだ文章を元にしていて、かなり個人的な感動ポイントを語ったものになっていますが、率直な感想です。

 エンディングが流れている間、わけもわからずなんか涙がずっと止まらなかった。
 アクションで感動したとかそんなもんじゃなくて、全然言葉にならないけど涙が流れてしょうがない、っていうレベルの映画でした。
 そりゃ、タイ本国でヒットするのも当然かも。


 個人的なベスト映画ランキングを塗り替えるなあ。
 音楽も良かったし、サントラがあれば買いたい……。*1
 でもまぁ結構えげつない所も多い映画なので、観る人は選ぶと思います(いまどき、そんな風に作られたフィルムだからこそ素晴らしい、という言い方もできますが……)。


 主演のジージャーはトニー・ジャーと何が違うのかなあと思ったけど、やっぱり顔立ちの雰囲気ですね。パンフでは「知的で優しげ」って評されてたけど、表情がすごい「上品」なんだな。
 ぜひジージャー主演の次回作を!


 障害があって、うーあーとしか喋れない役なのは、「またぞろ“アクション役者の演技力不足”を隠すためなのか……」と最初は思ってたけど、そんなことない、彼女はむしろ抜群の演技力で障害者を「演じていた」んだな……。
 演技が巧いっていうのも、まぁトニー・ジャーとの違いなんですが。


 ピンゲーオ監督は、ラストシーンに(仏教的な)無常感を込めることにこだわりがあるようで、それは『マッハ!』の時よりも成功していると思う。
 しかも理屈として観客に考えさせることはゼロで、全部感覚に訴えかけてくる!(マッハ!の時点では「敵も味方も平等に仏罰を受けて死ぬ」という、わりと解りやすい理屈のオチだったのに対して)


 いまだにうまく言葉にすることはできないのですが、ものすごく「生」の生命感がフィルムに定着している、希有な作品なのだという気はしています。

 ぼくと同じような衝撃を受ける人は、たぶん少ないと思うのだけど、この傑作を観る覚悟のある映画好きの人達は、すぐさま観にいかれるべし、と思います。


 思い返せば、ヒロインのゼンが武器(棒と鞘)を手にした時のシーン、戦いが全て終わってからゼンが泣くシーン、それらがもの凄くグッとくるんですね。
 だから個人的には、単純な「爽快アクション映画」としてのみ評価されるのはもったいない、と思うくらいです。
 そしてもちろん、そういう、言語化できない感動ポイントの他にも、ひとつひとつ挙げたい誉めどころの多い良作なのも確かなのですが。

*1:まだ出てないみたい