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 移行後のはてなブログ:izumino’s note

「テニプリを全巻を通して読んでみた」

 ぼくが……、ではなく、↓の方が、ですが。

http://www.mypress.jp/v2_writers/bontane/story/?story_id=1612477

 妹が「テニスの王子様」を集めてたので、ちょっと全巻を通して読んでみた。
 すると、これが意外と面白い。
 ネタ的な物も確かに「面白さ」の一因ではあるのだが、それだけではない何かがある。
 そう、王道的なバトル漫画なノリを感じた。

 まずテニプリのキャラは、基本的に負けず嫌いな連中ばっかだ。
 先入観抜きでじっくり見れば分かるが、純粋に「負けたくねえ!」という感情で戦ってる奴が多い。
 そこに邪念は無い。味方側も敵側も、基本は負けず嫌いな連中ばかりである。やり方も正々堂々だ。

 青学に限定すれば、中盤までの不二は例外的に勝利に執着出来ないとなっていたが、現在は色々あって克服。

 そうそう、不二がリョーマに「本気出してよ」って言われるシーン、すげえ好きなんだよなー。
 あの台詞があったから、今のテニプリに対する注目度がグッと上がったと言ってもいいかもしれません。

 女性ファン向けのイメージとは裏腹に、泥臭いまでに「必死」な連中が多いのがテニプリだ。
 テニプリの大半のキャラの強さを支えるのは実は「才能」ではない。「勝利への執念」だ。

 ここらへんはうなずく所ですね。
 つい最近、テニプリの初期を知るというジャンプ読者の人にインタビューを試みてみたのですが、初期のテニプリはやはり「少年漫画してて」面白かった、と述懐していました。
 ぼくもとりあえず1〜6巻まで古本屋で読んでみたのですが、確かに「う〜〜ん、ジャンプ漫画としては普通だよね、これ」という印象でした。


 ただし、その面白さは「ジャンプ漫画としては並の面白さ」だったので、まぁ作者の前作のイメージもあって(笑)、注目していなかったんだそうな。

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 まぁ一口に「少年漫画として面白い」とは言っても、他に「もっと面白い少年漫画」があれば、そっちを重視するでしょうからね。

(でも、リョーマが青学にやってきて、先輩部員と一人ずつ勝負していく=先輩陣の強さの格付けが少しずつ明らかになっていく、という流れはドキドキ感が強くて、なかなか本を読む手が止まらなかった。手塚部長と不二先輩の「全力」をうまく伏せているのが良い。普通に面白いっすよ。)


 しかも、それからテニプリの(というかジャンプ全体の?)「腐女子路線」が顕著になってくることで距離を取る読者が増えてしまう。
 それ以降、ジャンプ読者の評価も「普通に面白いジャンプ漫画」だったのが、一旦「腐女子ウケするジャンプ漫画」へと降格されてしまうに至る。


 で、ネット世代は最初から「腐女子ウケするジャンプ漫画」という視点(レッテル)でテニプリを見るので、どうしてもネタ方向でしか作品を味わえなくなったのかもしれません。
 この「腐女子向けのレッテルが張られた漫画は、ネタとしてしか味わえない」という感覚は、一時期のネット界の流れとして記憶している人も多いのではないでしょうか(当時は今に比べて、「やおいに対する男オタクの拒否反応」も強かった頃ですし)。


 オタクから「ネタ漫画」扱いされるようになった経緯はそんな所でしょう。

 でも少年漫画にリアリティはあんまし要らない。要るのはケレン味とセンスだ。
 テニプリにはケレン味がある。斜め上に独特なセンスもある。
 先入観の部分で惜しいイメージがあるが、あれでいてジャンプ漫画らしい漫画なんじゃないかなぁとは思うよ。

 でも実際は、初期からちゃんと「普通に面白い少年漫画」だったテニプリは、インフレを繰り返して、キッチリ「すごく面白い少年漫画」に進化していたわけだ。


 間に「腐女子ウケ漫画」と「ネタ漫画」というバイアスを挟むことが無かったら、「一貫して少年漫画路線を志向していたテニプリ」という像が浮かび上がってくるのかもしれません。


 というかまぁ、「偏見抜きで読むっていうのは大事だよねー」という話なんでしょう。

余談

 ちなみに、濃いジャンプ読者から見ればテニプリ程度の「ムチャなスポーツ漫画」は「他のスポーツ漫画に比べたら全然おとなしい方だよ」というイメージがあって、ギャグとしての要素は論ずるに値しない(ネタにするまでもない)というフィルターがかかっている部分もあるかもしれません。「ギャグ漫画として面白いスポーツ漫画」は他にいくらでもあるんだから(注:そういうのは殆ど絶版になってると思いますが)、逆にテニプリは「ギャグスポーツ漫画としては並の面白さ」と正直に感じてしまうのも実際の所。