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今週の『魔法先生ネギま!』

 いくら忙しいにしても、ここのところ全然感想書いていなかったので、ひさしぶりに徒然と書いてみます(ストーリーに関する話は書かないのでネタバレ無しです。どっち道、本誌読んでないと解らない話ですけど)。


 今週は、アクションのコマ割りや構図に無駄が無くて「おお、久しぶりに巧い」と思ったもんですが、ぼくがそう思うだけかも。15ページ目の「止め」や、ラストページの切り返しなんかはお手本的になりそうなくらい巧いんですけど、ただ巧いだけなら、普通の読者が良いと思うのやらどうか。*1


 先週とセットで、主人公を取り巻く周囲の人間関係の大変革が行われていて、これが実にネギまらしい漫画の面白さに繋がってますね。
 赤松さんは良く自分のキャラに対して「成長」という言葉を使いますが、能力的な成長ではなく、こういう風に、他のキャラとの関係性の中で立ち居振る舞いが逐次変化していくことを「成長」と呼んでいる所があると思います。
 つくづく思うけど、ネギまのキャラを記号的だっていう人は、原作読まずに言ってるか、よっぽど流し読みしかしてないか、「漫画」が読めない人なんだろうなと思ってしまいます。*2
 8巻あたりで主人公とクラスメイトがしていた会話(「僕と関わらない方がいい」とか「僕が強くならなくちゃ」とか)と、今の会話を読み比べると変化が実感できて更に面白い。かれこれ一年間以上、ずーっと変化のタイミングを狙って連載してたわけか(笑)。
 12巻、刹那vsエヴァ戦の「ぼーやは強くなるだろう」という台詞なんかが、「主人公に脇役が守られるだけ」か、「主人公と脇役が一緒に戦う」かのターニングポイントになってますね。


 以前ネギ遊にも書きましたけど、こういう「キャラクターもの」の漫画で、「キャラクターの立ち位置や周囲との接し方」がどんどん変化していく作品、というのは珍しい気がします。直線的な、スケールのインフレだけで絆の強化を描くのが普通なので。
 関係性を変化させない方が、話も作りやすいし、長続きさせやすいですからね。ジャンルが少女漫画だと少し事情が違ってきますが。
 少年漫画だと、せいぜい「味方が敵になる」「敵が味方になる」「相手が自分より強くなる」「自分が相手より強くなる」くらいのパターンくらいしか無いんじゃないでしょうか(だから結局は能力の強弱関係に帰結するんですが)。他にパターンがあるにしても、作品シリーズ中、1,2回「変化のタイミング」があればいい方で、ネギまのように、イベントに差し掛かるたんびにぐるぐる変わっていくようなケースはそう無いと思います(そんなに人間関係が変わりすぎると、恋愛関係がこじれた少女漫画みたいに読者が変化についていけなくなる可能性がありますが、そこは「立ち位置は変化させるが、“キャラクターの性格の根幹”は決して変化させない」ことでセーブすることができる筈*3)。


 赤松さんは割と昔から「変わり続けなきゃ」、という意味の言葉を絵柄にしろ何にしろ言い続けていて、おそらく読者を飽きさせない為の方法論としてこういった「関係性の成長」の要素を取り入れてるんだろうと推測してます。


 その一方で、少女漫画らしさをダイレクトに取り入れて、関係性の変化を描こうとしているのがスクランかなぁと。たまに、説明の手続きとか描写的な段取り抜きに関係性を変化させちゃうことが小林尽はあって、「これは感性的な表現力なのか、天然の描写ミスなのかどっちなんだ?」と迷うことがしばしば。例えば、いつの間に「美琴は麻生と付き合う努力をしなきゃいけない」ことになっていて、「沢近は播磨に告白しなきゃいけない」ことになってたんだ、とか。どっちも「それを臭わせる程度の会話」だけで通し切れる小林尽は、感性にせよ天然にせよ、男性作家の資質にしてはおかしくて、ちょっと凄いですよ。「普通はもうちょっと行間を描きたくなるだろ」みたいな。

追記

 いくらぼくが「赤松健論を書いた人」だとしても、それだけでウチのネギま感想が大手ニュースサイトに取り上げられるのは、ちょっと心臓に悪いかもしれない(笑)。いや、いいんですけどね。
 最近はもう、ウチ以外にも鋭い感想を書ける人が現れたり、育ったりしてくれてますからね。
 例えばさっき見付けたぱかりのサイトさんですけど、くろちゃOnlineさん(11月8,9日参照)とか、オススメしておきます。

所謂少年ジャンプ的バトルトーナメントにおいて、バトル要素を持つクラスメートばかりが目立つ展開を物足りなく思っていたのですが、ここにきてこの一連の武道会編が実はバトル要素を持たないクラスメート達のための仕込みだと気づいた時には「やられた!」と頭抱えました。

 長丁場のバトル編が終わって戦闘キャラを大増量した後に「日常(学園モノ)」にシフトチェンジしようとして見事に大コケしたジャンプの『BLEACH』と比べてみると、ネギまの骨組みの頑丈さっていうのは理解しやすいかもしれません。
 ネギまみたいなコンセプトは、ジャンプには合わないでしょうね。冨樫義博くらいの怪物作家が描くなら、また別の話ですけど。

*1:あと「神鳴流素手で殴っても花びらが散る」のが判明したのはバカでアツかった(笑)

*2:そういう人に限って「キャラが薄い」とかも言いますね。そりゃ記号性を前面に出してないんだから、当然パッと見は薄いでしょう

*3:最近は、小太郎や美空の描写でそこらへんキズがついちゃった感はありますが、修復可能な範囲ではある