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長野晃子『日本人はなぜいつも「申し訳ない」と思うのか』(ISBN:4794212666)

 タイトルからして『ノーと言えない日本人』みたいな、自虐的日本人論を想像されると思いますが、その中身はベネディクトの『菊と刀』に対する批判本であり、日本文化を高く評価しています。
 『菊と刀』における「欧米人=罪の文化」「日本人=恥の文化」という定義は「誤ったイメージの刷り込み」であるとして細かく検証・反論しつつ、欧米的な「罪の文化」よりも日本的な「罪の文化」の方が犯罪抑止効果が高いと言えるのではないか、と結論づけています。
 とりあえず、「なんとなく日本=恥の文化だと思ってました」っていう人は読んでおくと良さそうですね。


 キリスト教文化圏と比較した日本人論としては、かなり面白い本でした。民話や伝説が多く引用されているので、先日読んだ『ケルト巡り』とセットで考えても楽しめますね。
 まぁ、ぼく自身が「うまく謝る(償う)のが苦手」な人間*1であって、日本人的な罪の意識に興味があったから読んだわけですが。この本では「日本人の方が内面的な罪の意識が強い」と言われているだけに、ぼくのように謝罪や贖罪が下手で罪の意識だけを余らせてしまうタイプの人間は苦労する気がします。そういう点では「自分が悪いことをしたとは滅多に考えない」アメリカ人やフランス人は羨ましいんですけどね。


 あと、海外でエヴァのシンジくんが嫌われてるのは、欧米人の考える「罪の意識」は外罰的なものでしかなくて、シンジくんの内罰的な考え方には全然共感できんからだろーなー、と実感。彼は割と日本人相手にも嫌われているキャラですが、そっちは「共感できるからこその同族嫌悪」みたいなのが多そうですし。

*1:ぼくは「心のこもってない謝罪をした所で相手の気は晴れないだろうから、いっそのこと謝罪せずに自分が恨まれてしまった方が償いになる」という異様な考え方を良くする