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雑誌『新潮』創刊一○○周年記念特大号

izumino2004-05-14

 記念に買ってみました。
 例によって佐藤友哉から読む。

 これはかなり面白くて満足。
 「世界の終わりの終わり」シリーズや「大洪水の小さな家」の迷走っぷりを見て不安を感じていた向きも多かったろうと思いますがなるほどこういうのも書けるのねといった感じ。
 「世界の終わりの終わり」シリーズでは象徴的交換や代換的救済*1をゲリラ的に多用しまくることで「象徴的救済の物語」に対して反抗していたような所があったわけですが、この「死体と、」の場合はお話の中心に「象徴的なもの」がただ存在しているだけで、そのものについてただ客観的な説明を重ねていくという手法を取っている。「象徴的なもの」は不動の中心であって、何かと交換されることも代換されることも(文章の上では)行われない。だからこそ読者は「象徴的なもの」に対する気持ちを思い思いに重ねることができて……と、まぁ、至極「賢い書き方」をした小説なんですよねこれ。*2

 わからん。これはいくらなんでもちょっと。

*1:いずれも佐藤友哉の造語。今考えると、あのシリーズは私小説というより「挿話付きの文学エッセイ(サリンジャー論)」とみた方が面白い気がする

*2:北野武の書く脚本で「賢い」と言われる部分と近い手法を取ってると思う