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金田達也『あやかし堂のホウライ』2巻

 本屋に行くと出ていたので買ってきました。
 1巻の続きとなる「4話」と、サンデー本誌に短期集中連載していたバージョンがまとめて収録されています。ちょっとややこしいんですが、これでサンデー超版と本誌版のストーリーが合流したことになるんでしょうか。


 この漫画が少年漫画として面白い所は、主人公のアヤカがただの女子小学生っていう所ですね。アヤカはいわゆる「勇気」や「精神力の強さ」でいえば作品世界の中で一番強いキャラなんですが、普通の少年漫画ならその精神力を利用して超能力や根性で戦う主人公になる筈なんですけど、アヤカは人間業でできる範囲のことしかできない。まぁあくまで「女の子」止まりの能力しか持たないしそれ相応の活躍しかできないわけです(小学生としては超優秀ではあるけど)。
 それでもアヤカはこの漫画の「主人公」であり、絶対的な強さの意思力や人間的な魅力(要するに可愛い)を備えている。小学生のアヤカが動くことで他のキャラクター(主に準主人公であるホウライ)達に活力が与えられ、実質的なバトルを行うのはアヤカ以外なわけです。
 そこで周囲のキャラクターに「アヤカ(主人公)が居るから勝てる」と感じさせる展開を表現するのが、金田達也は凄く巧い。そこに読者は気持ち的に感情移入していきます。(心の強さに限れば超人的な)アヤカに憧れ、癒されるわけです。
 少年漫画(というか、藤田和日郎系統の少年漫画)のテーマのひとつは「ヒーローに憧れる感情」を描くことですから、その点で言えばアヤカは「守られるヒロイン」ではなく「ヒーロー」の位置に立っていると言えます。心の強い主人公に周囲のキャラクターが癒されていくという構図自体は『うしおととら』と同じですからね。*1

あやかし堂のホウライ 2 (2)
金田 達也


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 余談ですが、アヤカはプリティーン(小学5年生)の美少女キャラクターとしても大変魅力的で、ここまでの母性的魅力を備えたヒロインってのはそうそう見掛けないと思います。
 まぁ年若い少女に「真の母性愛」なんてのを投影したがる欲求っていうのはロリコン男性の悪い病気みたいなもんなんで、現実世界の少女にそんな「理想像」を求めても詮無いんですけど、アヤカというフィクション上の「理想像」に触れることでその欲求も充足して癒されようというものです。というかぼくは何回『あやかし堂のホウライ』を読んでも感動してます。泣ける。
 ロリコン男性が少女に求めているものっていうのは、究極的には母性愛なんじゃないでしょうか。セクシャルな関係は多分二の次なんですよね、これは個人的な意見ですけど。*2

*1:結局ヒロインが全てを解決してしまったり、聖女として理想化して終わる宮崎駿タイプのヒロイン像とは微妙に異なることに注意

*2:現実的には「少女+母性」という組み合わせ自体が希有なので、目先のセクシャルな関係を求めてとりあえず満足しようとするのがいわゆるロリコン。ただしセクシャルな関係だけでは心が満たされない為、性欲がエスカレートしてしまう